【感想・ネタバレ】掬えば手にはのレビュー

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ネタバレ


前回読んだのが幸福な食卓だったのも相まって真の悪人は誰もいないストーリーが良かった。たまたま、アフターストーリーも収録されてたのを見つけて読めたが大竹さんが地味に好き。

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2024年04月14日

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ネタバレ

人を救うことは難しいことだけど、人を掬うことは実は簡単にできるのかもしれない。

主人公の梨木匠くんは人からふとこぼれ落ちた感情が、深く手の届かない地に着く前に拾い、掬うことができる。
まとめると、人の心が読めて人に寄り添うことができる人。
まっすぐに人と向き合い、相手が求めていたであろう言葉をさっと言ってのけることができる。

人を守る。助ける。救う。そう考えると難しいような気がしてしまう。
だけど、人の感情を掬う。拾う。寄り添う。それは簡単なことなのかもしれない。
何気なく口にした言葉で人を傷つけてしまうことと同じで、何気なく口にした言葉や自分の行動で人を掬うことだってできる。
落ち込んでいた香山くんに声をかけたように、河野さんが初めて教室に入った時、梨木くんがTシャツを見せたように、大竹さんと常盤さんに寄り添い続けたように。
少し光に照らされるくらいがちょうどいい。
後は自分の力で前に進んでいく。
タイトルの「掬えば手には」とはこういうことではないかと思った。

そんな梨木くんのまっすぐさ、勇気、人を想う心が梨木くんに関わる人達を暖かく照らしていた。
彼は人が良過ぎるのではないかと、読み進めながら少し心配にも思った。

誰にでもできることが普通なのか、普通ではないのかそれは本人の捉え方次第だと思う。
誰にでもできることをするのが難しい人だっている。その人にとったら、普通のことではないし、羨ましいことかもしれない。
普通とは多数派の人が声を大にして言っているだけ。普通にいいも、悪いもないと思う。
自分と向き合うのは、自分を1個人で見ることが大切だと思う。
自分は他とは違う1人の人間だと。

最後に常盤さんは行ってしまった。
でも常盤さんを掬えば自分の手には光が残った。(最終ページ14行目)
その光がいつか普通であることに、嫌気がさしていた自分に対しての自信へと変わるのだろう。

初回限定の別冊子のアフターデイも拝読。
後日談として、物語の最後に載せていて欲しかった。
そのくらい彼ら彼女らの今後が気になる終わり方だった。
少も、常盤さんは元アルバイト先のNONNAを「居心地のいい店でした」と口コミしていたことがよかった。
元気でなんとかやっていると分かった瞬間だった。
そして登場人物たちの今後が、明るいものでありますようにと願わずにはいられない。
そんなお話しだった。

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2024年03月06日

Posted by ブクログ

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冒頭、何か特別な能力を持つ主人公が周りの人を救っていく物語か?とワクワクしたが、それこそがミスリードだった。特別な能力なんて現実には存在しない。人の心を読む力なんて存在せず、自分を開示して、相手の話を聞いて、ただ心に寄り添うしかないのだ。

中学生時代に不登校から救った子が、大学生になっても主人公に何かと絡んでくるのは、恩返し以上の気持ちがあるように見えたが、その点には言及されず、本当に恩返しの意味で接していただけのようだった。そんなことありえるかな?少なくともどちらかは恋心を持ちそうなものだが、私が恋愛脳すぎるのか?あまり納得感がなかった。
ただ、主人公の愚直なコミュニケーションで、常盤さんが少しでも救われたのはよかった。

また、この小説で気付かされたけどわたしは一人称で進む話のほうが好きだ。読者が神視点だと何だか興醒めしてしまう。

p133
勝手に人の心を読んで、相手をわかった気になるのはたやすい。勇気を振り絞る必要もないし、相手も自分も傷つかず恥もかかずに済む。だけど、目の前の相手に踏み込むのは難しい。誤解もわだかまりも照れ臭さも生まずに、都合よく人の心に触れられるなんてことはないみたいだ。

