あらすじ
『戦艦武蔵』『破獄』などの作品で知られる作家・吉村昭(一九二七―二〇〇六)は、公私ともに独自のスタイル貫いた。「一流料亭より縄のれんの小料理屋を好む」が、「取材のためのタクシー代には糸目をつけない」。「執筆以外の雑事は避けたい」一方、「世話になった遠方の床屋に半日かけて通う」。合理的だが義理人情に厚く、最期の時まで自らの決断にこだわった人生哲学を、吉村自身の言葉によって浮き彫りにする。
目次
第1章 毎日の暮らしの中で――日常の作法
第2章 これは小説になる、を探して――仕事の作法
第3章 生活の中に文学を持ち込まない――家庭の作法
第4章 食と酒と旅を味わう――余暇の作法
第5章 幸せだなあ、と毎朝つぶやいて――人生の作法
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
池波正太郎の「男の作法」のような、小さなこだわりから、凛とした生き方を窺い知れる内容で非常に興味深かった。
この著者の、吉村昭に関する書籍はもう一冊、小学館文庫から出ているようなのでそちらも購入しようと思う。今から楽しみだ。
Posted by ブクログ
吉村昭が公的な記録をも信用せず、必ず現地に足を運んだ理由は、「活字になった記録があてにならないことを痛感しているからだ。」と、著者がこの本の中に書いている。この1カ所に付箋をつけた。
吉村昭の小説が好きだ。小説の持つ雰囲気と、この「吉村昭の人生作法」に書かれた生き方は、しっくりと重なる。
Posted by ブクログ
吉村昭氏が私の読書との大きな出会いと言っても過言ではない。
祖父の家にあった「戦艦武蔵」を中学生の頃に読んで以来、私の蔵書記録の中では断トツの58冊(たぶんそれ以上)を読んでいる。
ちなみに2位は司馬遼太郎氏の27冊。3位は宮脇俊三氏の19冊。
今後の人生においても吉村氏を超える作家に出会うことはないのではないだろうかと思っている。
どの作品も私にとっては読みやすく、氏の書く世界にどっぷり入り込み、歴史の奥深さを知ることができた作品の数々であった。
また、氏のエッセイなどにも書かれていたが人生の流儀、仕事の作法などひと際こだわりの強い作家でもあった。
ファンとして読んでおかなければいけないだろう。
吉村昭を知るには笹澤信氏の「評伝 吉村昭」と共に手元に置きたい1冊である。
Posted by ブクログ
地方紙の書店員がオススメする本のコーナーで、紹介されていたので読んでみた。 「仕事の流儀から最期の選択まで」とのサブタイトルであるが、日常の作法、仕事の作法、家庭の作法、余暇の作法、人生の作法と五つの章からなっている。
第一章の「毎日の暮らしの中で‐―日常の作法」を読んだだけで、吉村氏の生真面目さ、律義さ、堅実さと合理性が伝わってくる。さらに読みすすめると、堅実さだけではなく、時には賭けに出ることもあったのがわかる。肺の難手術や定職もないのに結婚に踏み切ったことなどだ。
「おわりに」にもあるが、確かに堅実さだけではなく、順調とは言えない状況からの挑戦は、読んでいて勇気を与えてもらった。