あらすじ
十進法に基づく円形新貨幣を鋳造し、新しい通貨制度を確立。地租改正や廃藩置県を行い、租税の基盤を築く。全国に鉄道網や大工場を築くなど、国を挙げて殖産興業に取り組み、世界市場で存在感を発揮する――。
明治維新は、わずか数年で国家の近代化を実現した、日本史上の〝奇跡〟と呼べるような出来事だった。
司馬遼太郎の『歳月』によると、幕末~明治初年の国家歳入は1100万石だったという。1100万石というと、現在の価値にすると5500億円程度とされる。その少ない元手の中で、明治新政府はいかにして、革新的なイノベーションを起こしたのか。数々の革命を実現するための資金はどう調達していたのか。そしてその結果、日本人は何を得て、何を失ったのか…。お金の動きから見る、新しい幕末~明治維新史。
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Posted by ブクログ
お金の視点からの明治維新。
とても興味深くて面白かった。
江戸時代の武士はお金について話すのを卑しいこととしていた風があり、今現在もお金の話を避けがちな日本人。
きちんと考える人ばかりだったら、明治維新はもっと違う形だったかもしれない。
個人的には、戊辰戦争は要らなかったなぁと思っていたので、この本でやっぱりそんな話をしていたのが非常に共感できて良かった。
Posted by ブクログ
明治維新での兵士と教育について知りたくて読書。
本書は、幕末から明治維新、明治時代を収支決算、つまり、「お金」で読み取っていく本。一般的な歴史本とは違った視点が浮かび上がってくる。
現代日本で山積する課題の中でも教育改革は特に筆頭格で叫ばれると思う。
現在の日本の教育制度は、明治期に制度設計されたものが苗床になっている。子供たちの得意分野や能力を伸ばしづらい平等、平均点主義が色濃いのが特徴だ。
その目的は、本書の言葉を借りると、「死を恐れぬ最強の兵士、過酷な労働を厭わぬ女工たち。」(P159)を大量生産することを目的としたものだったから。
現在の会社員中心のサラリーマン社会も、戦後、各種税金の徴収をしやすくするために促進したとされる。それに加えて、何十年もの住宅ローンを組んで「持ち家を持つことがサラリーマンの夢」みたいな風潮を作り上げることで、より安定した会社員を辞めないようにしたとも言われる。
日本は、独立してフリーランスとなったり、起業したりがいまいち盛り上がらないのは、そんな戦後の社会風土が影響していそう。
閑話休題。【第四章】最良の兵士と労働者を育んだ教育制度を特に興味深く読んだ。
明治になってから教育費負担が格段に増えたことがわかる。
最後の第五章で触れられる「国税収入に占める酒税の割合」(P197)。日清戦争開戦から終戦直後は、国税に占める割合が35%を超えていて驚く。
朝鮮戦争の開戦後も大きく割合が増えている点も面白い。統計最新の2005年の割合は3.4%とのこと。
それにしても、明治維新直後の欧米への外遊、お雇い外国人、国費留学へ膨大な費用がかかっていたこと。果たして、それらが、30年後、50年後どのくらい国益となったかを検証して、様々な説を考えてみるのも面白いかもしれない。
歴史をかじった人間には、よく知られているグラバーを始めとする幕末の外国武器商人たちは、トータルでは意外にもあまり儲かっていなかったそうだ。
読書時間:約1時間5分
Posted by ブクログ
表紙がフルベッキ写真なので、最初はかなり胡散臭い本なのでは?と疑ったけど、なかなか面白い本だった。特に幕末の出来事をカネの視点から分析しており、なるほど!と思わされることも多く、その部分に関しては星5つ。ただ、輸入関税を下げさせられたのは長州による下関での無謀な攘夷行動の代償やのに、その点については曖昧に書いていたのは気になった。日清日露戦争あたりの話以降は単なる国の収支の話が主であまり面白くなかった。
なお、「おわりに」にある「日本も植民地になっていたら良かったのでは?」というのはあまりに極論。また、アメリカ大統領ウィルソンが唱えた民族自決権によって、あたかも第二次世界大戦後にアジアやアフリカが独立したような印象操作も強引。