あらすじ
《コミュニケーションで悩む人たちへ》
コミュニケーションや感情表現が上手できないと悩んだ著者はやがて、当たり障りなく人とやり取りする技術を身につけていく。
だが、難なく意思疎通ができることは、本当に良いこと、正しいことなのか。
なめらかにしゃべれてしまうことの方が、奇妙なのではないか。
「言語とは何なのか」「自分を言葉で表現するとは、どういうことなのか」の深層に迫る、自身の体験を踏まえた「当事者研究」。
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自分だけのものであるはずの感情を、多くの人に共通する「言葉で表す」ことなど、どうしてできるのだろうか。
そして、人に「伝える」とはどういうことなのか――。
言葉、存在、コミュニケーションをめぐる思考の旅が始まる。
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【目次】
■はじめに
■1章 それぞれのタイムラインを生きるしかない——定型発達という呪縛
■2章 胚胎期間という冗長な生き延び方
■3章 社会なしに生きられないが、社会だけでは生きるに値しない
■4章 自律と自立を手にするための学習
■5章 絶望を冗長化させる
■あとがき
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感情タグBEST3
Posted by ブクログ
人と滑らかに会話できた方が危険なのではないか、なぜなら、滑らかに話せるということは自分が勝手に作り上げたストーリーに沿って話してるからなのではないか。日常会話に意味なんて求めてはいないけど、会話自体が目的の場合には、相手との関係性を深めたい、自分以外の考えを知りたいといった意味が伴うと思う。つながりたいから会話する。この本を読んで、その会話が、排他的で独りよがりだったと思い知らされた。ハウツー本ではないので実践に移すことは難しいのだが、ただ読む前と後では気づきや視点が増えたので、受け入れられない事態にあっても排他的になる際の抑止力になったと思う。考えは人それぞれであるべきだし、必ずしも分かち合わなくていいとは思っているが、やはりそれでは不十分な気がする。相手と自分のベターな妥協点を探ることを放棄してはいけないと思う。もし相手とつながりたいのであれば。まだ自分の中で整理しきれていないので、また時間を置いて、読み直そうと思う。
Posted by ブクログ
“社会性のなさだけを取り上げられ、自分を全否定されると、それがもたらすのは萎縮しかない。自分という存在と他者という存在。関わり方は人それぞれなはずだ。けれども、定型の発達が期待されている中では「人それぞれ」という多様性の尊重は、スローガンほどには許されていない。人それぞれが可能になるには、冗長さが、時間の遅延が欠かせない。”(p.9)
“人は頭だけで考えると上気してしまう。それでもあれこれと際限なく考えられはする。そこで注目したいのは、「胸襟を開く」とか「open my heart」あるいは「腑に落ちる」「my gut feeling」という表現がある通り、人には頭ではなく胸や腹の理解があり、そこか、生まれる言葉や表現があることた。”(p.142)