あらすじ
「定説」も「最新学説」も一から見直そう!
45のクエスチョンで日本史を総ざらい。
人事、経済、組織、リーダー、国際環境――
古代から近世まで「時代を動かす力」がわかる!
【目次より】
日本史は何の役に立つのか
歴史用語を疑え
史実とは何か 史料の使い方、疑い方
流れを押さえる四つの視点
世襲のメリット実力のメリット
史料が少ない古代史を読み解くには
ヤマト王権のフランチャイズ戦略
「日本」をつくった警戒レベルMAXの外圧
律令体制を税金問題として考えてみよう
朝廷は全国を支配できていたか 「面」の支配と「点」の支配
貴族の地方放置が武士を育てた 平将門の乱を再評価する
実はもろかった摂関政治
東国の武士たちはなぜ流人の頼朝を担いだのか?
どうして源氏将軍が絶えたのに鎌倉幕府は続いたのか
元寇は本当は避けられた?
「銭」に負けた得宗専制
鎌倉幕府を倒したのは後醍醐天皇ではない
応仁の乱は尊氏派vs直義派の最終決戦だった
信長最大のライバルは一向宗だった
江戸時代 近代から見るか、中世から見るか
徳川幕府の名君と暗君
「鎖国はなかった」説を外圧理論で考える
江戸幕府を滅ぼした「働かないおじさん」問題 ほか
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
定説や最新学説等に疑問を呈しながら古代~幕末までの歴史が語られている本。
時代の流れを意識した解説が心がけられているのでそれぞれの出来事の繋がりがわかりやすかった。
また、秀吉が家康を倒さなかった理由に関して史料がなく明確なことはわからないと素直に書いてあるのは好感が持てた。
歴史というものは諸説ありと言われることが多いように、解釈が大きく割れるもの。
著者の見方も100%正しいかはもはや当時の人にしかわからない。
本を読み終わった後自分でも検証し考えてみるのも面白いだろう。
Posted by ブクログ
なんと言っても、死に際の秀吉が徳川家康に頼んだという秀頼を頼むという言葉が、命乞いだったのかも、という推論が衝撃でした。
他にもいろんな時代のいろいろな解釈が示されていて、改めて歴史って面白いと思いました。
Posted by ブクログ
『日本史を疑え』という題は「如何いうこと?」と思ってしまう。そう思いながら紐解き始めると少し夢中になるような内容だ。
「疑え」とでも言われても、「日本史」というような「伝えられる過去の出来事等」というのは「既に変わらない、変えようのない過去」なので「疑う」という余地が少ないような気もしないではない。が、「これが“意味すること”は“如何いうことか?”」というように「熟考する余地」は十分に在る。その「熟考する余地」に想いを巡らせ、考え、論じてみるというようなことを「疑え」と称しているのだと思う。
本書はその「熟考する余地」を見出して行くという「疑え」を提起する総論の後、古代、平安時代、鎌倉時代、室町時代、戦国時代、江戸時代というように、「時期毎のテーマ」を取上げている。
「既に変わらない、変えようのない過去」なので「疑う」という余地が少ないような気もしないではない「日本史」ではあるが、それでも考えてみると「判っていない」という事柄の方が「判っている」という事柄よりも多い筈である。その「判っていない」を「判ろう」と研究が積上げられている。
積上げられたモノが定説と化し、「学校で教えるような内容」になって行っている。が、この「定説」も変わり続けているという面が在る。端的に言えば、例えば現在50歳代の人達が学校で教えられた事柄と、現在20歳代の人達が学校で教えられた事柄とを比べる場合、「ディーテールの差異」が存外に多い。その「ディーテールの差異」が「定説の変遷」に他ならないのだ。
本書では、その「ディーテールの差異」である「定説の変遷」に通じるようなことに言及もしながら、歴史の諸相を「疑え」と「考える」ような内容を問い掛けている。実に興味深い!
