【感想・ネタバレ】介護者Dのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

介護、小型犬のペット、アイドルの推し、どれも自分のなかでは引っかるところのない要素だらけなのに、気がつけば一気読みしていた。しかも、どの要素もリアリティがあって(小説家なら当たり前かもしれないが)驚いてしまった。

琴美は派遣先の会社の契約が切れるのを期に、父親の介護をするため東京から札幌の実家に帰ってくる。母親は事故で亡くしているし、妹はアメリカで結婚しているので琴美ひとりが介護を行うのだ。
元塾講師の父は正論を言うけれど頑固で、歳を重ねるごとに頑固さはいや増している。それを何とかやり過ごすこともストレスだ。
そんな琴美の唯一の救いは、インディーズアイドルグループ「アルティメット」の「ゆな」だ。彼女の歌と踊り、その若々しい姿に癒やされる。(ここが男性アイドルではないことが、案外重要に思える。)
前半は、30代独身の琴美が、いつまで続くのかわからない父の介護をするという不安が物語を覆い尽くす。
しかし彼女はきちんと家事をこなし、仕事も見つけ、不満と不安を持ちながらも、札幌での生活を築いていく。
そこにコロナ感染がひろがって・・・。

Aランク評価の妹とは違って、父親からの自分の評価はD。なかなかコンプレックスからも抜け出せない琴美だが、後半は少しずつ流れが変わっていく。

毎回作り込まれた物語で、人物に深みがあって、読み手を掴んで話さない。今回は、都会の日常からリアルな現実をえぐり出し、私の持たない部分を刺激された。小説の醍醐味だろう。どんな時代や背景の物語であろうと、作者の根幹にあるものは変わっていないのが頼もしい。さらに凄みを増していく才能に、期待が高まる。

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2024年01月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

まだ30代で父親の介護をすることになった琴美。彼女の支えは女性アイドルグループの推し活。
介護というのは終わりが見えないし、よくなることはない。周囲の人たちの言葉に傷ついたり、イラついたりする。すごくわかる。推し活に心を支えられる気持ちもすごく共感した。
それなのに推しのグループがコロナ禍で活動できず、解散。
そんな明るい要素がないように見えたのに、少しずつ前を向けたので読後感がよかった。

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2023年09月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

5年前に交通事故で母を亡くし、1人暮らしだった父が脳卒中で倒れ左足に軽い麻痺が残った
雪かき要員として札幌の実家で暮らし始める

私も長女なので琴美の気持ちが痛い程良くわかる
出来が良く、要領も良い妹が早々にTDLに遊びに行ってしまい、信じられずとても腹が立った笑
それを庇う父も、そのまま片付けもしない妹も許せない
父親の平均寿命まで計算してしまう気持ちも凄くわかる
やりきれない毎日に、推し「ゆな」の存在があって本当に良かった

面白く一気読み!!
ちょっと最後都合良すぎる感はあったが、
報われたり、希望が持てる終わり方で良かった
☆4.5かな〜5と迷った
この著者初読みだったので、他作品も読んでみよう

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2024年03月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ここまで思い入れできる「推し」のある人生ならば、もうそれだけである意味十分に幸せと言えるんじゃないかと思いました。もう会えなくても、この先の人生で自分と交錯することがなくても、その幸せを長く深く心から願える他人なんてそうそう見つかるものではないでしょう。
家族はままならない、人生もままならない、真摯に生きようとしてもそうできない状況に望んでないのになってしまうなどということは琴美じゃなくても、私じゃなくても人の数ほどあるのが当たり前の現実なんでしょう。
指導を受ける生徒として、介護者として、自分の人生の判定が現在D評価であっても目の前のことを乗り切って日々何とか生きていけたらそれでいいだろう、と今しんどいので深く思います。
最後、ちょっと救いのある終わり方で読後感も良く、読んでる方も救われました。

