【感想・ネタバレ】仕事でも、仕事じゃなくてものレビュー

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Posted by ブクログ

一年前(?!)に買ったまま積読していてやっと読み終えた。よしなが先生は直接お会いしてもきっと魅力的な方なんだろうなと思う内容で面白かった。これからも健康第一で素敵な漫画を描き続けてほしい!

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2023年09月21日

Posted by ブクログ

よしながふみの愛読者なら表紙からしてキュンキュンきてしまうこと間違いなしの丸ごと一冊よしながふみロングインタビュー。よくぞ企画してくれました。「あとがき」によれば最初は対談集が企画されていたということだが、途中でインタビュー本に変わったとのこと。編集者様、慧眼です。対談よりインタビュー本のほうが断然良いです。ありがとうございます。
生い立ちから連載中の「きのう何食べた?」まで時系列に沿って語り尽くされているのだが、なんといってもその時々に何を読んでいたかが惜しみなく列挙されていて目が釘付けであった。
ブリア=サヴァランの言を待つまでもなく、食が人を表すというのは普遍的に言われることであり、その作品の中で「食」を描写することに意識的なよしながふみはもちろんそのことを承知しているであろう。そして何を読んできたかというのはその人を構成する「食」以上の秘密の部分であり、こちらもまた彼女は十分承知しているに違いない。それを敢えてのこれだけの大放出。ありがとうございます(感涙とともに今回二度目の感謝)。
何しろ生い立ちの部分が面白かったのである。有名な話なのかもしれないが彼女の漫画歴が「ベルばら」に始まっていたことを私はここで初めて知った。さらに、雑誌連載よりも単行本派だったところとか、白泉社からウィングスへの流れとか、知れば知るほど「生き別れた魂の姉妹がここに!」と思ってしまって大興奮した。
でも落ち着いてみれば、日本中に私と同じように魂の姉妹と感じる人がいっぱいいるからこそのこの人気でもあるのかもしれない。何しろ人口の多い世代であるので、割合が少なくても数にすれば結構いそうだし。
しかし魂の姉妹ではなくてもよしながふみの素晴らしさはもちろん通じる。漫画評論的に読むのが王道かとは思うが、例えば漫画に特に興味がない人でも、一流の仕事人の考え方を知るという視点からだけでもこの本は十分価値がある。あるいはフェミニズム的な視点で読んでも得るところは大きいであろう。良作は重層的な読み方を許すものなのである。
そして、インタビューされる人に対する知識と尊敬を持っている人が適切に行うと、インタビューとはこんなに優れたものになるというお手本としても素晴らしい。なぜか著者としてはクレジットされていないのだが、聞き手の山本文子さん、編集協力の飯田孝さん、大変な労作、ありがとうございました(三度目)。

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2023年07月24日

匿名

購入済み

よしながふみさんのインタビュー本。
幼少期から今までの読んできたマンガ遍歴や所々小説、アニメの話も織り交ぜ、著者の各作品の裏話やお思いも盛り沢山。
読み応え十分な良書。

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2023年06月18日

Posted by ブクログ

インタビューとしてもかなりのボリュームがあって、まるで一大叙事詩を読んだ後の様な心地よい疲労感と高揚感がありました。自分はずっとよしなが氏の作品を読み続けるんだろうなと思いました。

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2023年03月02日

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「あの人とここだけのおしゃべり」は過去作品のBLなどが多くて、己の不勉強が浮き彫りになりわからないことだらけで楽しめなかったのだが、これは面白い。出てくる作品みんな読みたくなる。説明臭くも言い訳臭くも言葉足らずでもなく、作者の考えていることがきちんと伝わってくる感じ。

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2022年11月09日

Posted by ブクログ

よしながふみのインタビュー本。生い立ちから各作品の解説まで幅広い内容を含む。
特に、各作品についての話は、話作りをどのようにしてきたかが説明されていて面白かった。まずトップダウンで大枠を作り、その中で辻褄を合わせたり目標を満たすために、新キャラやエピソードを思いついて配置する。また、大枠を考える上でも、現在どんな漫画がないか、自分が日頃感じていること、などから企画を練っていく。

