【感想・ネタバレ】スクイズ・プレー(新潮文庫)のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

2023年度版このミスベスト10の海外編でまだ読めていなかったラスト1冊。
絶対好きな話だとは思っていたが、期待どおりだった。

しがない探偵、離婚歴あり、命の危険に向き合っても屈しない無謀さ、脅しに対してのたまうへらず口、そしてついうっかり心を奪われてしまう単細胞な男心。
こってこてと言ってもいいくらいの正統派、王道ハードボイルド。

王道ハードボイルドにベースボール話が絡んでくるのが本作の特徴。
5年前、向かうところ敵なしとさえ思えるような絶頂期を過ごしていたチャップマン(世界最速左腕ではなく、架空の人物)はシーズンオフに不運にも自動車事故に遭う。
事故で片脚を失ってしまったことによりMLBの舞台からの退場を余儀なくされた。

だが、世間の目から隠れた生活を送るわけではなく、著作を上梓したり、最近では政界進出を目論んでいるともされ、どちらかというと失ってなお輝き続ける人物。
そんな折、5年前の「約束」に言及する政界進出に影を落とすような脅迫状が届き、主人公であるマックス・クラインは調査依頼を受ける。
5年前、約束、事故、関係があるのか。。。

そこからはもうあれよあれよという間にさまざまな事件やら脅迫やらが雨のようにマックスに降りかかり、黒幕は誰で、何のためなのか混沌を極める展開。
途中尽きることない、皮肉やへらず口の応酬が痛快。

チャップマンの妻ジョディとの爽やかな語らいの場面は、プラトニックな男女関係のお手本を見たような気もしたのだが、結局のところねんごろな関係になってしまう、その辺も王道。

また、最後の最後まですべての良き未来へ通じる可能性に背を向け、敢えて痛みのある道を選ぶところも王道。
意地なのか、信念なのか、素直でないだけなのか、いずれにしてもこういう自己犠牲的な「強さ」に憧れてしまうのは、ある意味中二病的な症状なのだろうか。

作者ポール・ベンジャミンは、ポール・オースター(耳にしたことはある名ですが、読んだことはありません)の別名義かつ初作とのことで、ハードボイルド作品は後にも先にもこの一作品のみの模様。
まさに一球入魂の一冊。

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2023年08月12日

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