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2024年05月09日

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中学生のころ、不登校だったのにも関わらず、主人公が寄り添ったおかげで、学校に通えるようになった三雲さん=大学での明朗快活な友人 河野さんだと、後々分かった時、鳥肌がたった。

この主人公は、なんの取り柄もないと自分のことを言いながら、人の心に寄り添い、主体的に動けることが強みだった。

口の悪い店長大竹さん、スポーツに対して真っ直な想いをもつ香山、バイト先の無口で心を閉ざしている常盤さん、ページを進めていくにつれて、この物語の登場人物全てが、「人らしく」「純粋に」いい一面にたくさん触れていくことができる。
特に口の悪い大竹さんなど周りから悪く思われる人なのにも関わらず、そんな人ともうまくやってのけ、かつ、大竹さんのいい面を捉えることができる主人公はあまりにも人たらしの「才能」「取り柄」があるといえる。大竹さんと飲みにいくのにも億劫に思わず、うまくあしらう姿は、色々な立場の人と関わらなくてはいけない社会人にとって勉強にもなる。
また、主人公は、「人」に対して、強く興味を持っており、その人の全体像を知ろうとする。人を、表面化された一面で判断しようするのではなく、その人の背景には何があるのかを考える事ができる人だ。(下記、登場人物の詳細)
個人的には、
世の中の大半の人は、あまり「人」に興味を持っておらず、「自分」に目を向けている人が多いと思う。そのため、表面的に見える部分で判断を下し、人との距離感を保っている、深入りしない人が大半だと考える。
ただ、この主人公は、人との関係構築を厭わず、「自分」に目を向けることはあまりない。
私もこの主人公にかなり近いタイプ。
どっちがいいとかはないが、主人公及び、自分の価値観(様々な人と対話をすることで、自分の価値観を広げ、客観的な視点を持つことを忘れない)を大切にしたい。

興味深かったのは、名前の話。
河野さんは、父親がつけた、父親の名前が1文字入った自分の名前を嫌っていた。
主人公(匠)は、自分の能力とは不釣り合いな(匠)という名前を嫌ってきた。
私は自分の名前を気に入っているため、自分の名前が嫌いな人もいるんだと思い、将来はよくよく考えて名付けようと感じた。

物語としては、優しい気持ちになれ、涙が溢れた。しかし、常に主人公との会話ベースでしか、登場人物の姿を知ることができなかったので、登場人物の背景描写が浅いと思った。
あと、中絶経験、父親が嫌での不登校などの詳細な描写が少なすぎて、感情移入しづらい部分があった。あと、設定はありきたり、、?かな?とも少し思ってしまった部分もある。

………………
表面 口の悪すぎる店長
背景 最初はバイトとうまくやっていこうと思い優しくしたが、離れられちゃった経験あり。オムライス屋さんを始めた経緯は、だいすきなおばあちゃんがオムライスをよく作ってくれたから。そんなおばあちゃんは認知で自分のことを忘れてしまった。
人との距離が下手だからこそ強気でいることしかできない

表面 友達が多い河野さん
背景 不登校経験あり。父親が横暴で口が悪く、そのせいで抑圧され、学校に通えなくなった。

表面 無口で真面目な心を閉ざした常盤さん
背景 高校時中絶経験あり。元々は明るくておしゃべりだが、それきっかけで罪の意識に苛まれている。

などなど、、、





以下、印象深いフレーズ
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●だとしたら、河野さんはどうして閉じこもっていたのだろう。そして、どうやって外に出てきたのだろう。毎日会っているのに、今さら過去の話をする機会はなくて、入学式の前に話しかけた言葉は宙に浮いたままだ。あの時、河野さんともっと話しておけば。そして、ぼくのことだって話していられたら。触れられたくないくせに、誰かに知ってほしい。そんな思いはいくつかある。ぼくにも、きっと河野さんにも。
勝手に人の心を読んで、相手をわかった気になるのはたやすい。勇気を振り絞る必要もないし、相手も自分も傷つかず恥もかかずに済む。だけど、目の前の相手に踏み込むのは難しい。
誤解もわだかまりも照れ臭さも生まずに、都合よく人の心に触れられるなんてことはないみたいだ。