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2022年09月19日

Posted by ブクログ

よしながさんの作品に対する思いや考え方、制作にあたり裏話などが知れて面白かった。
読んだことのある作品は特にもう一度手に取りたくなります。

また、子供の頃から読んでいる作品数が多く、幅広いジャンルを読まれていたことに驚かされました。

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2023年10月05日

Posted by ブクログ

漫画との出会いから、漫画家となったきっかけ、デビュー作から、大奥、何食べまで背景をびっしりと語られたインタビュー本。大奥が白泉社で連載した理由など、読みごたえ十分。各作品読み返したくなりました。実際、読み返した。
次回作の構想も話されていて、これも楽しみです。

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2023年06月21日

Posted by ブクログ

社会に対してとてもフラットな目をもっている方だなと思いました。
同世代なので、流行りモノや読んでいた漫画が同じなので、当時はそんなに親しくしていなかった同級生と再会して「あなた、あの時そんなこと考えてたんだ!」みたいな懐かしさがありました

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2023年06月18日

Posted by ブクログ

何故よしなが作品には「世間の目を気にする人」「それを相手に無造作に押しつける人」が多彩なグラデーションで描かれているのか、不思議に思っていた。
作者本人はフラットで大胆な感性に見受けられるが、自分とは異なる人を拒否せず受け入れる素地を、子ども時代に多くの大人と接する中で培ったようだ。
個人的には銀英伝愛読者と知り、納得と親近感を覚えた。

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2023年06月11日

Posted by ブクログ

よしながさんのバックボーンとか考え方がわかって、「大奥」がああいう作品になったことに合点がいった。もともと「昨日何食べた」が友達から回ってきたことが出会いだけど、完全に「大奥」でノックアウトされた。
ほぼ同世代とお見受けしたのだけど、同じ時代を生きていたために、わかる、わかる!と言いたくなる部分と、飄々と壁をぶち壊していく馬力に、さすがです!と拍手したくなる部分もあり。
大学の頃、女性学を学んだとき、目を開かれた思いだったし、それ以前から早く働きたい、自分で自分を食わせたいと思っていた。
それが今、すっかり働くことにくたびれている。
給料が「仕事という我慢の対価」に成り下がっている。
いろいろうまくいかないことに不平不満を言いがちな私なので、やるべきこと、やりたいことをきっちり積み重ねてきたよしながさんがまぶしい。
仕事って、稼ぐことだけじゃなかったはずなんだけどな…。

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2023年05月27日

Posted by ブクログ

全編語り下ろしの、よしながふみ初のインタビュー本。
幼少期からの半生、仕事観、作品の解説とエピソード等を、
詳細に、丁寧に語ってゆく。インタビュー担当は、山本文子。
第1章 漫画に心奪われて  第2章 夢に見た漫画家へ
第3章 BL誌でも、少女誌でも 第4章 解決しないことの中に
第5章 ドキュメンタリーのように 第6章 女性と仕事
第7章 一緒に歳を重ねて  第8章 ずっと漫画と
各章末に注。次作の作品解説有り。

幼い頃から積み重ねられた体験と経験が、
創作の糧になってゆく過程。人間関係とドラマ、料理と食事。
『ベルサイユのばら』『美味しんぼ』『SLAMDUNK』との出会い。
漫研と同人誌活動、そして商業デビューはBL。
20時間超のインタビューで更に語られるのは、自作について。
キャラクターが物語の主ではないことや、
話を文ではなく漫画として脳内で構築していることなど、
作品制作に関しての分析力の高さが窺えました。
また、注は漫画の略史みたいで、内容も簡易にあるため、
未読の作品が知れて良かったです。実に多くの漫画を
読んでいたことにも、びっくりです。
次回作も楽しみだけど、その前に、
書庫から『西洋骨董洋菓子店』を出して再読しようかな。

