あらすじ
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就職活動のhow-to本が山ほどあるように、就職活動において、学生は企業が求める人材像に自身を合わせていく「評価される弱者」と捉えられがちである。しかし、本当にそうなのだろうか。就職活動において今まで着目されて来なかった、就活生側の評価や批判から就職活動のより良いあり方を考える。
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Posted by ブクログ
面白かった。就活を経験したことがある人なら、ほぼ全員がここに書かれている内容のどれかには共感できるだろう。
私自身は、ここに書かれている内容のほとんどに共感した。そのため、データの信頼性は個人的には失われていないと思っている。
ただ、これだけだと就活生にとっての常識を羅列しているに過ぎず、博論本としては不十分となる。そこで本書では、従来のメリトクラシーの中で前提とされてきた受験型人間像が就活には当てはまらないこと、そして就活生は多様な角度から就活を捉え、そこでさまざまな葛藤や困難、悩みを抱える一方で、企業の採用活動や基準、就活に対する不満や疑念を表出していることを明らかにした。また、複合ゲームという概念を用いて、就活で展開されるさまざまなゲームを概念的に捉えた。
就活生は、就活において常に従順なわけではなく、それを批判している。だが、そうした批判は就活そのものの変革にはつながらず、あくまでも不満と結びつけて個人的に語られる。その背景には、就活で上手く立ち回る者や、それに従う者、そこから利益を得た者など、多様な就活生の姿があり、ゆえに就活への不満や疑念を表明したところで、変革にはつながりにくい社会となっているからだ。
従来の研究では、学歴や性別、生まれといった属性と、企業規模や年収などの関連を探索的に探るものが多かった。だが、本研究では、就活生の語りから、これまで浮き彫りにされてこなかった就活の姿を明らかにすることで、さまざまな就活生の実態に迫るとともに、選ぶ側とされる企業に対し、「あなたたちは、批判され、そして選ばれる側でもあるのだ」と突きつけている。