「ブス」と言われ、学生時代にいじめられていた山井 知子(やまい ともこ)。
大人になった彼女は、自分をいじめていた“美人”の同級生・白根 梨花(しらね りか)が美容家として成功し「反ルッキズム」の活動をしていることを知り、怒りに震えます。
納得がいかない知子は、梨花への復讐を決意しますが…。
「ルッキズム」という言葉をご存知でしょうか。
容姿の美醜によって人物の価値をはかるような外見至上主義を表す言葉です。
近年、ルッキズム的な発言や価値観が問題視されるケースが多くなりました。
この物語の主人公・知子はそんなルッキズムにがんじがらめに縛られて身動きが取れなくなっているように感じられます。
作中、知子が梨花に対して言った
「どうしてブスが…差別されている側の人間が変わらなくちゃいけないんだよ!」
という叫びは、ルッキズムだけでなく、ありとあらゆる差別について言えることではないでしょうか。
しかし、知子の主張はそれだけでは留まりません。
「美人にルッキズムのなにがわかるっていうんだよ」
ルッキズムを否定したい知子ですが、そんな彼女もまた美人に対してルッキズム思考がはたらいていたのです。
学生時代の梨花はその美しさ故に男子から言い寄られ、男子をとりまく女子からは反感を買うことが多々ありました。
美人というだけで中身は関係なく判断されることに嫌気がさし、高3で自分を変化させた彼女でしたが、知子と出会ったのはそんな時でした。
見た目で判断されることの辛さを知っている梨花だからこそ、周りから何と言われようが堂々としている知子の強さに憧れていたのですが、知子は梨花のことをいじめの首謀者と敵視していたのです。
それは美人である梨花への偏見から生じる思い違いでした…。
知子からすれば容姿に恵まれ人生イージーモードのように思える美人の梨花もまた、ルッキズムの地獄を味わっていたのです。
ルッキズムによって傷つけられたハズの知子がルッキズムによって梨花を傷つけるという、なんとも皮肉な構造になっています。
描くのは『わたしはあの子と絶対ちがうの』のとあるアラ子先生。
『わたしはあの子と絶対ちがうの』ではアイデンティティについてリアルに描かれていました。
とあるアラ子先生はとても身近な、誰しもがモヤっと思ったことがあることをそのまま描かれるのですが、多角的な視点で描いているところが凄い!
今作もルッキズムというテーマですが説教臭さはなく、こっちから見ればこうだけど反対側から見ると違う…ということに気付かせてくれます。
梨花と知子がお互いにどう変化していくのかも気になりますが、彼女達をとりまくキャラクター達にも注目です!
身長が低いことに悩む小坂や元女芸人の山本、プラスサイズモデルの奈緒美など、様々な悩みを抱えた人物が登場します。
どのキャラクターも「その気持ちわかる!!」と感じられる部分があるのではないでしょうか。
ルッキズムとはなにか?ということや、そこに根深くある問題、悩む人たちが悩まずにすむにはどうしたら良いのかを鋭く描いた本作。
この作品を読んで「ルッキズム」について考えるキッカケにしてはいかがでしょうか。
感情タグBEST3
知子の恋愛
毎回表紙が楽しみです。2巻も表紙で知子がおしゃれしてキメてて大好き。
今回はこじらせた知子が仲を深めていい人が出来そうな展開にドキドキしました。
Posted by ブクログ
「ブス」として苦るしめられてきたからこそ、ミスコンで内面をも評価に加えようとする「多様性」に反発します。
「絵が上手い」「スピーチが上手い」などの個性を評価する、と言ったところで、結局は一定以上の容姿をもつ人たちの競争であること、「美しさ」の土俵の上に上がらなければ実力の勝負すらできないという、実際の社会の縮図そのものではないかという主人公の主張は説得力があります。
むしろ「ミスコン」こそ、純粋に用紙の美しさだけで評価して欲しい、という彼女の主張の方が、もう一人の主人公・梨花が導いた答えよりもしっくりきます。
Posted by ブクログ
タイトルは発行に当たって議論があった上で敢えて使っているとのことなので、感想としても敢えてこれらの言葉を使うようにしています。
ブス、美人は性格が悪い、ストーキング、デブ、拒食症、女芸人、チビなどルッキズムに対して、非常に広範に分かりやすく伝えてくれるマンガです。
多様性を受容する社会に変革する現代において、「あなたはそのままでいい」「自分に自信を持って」というスローガンを良く見聞きしますが、主人公の「どうして差別された側が変わらなくちゃいけない?!社会のほうを変えろよ!それは差別への加担だ!」というセリフにハッとさせられてしまいました。
ストーリーはコメディタッチで進むので、あまり重たい気分にならずに読み進められる構成なのもGoodです。