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2023年05月21日

Posted by ブクログ

きのう何食べた?と大奥でよしなが先生に本格参入。
BLにはジャンルとしてはまらなかったので、読みはするけど…という感じでした。
でも、きのう〜にはまり、それまでも何だか気になる存在だったよしなが先生のこれまでをあらためて知り、先生がすごく漫画好きなんだ!そこに惹かれる要素があるんだと再認識しました。
あのひととここだけのおしゃべり の中でも、そのマンガ好きはいかんなく発揮されていましたが、本書でさらに実感しました。
自分とかぶる時期に「あの頃の」マンガを読まれていた…だから、自分の好みのマンガ、大人っぽい話を描いてくれる少し年下の作家さんなのです。最初は10個くらい年上だと思ってましたが、4つも下…(笑)

ところで、よしなが先生の描く美しい男性が好きですが、女性はあまり美しい人は出てこない…(すみません)。男っぽいからかなあ?
これは森脇真末味先生や惣領冬実先生なども同じと感じる…でも、先達と同様に話の力強さと男性キャラの美しさで読み続けていくことになりそうです。

東京出身の先生なのと家庭環境からか、泥臭くなく、スマート…
そこも田舎者が憧れるところでもあります。

銀河英雄伝説は、タカラヅカでしか観たことなく…スミマセン…

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2023年05月15日

Posted by ブクログ

#西洋骨董洋菓子店 #大奥 #きのう何食べた どれも大好き。#愛すべき娘たち も好きだな。作者による解説や創作の裏話を読んだら、また1巻から読み直したくなったし、未読の作品も読みたくなった。漫画家になるまでの来し方がまた、よしなが作品に直結していて、面白い。作品を読んでいて感じる、視界の広さとか、潔さと慎重さのバランスとかがどこから来ているか、分かった。「あ〜、そうですよね〜」って、頷く言葉多数。

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2023年03月29日

Posted by ブクログ

よしながふみファンのためのインタビュー本。
「西洋骨董洋菓子店」で面白い!と思い、気づいたらほとんどの作品を読んでいました。知らずにBL作品も買ってびっくりして本棚の奥に隠したのですが、結局あまりの面白さにドキドキしながら買い集めてした。。本棚の奥に。

そんなファンなので、この面白い物語を紡ぎだす人は何でできているのだろう??という興味の片鱗を満たしてもらった気がします。ブレなさもかっこいいし、二次創作とオリジナルのキャラクターに対する解釈の違いも面白かったです。
次の作品の構想もあるとのことで、楽しみにしています。

よしながさんの漫画を読みながらたまに読み返したいです。

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2023年01月15日

Posted by ブクログ

かなり読み応えのある一冊。
よしながさんが、とても頭の良い方なんだな、というのがわかる内容でした。
話に出てくる他の漫画家の方の漫画もぜひ読んでみたいと思いました。

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2022年11月03日

Posted by ブクログ

よかった。
面白いけど、めっちゃ長い(笑)。
半分くらいで一度息切れしたけど、なんとか完走できました。

もう、すっごく腑に落ちる一冊。
よしながふみ好きなら読んで損はないと思う。

子供の頃読んでた漫画の話も面白いし、この話やキャラに入れ込みすぎないフラットな視点?がよい。
この熱すぎない、でも冷めてるわけでもない温度感が私は好きなんだな、と再確認。

