あらすじ
オンライン投稿サイト「note」にて、20万PV突破!!!
注目のノンフィクション・ノベル!
僕は医師として、安楽死を世界から無くしたいと思っていた。
安楽死を願った二人の若き患者と過ごし、そして別れたある夏に
何が起こったか――。オランダ、ベルギーを筆頭に世界中で議論
が巻き上がっている「安楽死制度」。その実態とは。
緩和ケア医が全身で患者と向き合い、懸命に言葉を交し合った
「生命(いのち)」の記録。
オランダでは年間七〇〇〇人が安楽死を迎え、日本の世論でも
国民の七割が賛成を表する「安楽死制度」。
スイスに行く手続きを進めながら、それが叶わないなら緩和ケア病棟で
薬を使って眠りたいと望んだ三〇代の女性。そして看護師になることを夢
に、子供たちとの関わりの中で静かに死に向かっていった二〇代の男性。
二人と過ごした日々を通して見えてきたものとは。
写真家で多発性骨髄腫をかかえる幡野広志氏、
世界中の安楽死の事例を取材して紹介した宮下洋一氏、
そして精神科医の松本俊彦氏と、
在宅で緩和ケアを行っている新城拓也氏との対談も収録。
【目次】
プロローグ
・吉田ユカからの電話
1:止まってしまった心――吉田ユカの場合
2:もう一人の安楽死――Yくんの場合
3:暮らしの保健室
・看護という力
・死の色と雨
4:スイスに行けない
5:安楽死に対峙する、緩和ケアへの信頼と不信――幡野広志と会う
・幡野広志と吉田ユカ
・緩和ケアを信頼できない理由
・耐え難い苦痛とは何か
6:安楽死の議論はやめたほうがいい――宮下洋一に会う
・パンクするスイスの現場
・流れ作業化する安楽死
・海外の安楽死システムは完全か
7:命ではなく、希望を守りたい
・Yくんの右腕
8:安心して死にたいと言える社会――松本俊彦に会う
・安楽死をしたい人に、安楽死で応えるべきなのか
9:もし未来がわかったなら
10:少し先の未来がつなぐもの
・緩和ケア病棟にて
11:欲望を換金する――新城拓也に会う
・二極化する中での個人責任論
・鎮静についての考え方と予防的鎮静
・ノックされたら開けてしまう
12:一〇日間の涙
・月曜日の憂鬱
・カンファレンスにて
・ラインを引く
・一〇日間
エピローグ
・釧路の海に
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
安楽死を望む2人の患者との関わりの中で緩和ケア医が日本での安楽死のあり方について考える本。緩和ケア医だけでなく、がん患者、ジャーナリストとの対談の内容もあり、それぞれの視点での考え方も学べた。スイスに渡航して安楽死を遂げた方がニュースになっており、日本でも近い将来の導入があり得るのかと感じていたが、その道のりの難しさ、また日本の文化や思想を十分に踏まえた精度が必要で、そして制度だけ作ればいいという問題ではないことがわかった。読んでよかった。
Posted by ブクログ
持続的な深い鎮静の適応がどこにあるのかを、医師の視点から素直な調子で綴っている。耐え難い苦痛って何?身体的な痛みだけの評価でいいの?という率直な疑問を、実際の患者との対話を通じて、ある種妥協点を見出しながらなんとか解消していこうとしている。
確かに本書の評価が高いのは分かる。
ただ、結論ありきの文章に見えてしまい、用心して読みたくもなった。最終章のカンファレンスの場面も、著者の正当性が前提にあるように読めるため、多職種と対話をしているようには全然見えない。
Posted by ブクログ
一度読むだけでは腹に落ちなかった。
まずは、所々に出てくる著者の所感について、理解できない。例えば「あぁまた失敗したなと思った」と書いてあっても、どう失敗だったのか飲み込めない。もちろん後に解説もない。
主要登場人物2名の死についても、海を見ながら余韻を残す描写で終わる感じが、小説かよ!とツッコミを入れたくなる。そういうちょっとしたズレが蓄積していくのが、読みにくい。
そして、主題の一つとも言える安楽死と緩和ケアの違いが、本を読んでますますわからなくなった。本では鎮静の適応があるかどうか、医療者で議論している。これは複数の医療者の納得が得られれば、際どい鎮静も行われるということだ。白か黒かの明確な線引きができない。関わる医療者の死生観に委ねられるってこと。緩和ケア、リスクありすぎ。
また、緩和ケア歴10年と称する著者が、あまりに自然体である。分からない言葉を後から調べようと思い、先輩看護師にも積極的に怒られる。(私はこの怒られる場面でも、理由が理解できなかった)確かに日々の現場で提供される医療は、診療報酬がつかないレベルの対応も含めれば、後から後悔するようなことはしょっちゅうだ。だが、ライブ感あり過ぎるというか、ちょっと頼りなさ過ぎやしないか。
著者が対談する相手については、達観しているというのか、問題提起もその解釈も百戦錬磨の言葉が並ぶ。そういった部分で学びが多いことも事実。
ないかもしれない答えを求めて奔走する、道半ばの著者を応援したい。そんな気持ちになった。