あらすじ
高校を休学した17歳のぼくは、ひと夏を過ごすために海沿いの〈Rの家〉を訪れる。そこは、祖母と両親が田舎暮らしをするために建築されたものの、結局誰も住むことのなかった建物。だがそこにはほぼ全裸の若い女性、そして酒の匂いを漂わせた男性が――。いとこと伯父、そしてぼく。三人で奇妙な同居生活を始めたぼくは、徐々に母の自殺の真相へと近付いて行く……。打海文三が描く、センチメンタルミステリ。
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Posted by ブクログ
胸に残る切なさが染み渡って薄まらない。
そんな物語だった。
印象深いシーンを付箋で留めながら読んでいたのだけど、序盤でリョウと李華が口喧嘩をしつつも次第に仲良くなっていったことを言及しているところを留めていた。そんなふうになんでも言い合える関係を築いたことがない自分にはとても眩しくみえた。
2人で東北へ出かけていた時間は端的に書かれていたけど、2人にはきっと忘れられない時間でその思い出を抱えて生きていくんだと思っていたけど、こんな寂しい結末だとは。
母の喪失からRの家を訪ねたが、母が生きておりもうすぐ会えるという真相と、Rの家で親しくなり、お互いを思い合っていた李花が亡くなったという事実。
ラストシーンの客室乗務員から差し出されたオレンジジュースに、私は初めて小説で涙が出た。
他にも会話の途中で挟まれる情景描写がすごくて、会話から一気に物語の世界に飛ばされる感覚があり、どんどんのめり込んでいった物語だった。
この本をおすすめしてくれた顔も名前もしらない誰かと、この本について語る機会があればと思う。