ずっと描き続けて欲しい作家さんです。

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2022年11月02日

Posted by ブクログ

好きな漫画家さんがどんな作品が好きで、何を読んできたか、どんな影響を受けたかを知る事ができ、とても楽しい1冊でした。

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2022年10月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ーー橋爪だから婚姻届だったと。
 そうです。プロポーズして結婚するなら婚姻届は必要だし、橋爪は真面目だから、昔から考えていたんじゃないかと。キャラクターは一度作ると、そのキャラクターが話を作ってくれるようになると思います。こういう人だったらこうするだろうなと、今度は道筋を考えやすくなるというか。
ーそのあたり、キャラクターを膨らませたり、行動を埋めていくような二次創作での活動から影響を受けていると思いますか?
 どうでしょう。このキャラはこういう人だという解釈を自分の中で固定化するというのは、二次創作では大事だと思います。そこがブレなければ、話は勝手にできると思うので、でも、オリジナルの場合はどうだろう。ただ、二次創作をすることで、自分がどんなタイプの性格をしたキャラが好きかの気づきは得られると思います。オリジナルだけ描いてると、話が先行になってしまうことが多く、どんなキャラを自分が好きなのかは明確に自覚しにくいと思うんです。逆に二次創作の場合は、自分はこういうキャラが好き、こういう関係性が好きというのがまずあるので、そこを出発点にできるのは大きいんじゃないでしょうか。特にBLだと、自分が好きなものを描くということがすごく重要で、結局それが面白さにダイレクトに結びついたりするんですね。熱量が勝るというか。なので、自分の好きなキャラや関係性に自覚的な人のほうがBLは面白いものを描けるんじゃないかと思います。描き手としての自分の持ち味を考えろとか、そんな就職活動の自己分析みたいなことを求められても困りますが、自分の好きなキャラクターや関係性の考察だったらいくらでもできるじゃないですか(笑)。

ーー担当の方からの要望で登場したエイジですが、小野に限らず彼に関わる人たちがメンター的な役割を担いつつ、エイジからもいい影響を受けるあたり、重要な役どころに収まっている印象です。
 そうなんですよ。エイジを入れようと決めたときは、どちらかというとああいう性格がわりと苦手で、騒がしくなるし、でも他のキャラと違いを出さなきゃいけないしなぁ……なんて気乗りがしなかったのですが、描いてみたら存外描きやすくて(笑)。何がいいって、空気を読まずに無神経なところで、無神経だから話を回せるわけです。小野だったら気を遣ってしまって橘に振れない話題も、エイジだったらズバッと橘に聞ける。話の展開において、性格が違う存在が一人いることの重要さを学びました。戦隊ものなどでキャラの違いを際立たせた集団にする意味があらためてわかったというか。

 描くときに裁かないほうが好きなので、物語なんだけど、ドキュメンタリーのような気持ちになっちゃうんですね。ドキュメンタリーと同じで、私は切り取って提示するだけ。だから、「親子っていいよね」とか「こういうこという親はよくないよね」ということを言いたいわけじゃなくて、ただそこにある、あるがままを描きたいなと思っていました。由紀子の祖母にしろ母にしろ、過去にこういうことがあったのだということだけを描いているのですが、それは私の実体験でもあって、自分の祖母や上の世代の人と話したりしていると何らかの事情が垣間見られて「ああ、なるほど」と思う瞬間があるんですよね。そして「ああ、なるほど」以上の感想はなく、その事情の発露の仕方をいいと思っているわけではないけれど、そこに至る因果はあって、それをそのまま物語にも出したいと思っています。「ああ、なるほど」体験を描きたいというか。
ーー物事の是非や何らかの意見表明をしたいわけではないと。
 そうですね。物事の内部構造を見せたいということなのかもしれません。こういう構造だったとわかるだけで、人によって救いになるときがあると思うんです。『愛すべき娘たち』はキャラクターの魅力で引っ張るような物語ではないですし、結果として人間関係の構造だけを見せて終わる話になったので、エンタメとして足りているのかという不安は結局最後まで拭えなかったのですが。

ーー八ページという尺についてはいかがでしたか? それまで商業誌ではあまり描かれたことのない長さだと思いますが。
 それまではほぼ尺というものを意識せずに仕事をしてきてしまったものですから、原稿用紙八枚にどれだけの話が入るものなのか、自覚的に把握をしていなかったんです。だから、この漫画を描いたことで大きな学びがありました。食べ物について描いたうえで一つはエピソードが入ることが体感できて、なるほど八ページには結構入るものだなと気づきを得ましたね。感覚としては食べ物に四・エピソードに四という感じでいけると。これが『きのう何食べた?』に繋がっていくんですよ。『きのう何食べた?』は十六ページなんですが、それだけあったらいろいろ描けるわけで、始めるときにその点で不安はありませんでした。この尺の感覚というのは流用が利いて、自分が描きたいエピソードにだいたいどれくらいの枚数がかかるか、具体的な算段が立つようになりました。何ページになろうと、基本は四か八のエピソードを組み立てていけばいいとわかったのも大きかったです。