Posted by ブクログ
過去のことなのに、歴史がくるくる変わるから面白い。
だからこそ、日本史の常識は疑わなければいけない。
秀吉がなぜ家康を殺さなかったのか、とても興味深かったです。
本郷先生、資料の裏付けができないことを理解しつつも思い切ったことを書かれましたね!
歴史のifは面白い。
Posted by ブクログ
記録によれば2年前(2022)のコロナ体制の時に読み終わった本です、読み放しにしていて部屋に放置してあったのを、GWの清掃で発掘しました。
この本の筆者である本郷氏の本は、これで33冊目(何冊かはレビュー未着手)となります。記録に残っている歴史と本当に何が起きているのかは異なるという見解で「逆説日本史シリーズ」をかつて愛読しましたが、本郷氏の本はそれに通じるものがあります。
本を仕上げるために、古書を読み解いてそれを名誉の得られる学会に投稿して終了するのではなく、素人にもわかりやくす解説する本を出してくださることで、私のようなものでも歴史の新たな側面を楽しむことができます。このような本を読むのが贅沢の限りだと感じます。今後とも彼の著作を楽しみにしたいです。
以下は気になったポイントです。
・その時代を何と呼ぶかは、それ自体に歴史の解釈が入っている、古い順から、飛鳥・奈良・平安・鎌倉・室町・安土桃山・江戸と辿っていくと、一つのルールが見えてくる。それは地名に由来していること。イギリスは王朝名で時代を区分する、中国の時代区分も王朝が名乗った国号による(p32)万世一系という建前に対して実際の権力はどこにあったかというリアルな歴史認識を示している(p33)
・新井白石は、朝廷で9回、武士の世で5回の大きな変化があったと説いている、朝廷の9変は、天皇と政治の実験との距離を一つの変化の尺度としている、武士の5変(鎌倉幕府成立、承久の乱、室町幕府開設、織田豊臣政権、江戸幕府)は、朝廷から武士に政権が移ったことである(p35)
・古代の調停は、全国に国衙(今で言えば県庁)を設置し、国分寺・国分尼寺を置くなど、律令体制のもと日本全国を支配していた。しかし、古代王朝は、機内ー瀬戸内海ー博多を核とする完全な西国国家であった。東穀は日本のメンバーとは言えない状態であった。(p38)鎌倉時代とは、朝廷・鎌倉幕府・奥州平泉政権を加えた三国状態だったと考えた方が良い(p39)
・国の存亡の危機であったのは歴史上3回、1)白村江の戦い(663)、2)黒船来航(1854)。3)敗戦(1945)、これは異民族による征服が実現してしまった(p43)
・権威が通じなくなるのは、時代が変化している局面である、それまでのグループ内のフール、秩序意識(身内の論理)が通じなくなる、その典型が戦国期の天皇、この時期の天皇は在位期間の長い天皇(後土御門天皇、後柏原天皇、後奈良天皇)が続く、お金がなくて代替わりの儀式ができなかった(p49)
・ヤマト王権による支配とは地方豪族という点を結んでいく「点の支配」だったのではないか、実際に武力で制圧するのは多大なコストがかかる、大陸由来の文物とテクノロジを見せつけた上で、連合を結んでいく方が簡単である(p62)
・持統天皇は父子の直系による縦の継承を明確に打ち出した、日本で最初の元号は「大化」されるが、その後しばらくして使われなくなってします、今に続く元号の始まりは「大宝」である。(67)
・大友皇子は白村江の敗戦でダメージを受けた西国地域で軍勢を集めることが厳しかった、そこを見た大甘の王子が美濃以東の兵を集めて近江大友皇子を攻めた、初めて東から都を攻めて勝利した。この大海人皇子が即位し、天武天皇となると都を近江から飛鳥に移し、不破・鈴鹿・越前の藍発(あらた)に関所を設置し、これを「三関」とし東への守りの要とした、のちに愛発関は、近江の逢坂の関に代わる(p69)関東とは、そもそも「関の東」のことで、つまり古代においては福井から岐阜の西端を通って、三重に至るラインから東は関東であった。五機七道とは、畿内5国(大和、山城、摂津、河内、和泉)とそれ以外の地域である七道(東海道、東山道、北陸道、山陽道、山陰道、南海道、西海遠)である(p70)
