【感想・ネタバレ】フィールダーのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

かわいいと感じる対象を愛で傍らに置く…そんな行為に潜む大いなる矛盾を引きずり出そうとした著者の試みは、児童虐待、ゲーム依存、ジェンダー差別、LGBTQ、ネグレクト、等々、多岐に渡るトピックスに触手を伸ばして激しく拡大し、そのあまりのてんこ盛り具合には若干の強引さを感じる部分があることは確かだが、一体何層構造になっているのかこの建物は…という感嘆が素直に漏れる。
表面的には物分かりが良くて教養豊か、人当たりも穏やかなリベラリスト…のように思わせる人が、その実は甚だ独善的で狭量、偏見に満ちたゴーマニストである、という事例は現実でもしばしば見受けられることで、そのあたりの描写はとてもリアルで上手い。
人権に対するセンシティヴさがおかしなヴェクトルを持ち、つい要らんことをする、あるいは必要なことをしない、例えば主人公のような人物像も然り。
含め、各登場人物のキャラクター付けが非常に巧みで、徹頭徹尾一貫して崩れないので読み易い。
10年後、20年後に変わらず読み継がれていく作品になるかどうかは分からないが、少なくとも、SDGsという分かったような分からないような概念が人口に膾炙した2020年代の今という時代が持ついくつかの側面を描写した表現がここにあり、今こそ読むべき小説であるということは間違いないと思う。

声を出せないのでテキストチャット使用と説明しながら発音に言及するとは…? とか、スタンプしか会話手段がないはずなのに複雑な罵声を浴びている…? とか、細かくも見過ごすことはできない引っ掛かりが複数あるのは、少し気になった。

「わたしが今考えているのはーアカツキに会いたいということを別にすればーどうすればこのねじくれを直せるのかということです。
 一体の動物としての『自然』。それを実践する方法について。」
「人間は何も汚さないよ。だって、人間は自然なんだから。」
「自分とは異なる理想を持つ生き物に、噛まれて、穴だらけにされる。それなら筋が通るのよ。猫を飼っても、よその子を愛しても、橘くん、それなら」
「遺書がないなんて当たり前なんだよ。(中略)人生全部が遺書だから。たぶん、まじで死ぬことばっかり考えてたと思うよ。いつ終わるんだこれって。でね、そういう奴が待ってるのは、理由じゃなくて合図なの。今だって思える時をずっと待ってる。」

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2023年05月19日

Posted by ブクログ

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出版社で編集者としてのリアル橘とオンラインゲームでのハルオ。担当する黒岩先生が小児性愛と疑われ対応に追われ、ゲームではパーティを組むメンバーの隊長のスキルに驚くとともに現実で彼が母親に虐待されていることに気づく。福祉問題、ハラスメント、かわいいに隠された支配など沢山の問題を提起しながら報道者の良心も踏まえて読み応えがある。
最後の迎えに行く所、ほっとしました。
そしてゲームシーンの様子は楽しかった。

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2023年02月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読むのけっこう辛かった。
勝手に責められてる気持ちになって、
ちゃんとした大人として生きれているのか、
人権やその他の問題にアクションできているのか、って思って。
そこに差し込まれるゲーム世界の安らかさ。
ネットスラングすら優しい。
後半転がるように進んで突き放されたままは終わらなかったから、読後はそこまで辛くない。
正解を求めても仕方ないけど。

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2023年04月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初めての作家さん

普段頭の中でぼんやり考えていることが、ことごとく言語化されたような気持ちになった
人間は食物連鎖に入っていないから高みの見物だと思っていたところは
黒岩さんと熊の話で矛盾として書かれており、熊に襲われることで矛盾が消えると書かれていてストンと心に落ちた。
海で死ぬことも矛盾が消えると思っている、自然に還る=他の生物に食物として扱われると思っているのをズバリ言語化していただき感謝ですという気持ち

他にも苦痛のない絶滅方法を見つけるはすごい言葉だなと、読んでよかった

流行りのスマホゲームはハマりすぎて身を滅ぼす未来しか見えないので手を出さないようにしている
この本を読んで隊長とハルオ、ハチワレ、未央のパーティーみたいなこともあるのかと羨ましくなってしまった

前野氏の伏線回収が見事で、あそこで助けて欲しいと言われた前野氏は救われたのではないかと思った
しかし、ポメラニアンを想定していた犬小屋にハスキーの琴ちゃんはおさまるのかしらと笑ってしまった

最後まで読んで、もっと読んでいたいなと思った稀に出会える最高の小説でした

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2022年11月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

合う合わないがはっきり別れる小説ですね。私はゲームを全くしない人間で、出だしからのゲーム世界の話なのが何だかよくわからなくとても苦痛だった。言ってることの意味も(ゲーム用語?世界観?)よくわからなかったし。
著者は四十代か…。若い人の方が「刺さる」話なのかな、と思いつつも年齢よりもこの話の何処かに感じられる当事者性があるかないかなのかな?それとも共感や感情移入ができるかなのかな?などと考えつつ読むも何かモヤモヤとしている感がずっとあった。
私がこれまで読んだことのない種類の小説なのは確かでした。

世界観とテーマがはっきり分かってからはある程度入り込めたと思うけれど、うーん、盛り込み過ぎというか突っ込んでるけどとっ散らかってるというか、結局解決はしないのなと…。
いや多分、解決云々というところを求める話ではないのだろうとは最後まで読んで思ったけれども正直「ここで終わるのか?こんな終わり方なのか?」とは思いました。
私はちなみに黒岩さんとほぼ同じことをこの春考えていました。だからとても驚いた。そういう風に熊を考える人がいるんだなぁということに。その一点だけでも充分にこの本に出会えた価値はありました。
最後の方は胸が痛くてたまらなかった。だから他の方々はそうは思わないかもしれないけれども私はこの終わり方が全然腑に落ちませんでした。これは今流行りの(?)「推しの話」でもあるのかな?
…うーん、やはり盛り込み過ぎなような。
とにかく読んだことのないジャンルの話で驚きました。すでに大きな賞をたくさん受賞されているけど、こういう話を書く人が純文系の賞を受賞する時代なのですね。

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2023年07月29日

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