ーー十九巻の特装版に収録されている菓子研究家の福田里香さんとの対談でも、「異世界の設定だけど、そこで起こることは非常に少女漫画的なんです。そういう意味では『大奥』は白泉社らしい漫画ですよね」とお話しされていました。この『白泉社らしい』というイメージについてあらためて聞かせてください。
 一つは、物語にファンタジーやSF設定の加味が許されていることですね。それと、男女に限らず人間の性愛や友愛、いろいろな関係が描かれていること。それから<家族>への思いや悩みが描かれているものが多い印象があります。たとえば『日出処の天子」にしても、厩戸王子が真にほしかったものは毛人(えみし)の愛というよりは母からの愛情で。母親に愛されなかった心の空洞を埋めてくれると思えた相手が、毛人だったということだと思うんです。また『はみ出しっ子』や『フルーツバスケット』でもほしかった親からの愛情が得られなかった人たちが描かれています。そういった作品のほかにも『ここはグリーンウッド』や『エイリアン通り』だとか、一つ屋根の下で共に暮らす<擬似家族>が描かれる作品が多い印象で。家族関係の悩みというのは少女漫画に多い題材ですが、白泉社の作品は<擬似家族>として暮らすことが通過点としてあるんですよ。悩んでいる人が男女間の愛情によって救われるわけではないのが<白泉社らしい>なと。それが現実の日本社会ではないところで繰り広げられている。『暁のヨナ』では男女の恋愛も描かれていますが、王朝という血族の話でもあるし、『夏目友人帳』の登場人物たちもある種の擬似家族ですよね。白泉社じゃないけれど私が大好きな『PALM』にもそういう要素があるので、私の好みの問題でもあるとは思うのですが、連綿と続いているそういう何かを<白泉社らしい>と感じています。だから、担当さんからの説得もあったけれど、いざ『大奥』を自分が描くとなったときに白泉社の雑誌である『メロディ』でやらせてもらうのがいいだろうと思えました。

ーー物語を八代将軍・吉宗時代を舞台とした「水野編」から始めたのはなぜですか?
 それはやはり有功の話から始めたら、つらすぎて読んでくれる人の心も折れてしまうかと思いまして(笑)。まず、人情物で一本と考えていました。部外者といえる水野が大奥に入ることで、大奥とはこういう世界なんだと読む方に説明をする形を取りつつ、並行して外部から来た将軍である吉宗が「なんだ、ここは」と大奥を否定するところから始めたいなと思って、<逆転大奥>と銘打っても、読む方にすんなりとその設定が入っていかないと思ったんですよね。登場人物にも男性で構成された大奥というものに「なんじゃこりゃ」と思ってもらったほうが読んでもらいやすいので、そういう読者に近い立場の人物が二人いるうえにハッピーエンドな話ですから、そこから時代を遡る入り口として適しているなと。

