【感想・ネタバレ】サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」のレビュー

あらすじ

昆虫がいなくなれば、世界は動きを止める。危機を食い止める具体的な行動指針を示す、現代人必読の書!

レイチェル・カーソンが、『沈黙の春』で「鳥の鳴き声が聞こえない春が来る」とDDTの危険性を訴えたことにより、その使用が禁止されて半世紀。私たち人間は、さらに地球環境を悪化させてきた。本書はまさしく「昆虫たちの羽音が聞こえない沈黙の春」への警告だ。
カーソンの時代の農薬よりはるかに毒性の強い農薬によって、最初に犠牲となるのは小さな無脊椎動物、昆虫だ。
土壌は劣化し、河川は化学物質に汚染されているばかりか、集約農業や森林伐採によって昆虫のすみかは縮小し、加えて急激な気候変動で虫たちの生態環境は悪化し、減少スピードが加速している。
この現象は、虫好きの人の耐え難い悲しみであるだけでなく、虫嫌いの人を含む全人類の豊かな暮らしをも脅かす。なぜか? それは、作物の授粉、他の生物の栄養源、枯葉や死骸、糞の分解、土壌の維持、害虫防除など、様々な目的で人間は昆虫を必要としているからだ。昆虫をこよなく愛する昆虫学者は訴える。「今、昆虫たちはあなたの助けを必要としている」と。
EU 全域にネオニコチノイド系殺虫剤の使用禁止を決断させた運動の立役者であり、気鋭の生物学者である著者が、多様な昆虫と共存することの重要性を訴える渾身の一冊。

【目次】
私の昆虫人生/なぜ昆虫が大切なのか/昆虫の減少/昆虫が減少した原因/私たちはどこへ向かうのか?/私たちにできること

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Posted by ブクログ

 地球の生態系の主は食物連鎖というヒト目線で優位に立つ哺乳類、ことに攻撃性と可塑性で他の哺乳類を圧倒したヒトではなく、ヒトに知られる100万種どころか「推定数百万以上未発見」というほど超多様なニッチで棲み分けている昆虫!と異星からの訪問者は見るかもしれない。ヒトが最長数百年の異常繁殖の時機にたまたま到来したとしても。ヒトは100年ほど前までは地球全体の有機←→無機循環にいくらか関与して肉食獣の間引きなどで貢献していたが。何億年蓄えられた化石燃料(石炭も石油も天然ガスも太古の生物由来)を使いまくり森林を消滅させ砂漠を毎年百千平方キロも拡大させている。さらに存在しなかった有機化学物質を安易に撒布して昆虫の微妙なライフサイクルを乱している。
 数十年前には車のフロントグラスに付く虫は無数にいた、著者はヒトの棲息地では半減以下と推測する。昆虫の総量も種の数も急激した。民主主義の選挙民は「昆虫が減って何が困るんですか?」の認識、グローバル生態系の一つの歯車を欠くことの影響が計り知れない。殺虫剤の無法図な使用と外来種の侵入で種の大絶滅が起こっており餌が無くなった鳥も激減している

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2024年12月09日

Posted by ブクログ

絶滅危惧種という言葉が世に出て久しいが、この本を読んで昆虫の絶滅の仕方がとんでもないことになっていることが分かった。食物連鎖の下位にある昆虫がどんどんなくなっていくことで、いずれヒトもその仲間になっていくことは、当然予想されることだ。そして、昆虫が絶滅している理由には、地球温暖化、農薬の過剰使用、環境変化など様々だ。しかも、それらが複合的に影響しており、どのように作用しているのかは、よく分からない。じゃあどうすれば良いのか。私たち一人一人が意識を高く持って自分で出来ることを考えるのだ。

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2024年12月06日

Posted by ブクログ

鳥たちよりももっと静かにひっそりと姿を消していってる昆虫達
そして困ったことに昆虫の世界はあまりに広くて、とてつもなく深いので人間の頭では理解するには複雑すぎる
昆虫の話題になると『その虫がなんの役に立つの?、虫なんか嫌い』と言われることが多いが(身内にも虫嫌い多数…)、本書にもあったように本来そこにいるのに理由や役割など必要ない。そしてたぶん仮に役割があったとしてもこういうことを言う人に理解などできない
北欧やEU諸国など自国の農薬規制には乗り出しているのに、それを生産し続け他国に輸出し続けている超絶ダブルスタンダードや日本をはじめ農薬の検査はしているがその検査の仕方があたまりにも自然の状態にあっていなくて、検査の意味があってないようなものだったり、驚く事実がたくさんあった
こうしたことはあまり報道もされず、知ろうと思わない限り情報が入ってこない
著書は研究者でバリバリ論文を書いているが、同時に普及することの大切さも痛感していて、本書にも堅苦しいだけでない話がたくさん掲載されている。特に第四章のあるかも知れない未来の世界の描写は秀逸。
また章の終わりごとに『私の好き虫』と題して様々な虫について面白く書かれているのでこれも必読!