・鎌倉幕府が「面」として支配していたのは、相模・武蔵・駿河・伊豆の4カ国に加え、上綜・下総・阿波・下野・上野など有力御家人たちの領地である東国が中心で、西国は源平の戦いや承久の乱の戦勝によって得た領地をまだら状に支配していた。(p85)
・摂関政治から院政への変化には、母方重視の招婿婚的世界から、家父長が強大な男系的世界へという、より根底的な変化があったと考えられる(p110)
・太宰府は、九州九カ国を統括する組織であり、太宰大弐が地方官として頂点である、当時の経済における大動脈の瀬戸内海を抑えることになった(p115)
・平清盛、源頼朝、「の」が入る。この時の「平」「源」は名字でなく「氏」である。ヤマト王権では5−6世紀にかけて、氏姓制度を導入した。豪族たちに「氏」と「姓(かばね)」を与え、身分の序列化を図った。「氏」は同じ血族をグループとしてまとめるもの、「姓」は、臣、連など朝廷内での身分を表す称号。氏は天皇が与えた一族の名称で、血筋に基づいて世襲していくので、一族の呼称は平氏、源氏氏となるので、源頼朝は、源氏の頼朝なので「みなもとのよりとも」となる。鎌倉時代になると、「の」がつかない「苗字」が登場する、頼朝の妻である北条政子は「の」が入らない、つまり「北条」は「氏」ではなく、家を表す「苗字」だということになる。(p163)平安後期から鎌倉になると、源・平だけでは家の区別がつきにくくなるので、「氏」としては平氏でありながらも、財産=土地なので、家を呼ぶ苗字として地名が使われるようになる。千葉氏、三浦氏など(p163)
・足利政権には、二つのグループがあった、尊氏派と直義派である、尊氏派は、管領である細川氏を中心に、赤松・京極・一色、直義派は、三管領家の、斯波氏をはじめ、山名・大内・土岐氏であった。両者の対立は、そのまま尊氏と直義の対立を継承していた、尊氏が朝廷融和派、直義は、朝廷分離派であった(p181)
2022年5月26日読破
2024年5月29日作成
Posted by ブクログ
鈴木保奈美さんの『あの本、読みました?』に出ていた本郷和人さんの本第二弾。
時代の流れの中で今までの歴史の定説への疑問を語る。
天智、天武、持統天皇が天皇による本格的統治の始まり
律令制度の公知公民は絵に描いた餅
南北朝時代が五十年以上続いた理由
キリシタン大名のねらい
秀吉が家康を倒さなかった理由など
推論を交えながら興味深い話を展開する。
新しい角度で歴史が見られて面白い。
Posted by ブクログ
日本史の学び方、古文書の読み方の基本、定説や最新学説、
史実の確かめ方、歴史の流れ、世襲と実力等をレクチャーし、
各時代の定説や史実への視点を、疑問から切り込んでゆく。
第一章 日本史を疑ってみよう
第二章 古代 第三章 平安時代 第四章 鎌倉時代
第五章 室町時代第六章 戦国時代 第七章 江戸時代
教科書での日本史は定説化した基本のようなものだから、
内容を暗記主体で学んできたような感じだった。
でも、様々な観点から日本史に興味を持ってみれば、
様々な疑問が湧いてくる。それが知りたくなって、
多くの研究書を読むと、多くの知識を豊富に得られ、
取捨選択しつつ、思考が磨かれる。
“疑う”は強い語句だけど“疑問”と捉えれば解る。
律令体制のその後は?
遣唐使はなぜ廃止されたか?
御成敗式目が制定された訳は?
南北朝は何なぜ五十年以上続いたのか?
守護大名と戦国大名の違いと存続は?
なぜ江戸幕府は滅びたのか?
