【感想・ネタバレ】森をひらいてのレビュー

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Posted by ブクログ

女であること
少女であること
女性であること
無垢と成熟を併せ持つそれを官能と呼べばいいのか美と呼べばいいのか

蝶のように軽やかにそれは羽ばたきながら
重く青々と茂るそれは森

何かの対象として見られることを拒み
価値と品定めをされることを嫌悪する

それらを自らの手で掲げることはできないのか
れらを自らの存在だけで証明することはできないのか

誰かの 何かの対象とならないままに

道具でもなく 商品でもなく

人として そこにあることが どうして許されないのだろう

その怒りを湛えた湖は
もうずっと前から 最初から 息づいていたのだろう

少女が少女と手を取る意味
男性がいながら不在の意味

それらが意味することは きっとその抗いだったのだ

官能と欲望 迷宮と美貌の奥深くを分け入るように
嗚呼、それは、積み上げてきた言葉の頂に聳えた 森だったのだ

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2022年06月27日

Posted by ブクログ

久々に文学を味わった気分。

臨時校舎──少女たちは戦火を逃れるため、疎開のようなかたちでそこに集められている。生活に不自由はないが、外の世界からは隔絶され、恋人とも会えない。
「あなたたちは幸せで、恵まれているのだと、まずは自覚してください。」
「この状況下にもかかわらず、静かな安全地帯で、何不自由なく学びに打ち込むことができるなんて、通常なら考えられないことです。」
やがて、生徒たちのあいだに「森をひらく」という遊びが流行り始める。むせ返るような、青々とした森。文字通りの森。自分だけの空間に、彼女たちは思い思いの森をひらく。森は大人たちには認識できない。

現実の私たちは、戦禍に見舞われてはいない。でも、国家や会社、学校や大小のグループといった、制度や支配の中を生きている。私たちは安全や安心の代償として、みずからの自由を差し出す。不自由を呪いながらも、そこそこに快適な日常を維持するために、支配に甘んじて日々を送っている。
支配といっても、自由がないわけではない。デスクトップを飾る推しの写真。仕事帰りの電車でプレイするスマホゲーム。週末限定のネイル。学校を出てから短くするスカート。ままならない現実の中で、そこだけは自由に遊ぶことのできる庭。それを作者は物理的な森として描いている。

ネット上のレビューを読んでいて、「結婚(マリアージュ)が何なのかわからない」という意見を多く見た。でもこれは文学なので、自由に想像すればいいと思う。たとえば上に書いた推しの壁紙のデスクトップだったら、偶然それを見た同僚に「じつは私も好きなんです。今度一緒にライブ行きませんか?」と誘われたりとか。これはひとつの結婚と言っていいのではないだろうか。

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2023年06月16日

Posted by ブクログ

外界の戦争から隔絶され臨時校舎で時を過ごす美しい少女たち
少女たちの間で流行する「森を作る」遊び

官能的で幻想的な少女たちの世界
私たちは蝶のように舞い戦うの

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2022年11月09日

Posted by ブクログ

自分の好みにピタっときたおはなしでした!

森の解釈が自分の中で読み進めるごとに揺れていったのですが、揺の怒りが表面化したシーンで、自分の中でストンと落ちました。自分は怒っていいのだろうかっていう気持ちはすごく共感したし、怒りだけじゃなく感情ってすぐには身体に馴染まないというか、一種の防衛で自分を入れ物にして自分を眺めてるかんじ。でも自分の気持ちは自分で決めていいんだよね。わたしを私の中に落とし込んで、感情ジェットコースターになったりしつつ、森をつくりながら私は私の中にいたのね、って気づく。読みながらきっと私が森をつくるとしたら、ごちゃごちゃしてるだろうなあと思いました。ハウルの部屋みたいなかんじになりそう…

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2022年07月25日

Posted by ブクログ

戦争から隔離された学園で寮生活を送る少女たちは「森を作る」遊びに没頭する。
少女たちのキラキラした生命力と、森が広がっていく様子の描写がとにかく幻想的で美しくてすごかった…
装丁もすごくいい。

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2023年02月28日

Posted by ブクログ

戦争のため疎開させられている少女たち.彼女たちは条件を叶えると自分だけの森を作ることができるという.これは妄想か逃避か超能力的なファンタジーか.そして,男たちによって計画されたトロフィーワイフのような未来への諦めと抵抗.
また物語が日記との二重構造になっていて,はじめ気付かずに読んでいて混乱させられた.が手法としては面白く,ディストピア的な未来に抗う少女たちの密かな戦いがユニークだ.

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2022年09月02日

Posted by ブクログ

面白いわけじゃないのになんとなく読んでしまい、残る。そう、すごく残るの。センスがいいんだろうなとデビュー作からなんとなく読み続けてる作家さん。
今回もすごく残る作品だった。余韻も。

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2022年06月06日

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