ーーデビュー当時から長く漫画を描き続けたいと考えられていて、三十周年も視野に入るほどの時間を積まれてきました。あらためてこれまでを振り返られて、まず心に浮かぶのはどんなことでしたか?
 締切は守りましょう。
ーー漫画家生活の中で大切にされてきたことですね。
 はい。あとは徹夜をしない。自分の健康を守ったうえで、自分のキャパシティを超えない範囲で仕事をする。キャパ超えしそうな場合は勇気を持って仕事を断る。漫画家でなくても、仕事を続けるために重要です。振り返ってみても私はラッキーだったんですよ。ここまで大きな病気をすることも事故に遭うこともなくやってこられた。
ーー「長く漫画を続けたい」というのは、どれくらいの時間を想定されていたのですが?
 漫画家という職業は、一般的な会社員の定年まで働くことができるかは微妙だと思っていましたが、少なくとも五十歳までは続けられなかったら困ると思っていました。食べていけなくなるのは嫌だったんです。
ーー売れたい、ヒット作を出したいという欲はありませんでしたか?
 売れる売れないは運だとか巡り合わせも必要だと思っていましたから、売れるかどうかは気になりませんでした。ただ、<食えない>のは嫌で、繰り返しになりますが、私の中で売れる漫画家と売れない漫画家にたいした違いはないのですが、食える漫画家と食えない漫画家は大きく違います。食えない漫画家は生きていくために漫画を描く以外のこともしなくてはならなくなりますから、それを避けたいと思っていました。
ーー漫画を描いて生計を立てることが大事だったと。
 はい。それはもう絶対に大事でした。ただ自分が不器用な性質で、雑誌の作風に合わせたものを描いたり、ターゲットになる読者層に向けて何かサービスをしたりすることができず、自分の描きたいものしか描けないとわかっていましたので、仕事をくれる出版社に対してできることと言ったら、自分のできる一番クオリティの高いものを出す努力を続けることと、締切を守ることしかできなかったんです。締め切りを守るということはクオリティの高いものを出すことにも繋がっていて、締切までに時間的余裕があれば編集者の方から指摘を受けても十分に直せるし、その指摘が不本意なものであっても冷静に話し合えるんですよ。時間がないと至らないところもあえてスルーされてしまうかもしれないし、納得のいかな指摘でも飲まざるをえないかもしれない。人間は楽をしたがる生きものなので、心に余裕がないと安易なほうを選んでしまうと思うんです。最終的に自分の名前で世の中に出る作品ですから結果は自分に跳ね返ってくるわけですし。問題を避けて余裕を生むために何が重要かというと、睡眠と健康だったわけです。そして、漫画で生計を立てるということが大前提ではありましたが、同時にいつ仕事が来なくなっても仕方がないとも思ってました。私にとって漫画家は夢の職業だったので、子供の頃は漫画家になれないと思っていたからほかの資格職につこうと考えていたくらいで、漫画家になれたことは本当に夢のような出来事でした。それからもずっと夢みたいだなと思っています。そんな夢の中に長くいられることが本当にありがたいし、それだけで十分にラッキーだと思っているので、いつこの夢が終わっても後悔はないです。夢から覚めるのは当たりまえでしょう?という気持ちがどこかにあって。だから夢が続く限り、ありがたいな、ラッキーだなと思い続けると思います。

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2022年10月11日

Posted by ブクログ

ロングインタビュー
生い立ちから漫画家となっての軌跡。特に個々の作品のできるまでの事情や作品への思いなど、とても面白かった。

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2022年09月30日

Posted by ブクログ

読みきれず時間切れになったので、大奥のところだけ斜め読み。
大奥を1巻からぶっ通しで読み返したくなった。

よしながふみさんの作品の台詞の吹き出しの線が、なぜかとても好き。
線なのに、妙にスタイリッシュなんだよなぁ。

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2023年09月21日

Posted by ブクログ

詳細で丁寧なインタビュー
私はよしながさんの作品は「大奥」「きのう何食べた?」くらいしか読んだことがないし、BL作品も超ライトなファンだと思うけど、幼い頃から漫画が好きだったことやスラムダンクの二次創作など、世代やジャンルが違っても共感できるところがあった。漫画って楽しい!

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2023年04月03日

Posted by ブクログ

ファン向け。
前半、未読の作品が続いてついていけない感があったんだけど、後半はとても面白かった。大奥とか改めて読み返してみたくなる。
初期のBL作品は読んだことなかったけど、読みたくなりました。

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2022年11月13日

Posted by ブクログ

よしながふみさんのインタビュー本。
これだけれ1冊が成立する漫画家さんがどれほどいるのだろう。
そしてその作品のほとんどを読んでいるので「なるほど!そうだったんだ!」みたいな感じで読みました。
ファンブックみたい。
でもちょっと違う。
どの雑誌にも当てはまらない(当てはまれない?)からこそ彼女の作品は素敵で、そして「それでもいいんだよ」と創作したものがどこにも当てはまらないことを肯定してくれている気がする。
(とはいえ素晴らしいからこそ世に出ているのだけれど)

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2022年09月28日

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