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2023年02月21日

Posted by ブクログ

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 12月の最初に読んだ本は、大好きな河﨑秋子さんの新作「介護者D](2022.9)です。東京で勤務している琴美30歳が、札幌の父、左足が不自由な猿渡義純66歳から「雪かきを頼む」と言われ、実家に帰って父と犬の介護をしてゆく物語。琴美の支えは東京で出会ったアイドルグループの斎藤ゆな13歳を推すこと。河﨑秋子さんにしては少し物足りない気もしましたが・・・。テーマを広く、作風を変えてらっしゃるのかなと思いました。父親の二人の娘に対する依怙贔屓にはうんざりでした。この物語のテーマは「介護」と「推し」でしょうか?!

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2022年12月01日

Posted by ブクログ

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2021/09/28予約 7

初読み作家さん。★4.5。
アルティメットパレットのアイドル・ゆなの推し活が生きがいになっている、琴美。
母亡き後も札幌で一人暮らしを続けてきた父親から「雪かきに来てくれないか」とのメールがくる。
雪かきにかこつけて、帰ってきてほしいと素直に口に出せない父親。
学校の教師をやめ、塾を経営していた父親。
生真面目で几帳面で融通が利かない、ええかっこしい。
脳血栓で倒れ介護の必要な状態になりつつある…
さらに飼い犬のトトが認知症を発祥してしまう。

昔からAランクである妹の美紅は、サンフランシスコでシングルマザーで仕事も生活もうまく行っている。それに比べ琴美は、昔から親にDランクだと言われてきた…

親から子どもの、ランク付けされることほど辛いことはない。ランクが下だった子どものことを考えたことがあるのか…自分は今も乗り越えられない。いつも自分を卑下してしまう考え方の癖がついてしまっている。何年も心療内科でカウンセリングを受けたが、しつこく根を張る、卑下する癖は抜けなかった。

介護をしなければいけない、と派遣でコールセンター勤務する。理不尽なことばかり言われるコールセンターの様子までよくわかる。

いくつかのエピソードが自分とリンクするため、一気に読んだ。
最後はうまくいくところに、なんとか収まる。
ちょっとありえないけど、まあいいかというサプライズ付き。


介護ショップで、
店員の言葉は穏やかだ。介護を担当する人間に寄り添い、気を遣い、言葉を選んで接してくれている。
寄り添いすぎた人なのだ。
当事者を多く知っているからこそ、対応の仕方にそつがない。
ただその分、話していると否応なしに自分が直面しているのは数多ある『よくある』現場のひとつだと突き付けられた気がしてくるのだ。……嫌だ。ひねくれている。琴美は努めて頬の筋肉を動かし、笑顔を作った。この店員さんには何の落ち度もないのに、自分は勝手に卑屈になっている

ものすごく共感する。


先の介護ショップでの在宅介護する人達が集う場に初参加して、
ふっと、気が楽になった。そうか、いい意味で、これは他人同士の集まりなのだ。
苦労の度合いや不幸せを比較できるほど親身な集まりではない、と琴美は思い、たどたどしく自身の状況を言葉にすると、控えめで温かな拍手が自然と起こった。
琴美はがちがちに力を入れていた肩をすとんと落とす。
別に愚痴を吐き出せた訳ではない。
問題を軽くするような情報を得られた訳でもない。
それでも、琴美は自分の気道が広がって少し息がしやすくなった気がした。

この場所が必要とされているのだろう。介護も看病も、病気なら当事者の会も。私も、誰にも否定されない場所で伝えたい。

おすすめの本。

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2022年11月25日

Posted by ブクログ

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主人公の琴美をはじめこの家族、なんだか自分勝手で好きにはなれなかったのに、読後はまぁどこにでもいる普通のいい人、いい家族だったのだ。

しかし、介護するには設定が少し若すぎる気もするし、金銭的にも余裕があり悲壮感はなく・・・タイトルだけでは推し量れない、これからの時代の家族の物語なのかもしれない。

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2022年11月25日

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