あらすじ
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類まれな想像力と繊細な洞察力。
朝日新聞内の短歌投稿欄「朝日歌壇」にて、2012年ごろより常連として掲載され「とても沁みる」と話題の母子3人による初短歌集。
聡介さんが小学一年生の時に詠んだ短歌は、2022年「折々のことば」にても選出され、注目が集まりました。
圧倒的な鮮やかさで世界を表現し、朝日歌壇に累計250回以上選ばれている親子の短歌から、約430首を厳選して掲載。
【母・聖子の歌】
新しい教祖のように迎えられ麩をちぎる子に鯉のざわめく
【姉・葵の歌】
弟の「ん」はいったんもめんだよ夜になったらとんでいきそう
【弟・聡介の歌】
ふうせんが九つとんでいきましたひきざんはいつもちょっとかなしい
学校生活での驚き、発見、家庭内で感じた喜び、寂しさ――「短歌」の形になることで、詠み手の一瞬の感情が、時間を越えて読者の手元で解凍されます。
3人の歌は2012年から2022年までの年ごとに並んでおり、
姉弟が短歌とともに成長している様子にも心を揺さぶられます。
巻末には、自宅で創作に励む子供たちの日常を取材したインタビュー記事も収録。
(底本 2022年9月発売作品)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
朝日歌壇で話題の山添聖子さん・葵ちゃん・聡介くんの、母と姉弟の歌集。
とっても良かったです。
葵ちゃんが二歳のとき、聖子さんが詠んだ歌がこちら。
〈たんぽぽの綿毛で練習したおかげ二歳のろうそくふぅーと一息〉聖子
──読者の頭の中で、たんぽぽがろうそくとなり、綿毛が炎となり。
二歳の子の力強いひと息が成長を感じさせます。
葵ちゃんが聖子さんのマネをして指折り数えて歌を詠みだしたのが五歳。
こちらの歌は六歳のとき。
〈おつきさまみたいにままがやせたのはおばあちゃんがもういないから〉葵
──お母様をよく観察されていますね。月が痩せていくこととママが痩せていくことをくっつけたのが、かなしくも詩的。この歌で朝日歌壇初掲載。
弟の聡介くんが短歌をはじめたのは六歳のとき。
歌集の帯にあるこの歌は七歳のときのもの。
〈ふうせんが九つとんでいきましたひきざんはいつもちょっとかなしい〉聡介
──上句は算数の文章でしょうか。下句でハッとします。おとなが忘れていたものを思い出すような、そんな歌です。
***
平易な言葉と言い回しで、よみやすく、満足感のある一冊。
聖子さんの子育て短歌は、「子どもといるよろこび」が詰まっているようで、お子さんのいらっしゃる方なら、さらに感じ入るものがありそうです。
しあわせと感性のおすそわけ、されてみませんか?
Posted by ブクログ
姉弟の様子が可愛すぎて終始ニコニコしながら拝読しました。とても楽しく読みました。
素朴な言葉で綴られてはいますが二人の短歌ノートがあり、自分の気持ちにしっくりくる言葉を選びながら作り上げている様子が伺えて只者ではない感があります。
これは本をよく読んでいる子の言葉だ、と思いました。
(実際そのようです)
またお母様の聖子さんの作品からは子を思う気持ちが溢れていて愛情を感じます。子どものポテンシャルを引き出すのが上手です。
私ごとでは正直ちょっといたたまれなくなった部分もありますが(子なしなもので)。
普段の感想より丁寧な言葉遣いで書いてしまうのはこの本を大事に思っているせいです。
Posted by ブクログ
孫であること、娘であること、母であること… 40歳台くらいの子を持つ女性なら、立ち止まって考えてしまうことがあるのではないでしょうか。そんな揺れる心に、聖子さんの短歌がそっと寄り添ってくれます。お子さんたちの短歌は、もぅ、瑞々しいと言うだけじゃ足りない! キラキラ眩しいだけじゃなく、憂いすら感じる歌もあります。私は、ひき算とかけ算の歌が好きですょ。
Posted by ブクログ
母子三人の歌集ですね。
母・山添聖子さん(1979年、奈良県生まれ)歌人。
娘・山添 葵さん(2010年、奈良県生まれ)歌人。
息子・山添聡介さん(2013年、奈良県生まれ)歌人。
お母さんの聖子さんが、「葵がにさいのの誕生日にたんぽぽの綿毛を吹いたとき、私の短歌が始まりました。それからの十年が今回歌集という形で本になりました。」と、あとがきに語られています。
朝日新聞の朝日歌壇と朝日大和歌壇に投稿された短歌がこの歌集ですが、ほとんどが2012年6月18日~2022年7月31日に掲載されたものです。
葵の短歌
ゆっくりとバニラアイスをすくたら
しろいことりのはねになったよ (六歳)
せもたれがたおれたらよるになりました
プラネタリウムでうちゅうにうかぶ(八歳)
新しい国語ノートに「春のうた」
草野心平さんの詩を写す (十歳)
流れ星の気分になってこいでゆく
新しい自転車は夜空色 (十一歳)
三階の六年生の教室のまどは
空しか見えない四月 (十二歳)
聡介の短歌
サンタさんクリスマスイブプレゼント
イルミネーショントナカイのすず (六歳)
こんいろのランドセルとおねえちゃんと
しょうがっこうへはやくいきたい (七歳)
カルピスをスプーンでまぜたら風りんの
音がなったよとうめいの音 (八歳)
むらさきのクリスマスローズのしずく
むらさき色に光っているよ (九歳)
聖子の短歌
タンポポの綿毛で練習したおかげ
二歳のろうそくふぅーっと一息 (2012年)
私とは別の意志持ち動くひと
私の中に二つの心臓 (2013年)
ぜんざいに大きく小さく浮かんでる
白玉も四人家族なるらし (2014年)
火鉢にて餅焼く吾子は待つことを
覚えて五回目の春が来る (2015年)
草を食む鹿の首すじしなやかに
秋の陽射しは滑り落ちけり (2016年)
渦潮に揉まれし海月は永遠に
戻ってこないま白き帽子 (2017年)
つぼみには今年の春が入ってる
ハクモクレンの手のひらの中 (2018年)
角砂糖のほどける速さで馴染みゆく
同窓会の友と語れば (2019年)
ふるさとの金木犀へと続いてる
金木犀の香るこの道 (2020年)
「春はモカ」枕草子のように言う
コーヒー好きの友に会いたい (2021年)
たんぽぽの綿毛で練習しなくても
ろうそくは消ゆ子は十二歳 (2022年)
とても楽しい歌集でした。
ちょっと疲れた(打ち込みに)!
でも、ほんわかと家族の温かみがあふれていて、これからが楽しみですね。