● 「本当やめてくれ。もう今日だってへとへとなのに」「俺が梨木の心を読んでみるに、うん、走りたいって言ってる」「少しも言ってないから」
二人でそんなことを言い合いながら、駅へと向かう。打ち明け話にどうでもいい話。こんなことを繰り返しながら、ぼくたちは少しずつ確かなものを手に入れていくんだ。そんな当たり前のことを知ったような気がした。

● 大竹さんは鶏肉を刻みながら言った。
生まれたことに喜びを感じられるやつばかりじゃない。そんなことを言ってしまえるのは、ぼくと大竹さんの生きてきた時間の差だろうか。この世に生まれてよかったとまでは、言い切れない。だけど、生まれたことが喜びではないと感じるほどの苦しみを、ぼくはまだ味わっていない。
「消え物がいいな」大竹さんはそう言った。

● そう。人には踏み込むのに、自分の深いとこは開かずに適当な話ばっかするじゃん」
管識をしているわけではないけど、大竹さんの言うように、ぼくは誰にも家族の話や自分自身の思いを話したことがない気がする。たまたまそういう場に出くわしていないだけで、誰だってそうそう打ち明け話などしないはずだ。そう思おうとして、少しひっかかった。ぼくは人の心を読めるなんて言っているくせに、自分の心に触れられることをどこかで避けているのだろうか

● 「ぼくは人の心がわかる。人とは違う部分があるって」一人の心が読める」そんなの、共に時間を重ねれば、誰でもできることだ。完全に正しく他人をわかることは不可能だ。けれど、一緒にいれば相手が何を考えているのか、どんな気持ちでいるのか、気づけることだってある。そんなごく当たり前のことを、自分の力だとじないと進めないくらいに、ぼくは何も持っていなかった。
「普通って何がだめなの?」香山は眉をひそめた。
そう言えるのは、香山が自分だけのものを持っているからだ。人より速い走力も、それを放棄した後悔も、真剣さを捨てられない今の自分もーーー

↓店長のあしらい方うまいシーン
● 「大竹さんとやってくのしんどいですって突然辞められたんだよな」大竹さんは昨日のことのように話した。
「それで、ますます言葉も態度も悪くなったんですね」
「そうそう。ちゃんとしてても、辞められるんだから、いい人ぶってもしかたねえだろう。どんどんひどくなって、今じゃ文句言うのも嫌味言うのも癖だな癖」「それ、ぼくがいる間に直しましょう。ぼくが社会人になったら、誰もバイトに来てくれなくなって、大竹さん一人で働いていくことになりますよ」
ぼくが言うと、「お前、えらく上から目線だな」と大竹さんは舌打ちをした。
「大竹さんのためです」





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2024年04月29日

Posted by ブクログ

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瀬尾まいこさん作品は5冊目。
人の心が読める能力のような?守護霊と会話が出来る謎の能力のような?不思議な力を持つ主人公梨木君が、誰かのために色々な人に手を差し伸べていく。
瀬尾さんの作品には、やっぱり根のいい人しか出てこないし、人それぞれの辛さや不器用さがありつつも、心温まるお話。
おかしいな、私こういう綺麗事並べただけの夢物語は苦手なはずだったのに、瀬尾まいこさんの作品だけは、受け容れられる。
残酷で不条理で泥臭くて人間臭くてエログロぐらいがちょうどいいはずの私が。
それと正反対の物語でも拒絶反応が起きないから不思議。
こんな優しさに満ちた世界で生きてみたい。

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2024年03月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

瀬尾さんの書く小説は優しい人しか出てこない。
心がほんのり温かくなった。
でもやっぱり私からは棘も生える。笑
何度となく褒めらる主人公が永遠にそれを否定し続けてるとこ。
それって相手がいいと思ってくれたものを相手ごと否定することにならないか?
そこがずっと気になっていたのでした。

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2024年02月26日

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