地理、対外、国内の「面」と「線」での支配の違い、東と西、
法律や税の問題、家族制度の変化、そして人の、時代の変化等を
鑑みてみれば、歴史用語から更に理解が深まってくる。
そんな感じで読み、改めて日本史って面白いなぁと思いました。
定説だって隙があるし、新説が将来に定説になるかもしれない。
実際、鎌倉幕府の成立は新史料により、1192年から1185年に
なっていますし、更に変わる可能性もありそう・・・とか?
それに最近、不思議な形の銅鐸や剣が発見されたりして、
まだまだ疑えることが出てきそうな感じがしました。
Posted by ブクログ
「一次史料である古文書や古記録などをもとに編集された歴史書などは、二次史料となります。一次史料に比べると、二次史料は信頼性がやや落ちます」(第一章 日本史を疑ってみよう p.26より)。なるほど。
Posted by ブクログ
中学・高校の歴史の授業が、こんな内容だったら、めちゃくちゃ面白いだろうなあ。鎌倉幕府の1192年も、徳川幕府の1603年も、もはや意味のない数字だったことを知るにつれ、ホント、日本の知識詰め込み教育って、アホ量産システムだなと痛感させられる。
Posted by ブクログ
放送大学のテレビ講義が面白かったので、本屋で偶然見つけて購入。年号を覚えるのでない歴史の面白さが伝わってきた。年号と言えば、幕府ができたとは何をもってそう言うのか。権力の確立がその定義となる。こんな風に学んだら日本史も楽しかったかな。でも、ある程度知識がついた今だから楽しいと思えるのだろう。
Posted by ブクログ
<目次>
第1章 日本史を疑ってみよう
第2章 古代
第3章 平安時代
第4章 鎌倉時代
第5章 室町時代
第6章 戦国時代
第7章 江戸時代
<内容>
われわれが至極当たり前と思っている日本史の常識を、単純な疑問から解き明かしていく。「変だな?」「不思議だな?」の感覚は大事である。それを大人はスルーしていることが多い。授業の後の「振り返りシート」でも、予想外の質問がくることが多く、「確かにな」とつぶやきながら、調べて返答することが多い。それの根幹の部分を論じている本だと思う。本郷氏はやや粗製乱造の感もあるが、この視点は大事だろう・
Posted by ブクログ
歴史とは誰の物語か。教科書に載る日本史は勝者が紡いだ物語にすぎない。権威におごることなく別の視点、広い視野、深い読み解きから本当のところを絞り出す。英雄と称えられた者は策士にもなりうるし、悪人とされた者も時代の犠牲者かもしれない。史実は一つでも解釈は無限であり過去を疑うことは今を問い直す契機となる。疑いは懐疑でもなく好奇心の行動である。
Posted by ブクログ
オーディブルにて。著者の語り口がわかりやすくて好き。今回は「疑え」がテーマゆえに、これまで教科書で常識とされてきたことを一度疑ってみるという視点が楽しみ。
疑うと言っても、批評家のように全てを否定するわけではなく、なぜそうなったのかという背景を考えてみた結果、やはり同じ結論になることもある。面白い教授の講義を受けているように楽しく読める1冊。
Posted by ブクログ
東大の本郷先生の本。
WEB掲載等の他の記事と同様の語り掛けるような文体で書かれている。
各時代の事例をあげながら、定説を疑う「考え方」について説く。
Posted by ブクログ
どれだけ表面を取り繕っても、実際に歴史を作るのは人間と考えれば、そこには綺麗事ではない損得勘定がある。その視点を持つと、定説と言われるものがひっくり返る可能性があるのがおもしろい。特に、他の著作でも語られる、律令国家は機能していなかったという説は面白い。
一方で、いま現在ロシアや中国でおこっていることを考えると、一人の独裁者のパラノイア的な暴走によってと歴史は作られるとも思ってしまう。そうなると資料をもとにした歴史学者の研究手法では真実に迫れなくなり、本書でもタブーといわれる「歴史上の人物の頭の中を想像する」ことが必要になってしまう。いまの時代を将来の研究所がどう評価するのか、楽しみでもある。