あらすじ
軍事戦略とは何か、軍事戦略の成否を分けるものは何か――先行研究と豊富な事例を交えつつ、古今東西の軍事戦略を分析。殲滅・攪乱から消耗・疲弊、抑止・強制、斬首・標的殺害、さらには現代戦で必須のサイバー戦略まで、各種戦略を類型化し、その概念や歴史的背景、理論的争点を明らかにする。日本の安全保障、現代国際政治の考察に示唆を与える1冊。
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Posted by ブクログ
【勝利を確実に保証できる軍事戦略など存在しないが、不適切な戦略はほぼ確実に失敗を招く】(文中より引用)
多くの日本人にとっては比較的に縁遠い存在となっている軍事戦略。その要点を簡潔にまとめながら戦略の輪郭像を描いた作品です。著者は、米陸軍大学教授を務めるアントゥリオ・エチェヴァリア。訳者は、防衛省防衛研究所に務める前田祐司。
専門性が高そうに感じられる分野であり、実際に知れば知るほど奥深い分野だとは思うのですが、取りあえず概要を知りたいという方にまずオススメできる一冊。安全保障問題を考える上での良い見通し図を提供してくれることと思います。
訳がこなれていて読みやすいのも☆5つ
Posted by ブクログ
平和構築を考えるうえで欠かせないはずの軍事学だが、大学では授業が無かったように思う。これを補完するため、入門として初めて軍事学に触れた記念すべき1冊目。体系立っていて、コンパクトで、とても分かりやすい。どこかで時間できたら、クラウゼヴィッツに触れてみようかなあ。
Posted by ブクログ
創元社「シリーズ 戦争学入門」の一書。
たしかに入門書らしく「軍事戦略」の要諦をきわめて簡潔に(訳者曰く「荒技」というほどの圧縮率で)語り切っている。戦争学上の諸概念、実際の実践、その具体例など、学ぶべきポイントを的確におさえてくれるので、この本から独習を深めていくことも容易なはず。
ただ、これも訳者が指摘していることだけれども、ここまで圧縮した結果として、論理の組み上げ方を通して逆に筆者の戦争観や戦略観がはっきりと浮かび上がってくるわけで、たとえば(「サイバー戦闘」は現実に行われているとしても)「サイバー戦争」という概念にやや懐疑的な姿勢を崩さないところなども、半世代くらい前の戦略思想なんじゃないかなと思ったり(筆者は長く戦史研究をされてきたらしいから、まあ当たり前と言えば当たり前か)。
とまれ、入門書としては分量的にも(2,3時間で読めてしまう)、内容的にも(系統だった記述で最後まで枝葉の議論に深入りしない)、文体的にも(こなれた訳文でやや読みやすすぎるくらい)、速習によいと思います。