あらすじ
フランスの大学入学資格試験では必須の「哲学小論文」。その過程で学ぶ「思考の型」とはどのようなものなのか――。
哲学・人文に関心の高い人はもちろん、ビジネスシーンで「思考の重要性」を痛感している人は必読の一冊。
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Posted by ブクログ
「市民」を育てるために哲学を必修させるというのは、とてもいい理念だと思う。(フランスの歴史や文化という文脈があるからこそ出来ている。)
バカロレア試験の問いは「はい」「いいえ」で答えられる、クローズドクエスチョンが主流なようだ。本来哲学ではこういったクローズドクエスチョンは危険な問いであると、私は認識している。答えは「はい」か「いいえ」のどちらかであるというバイアスがかかってしまうからだ。
本書で紹介する「思考の型」(バカロレア試験の解答方法)は、「はい」と「いいえ」両方の論拠を示した上で、答えなければならない。この、両方の論拠を示すということが非常に重要な鍵である。両方の立場に立つことで問題をより本質的に捉え、批判的に考えることができるのだ。そして、両方の立場になって考えるということは、民主主義において基本的な姿勢である。そういった姿勢の「市民」を育てることにこの哲学教育は意義をもっているに違いない。
クローズドクエスチョンはバイアスに囚われるという危険があるが、この「思考の型」の手順を踏めばその危険を回避することができそうである。むしろ、「はい」「いいえ」という答えやすい形から議論を始められるため、問題に取っ掛かりやすいという良さもありそうた。