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2024年05月21日

Posted by ブクログ

昆虫がこんなに減少しているとは思わなかった。想像を遥かに超えるスピードで減少しているようだ。
農薬が最大の問題ではあるが、犬ネコのノミ駆除剤が回り回って他の昆虫にも大きな影響を与えているとは驚きだ。
グローバル化が進み、適地生産が進んでいるがその事が、農産物輸出国の植物の多様性を失わせ、昆虫も減少する事につながっている。ブロック化は良くないとしても、農産物については自由貿易任せきりでは世界の環境が守れない。
理想だけでは解決できない非常に厄介な問題である。

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2023年04月18日

Posted by ブクログ

<目次>
第1部  なぜ昆虫が大事なのか
 第1章  昆虫についての短い歴史
 第2章  昆虫の重要性
 第3章  昆虫の不思議
第2部  昆虫の減少
 第4章  データで見る昆虫減少
 第5章  移り変わる基準
第3部  昆虫が減少した原因
 第6章  すみかの喪失
 第7章  汚染された土地
 第8章  除草
 第9章  緑の砂漠
 第10章  パンドラの箱
 第11章  迫りくる嵐
 第12章  光り輝く地球
 第13章  外来種
 第14章  「既知の未知」と「未知の未知」
 第15章  いくつもの原因
第4部  私たちはどこへ向かうのか?
 第16章  ある未来の光景
第5部  私たちにできること
 第17章  関心を高める
 第18章  都市に緑を
 第19章  農業の未来
 第20章  あらゆる場所に自然を
 第21章  みんなで行動する

<内容>
イギリスの昆虫学者の地球への警鐘の本。レイチェル・カーソンの『沈黙の春』の現代版。確かにいつの間にか昆虫が減っている気がする。蚊にせよ蠅にせよ、蜂などはもっと減っている。著者は「マルハナバチ」の専門家。昆虫の話が多いが、植物から農薬、政治にまで多彩に分析している。第3部では、現状が進んだときの「ディストピア」をしっかりと書いている。昆虫は自分も多くは、イヤなものだが、食物連鎖や土壌、植物の育成に欠かせない存在。しかし研究者が少なく、わかっている種が少ないらしい。そこに付け込んで、農薬などの大企業は批判してくる。おそらくそれは、地球の破滅を早めるだけなのだろう。足元しか見ていない政治家は、これを解決できるはずがない。こうした本(ちょっと厚いが)、しっかりと読んで、知識を身につけて、市民運動から頑張っていかねばならないだろう。昆虫だけではなく、植物や動物、農業や環境問題、すべてが連鎖しているのだから。
 

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2023年02月12日

Posted by ブクログ

膨大な文献と研究のもと著した著書だと思う。小生も小学生の頃夏休みになると昆虫採集をしたものだ。標本にし作品を学校に提出した覚えがある。秋には赤トンボが群をなして青空に舞い、夜には松虫や鈴虫を取りに行き甕に泥を敷きその中で飼ったものだ。轡虫やキリギリスを探し虫かごに飼った覚えがある。今はそんな昆虫達を全く見かけない。冬はバケツの水が3センチぐらい凍ったものだ。今は全く凍らない。温暖化が進んだ証しだ。

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2022年09月18日

Posted by ブクログ

昆虫
 頭部、胸部、腹部、足が六本で胸部についている
 飛行能力  変態(バッタやゴキブリを除く)
 アリの固体数は世界人口の100万倍、重量は同等

食用コオロギ
 育てるための飼料や水が牛の10倍以上効率が良い
 共通の病気がない メタン出さない 成長が早い 密集状態で養殖可能

役割
 昆虫による受粉 植物の87%、人間の作物の3/4
 有機物の分解

1970年以降 欧州で50%の昆虫が失われた可能性が高い
1住処の消失
  集約的農場 花や雑草が少ない 殺虫剤散布 保護区の外に出ると生息できない 
2汚染された土地
  DDT 人工化合物 昆虫の神経を攻撃 ミツバチの減少
  殺虫剤ネオニコチノイド 作物の種子をコーティング
   花粉や蜜に浸透 土壌と地下水に94%流出 2018年欧州で使用禁止
3除草
  除草剤グリホサート 植物と細菌の酵素を攻撃  昆虫の腸内細菌も
4化学肥料
  植物の多様性が減少 水生植物へも
5昆虫の寄生体
  ミツバチの巣箱が世界へ運ぶ  観葉植物に潜む昆虫
6気候変動?
  火災と洪水 昆虫の移動よりも早い温暖化 イエバエや害虫は増加
7光害?
  体内時計の狂い
8外来種
  外来の昆虫、植物、動物による生態系の変化
9既知の未知と未知の未知
  既知:化学物質、大気汚染、電磁波、GMO

イギリス政府への請願書 署名が1万人で返答、10万人になると国会で議論

ティッピングポイント(転換点)
 アイデアや行動が一定水準を超えるとその方向への転換が起き、一気に広まる
 
農業用地より市民農園 生産性 昆虫多様性 健全な土壌 人々の健康 
農業補助金 工業型農業から小規模持続可能な農業システムへ

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2023年02月10日

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