【感想・ネタバレ】香君 上 西から来た少女のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

遥か昔、神郷からもたらされたオアレ稲。
どんな地にも育ち、ほかの穀物の何倍も豊かな実りをもたらし、ウマール帝国の礎になった。
しかし、オアレ稲は土壌を変えてしまいほかの穀物が育たなくなり、種籾が取れず村々は帝国から下げ渡される種子を使うしかなく、帝国が用意する肥料で育てないと毒を持つようになる、という特徴がある。
大変な収量が見込めるため、ほぼ全ての版図でオアレ稲を受け入れたが、これは帝国による支配だと、導入しない藩国が1つだけあった。

題名の香君とは、神話時代にこの稲をもたらし、香りで森羅万象を知るという活神。
香君への信仰もまた、帝国を支えてきた。

だが、オアレ稲を唯一食害する虫が発生し、ひと地域で済んでいた被害は瞬く間に広がろうとする。
この虫は大変繁殖力があり、卵を見つけるなり近隣の稲もまとめて焼却処分するしか駆除する方法がない。
オアレ稲に依存した農民がオアレ稲を焼くということは、餓死することとほとんど同義だ。

そのようなころに現れたのが、人並外れた嗅覚を持つアイシャ。
その嗅覚で政敵に殺される危機を回避して、官僚である香使になる。
そしてオアレ稲の食害により、危機に立たされる領民を救おうと奮闘する。

このオアレ稲の設定が、完全に現代のF1種子である。
「どんな雑草も枯らす農薬」を売り付け、「その農薬に耐性をつけた種子」を売り付ける。
種子から種籾を取っても、性質が変わってしまうため、二代目は商品にならない。したがって、農家は毎年同じ種子を購入しなければならない。
こうして一企業が種子を独占し、地域で小規模に栽培されていた穀物を駆逐してしまう。
同じ種子が国中に溢れ多様性は失われる。
農家は一企業に依存し、抵抗できなくなる。(種子や農薬を売ってもらえないと育てられなくなる)
そして、その一種類の作物がかかる病気や害虫が発生した場合…全てがダメになってしまう。

ウマール帝国で起こることは現代の農業に牙を向く危機と同じじゃないのか?そうであれば、ウマール帝国は、アイシャは、どう危機を回避するのか。
上巻では、アイシャは帝国の見張りの目の届かないやり方で、ゲリラ的に、オアレ稲以外の作物を植える村を見つけ、その育て方を伝えた。
その村でもオアレ稲は食害されたが、一人も餓死者を出さずに済んだ。
こうして、大きな権力が作り上げた支配体制から人を救うためには、ゲリラ的になるしかないのだろうか。
どうなるか、下巻も気になる。

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2024年02月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

過酷な環境でもよく育ち、味もおいしい奇跡の食糧、オアレ稲。
ただし、この稲の近くではほかの植物が育たず、しかも収穫した籾からは芽が出ないため、毎年苗の支給を待つしかない。
ウマール帝国はこの稲の種籾を管理する事で戦をすることなく属国を増やし、大きくなってきた。
しかし、オアレ稲のみに依存する帝国の在り方に危機感を抱いた人々が秘密裏にオアレ稲を調べ、対策を講じようとするがその矢先、大規模な虫害が発生し大飢饉が迫る・・・というのが上巻のあらすじ。

帝国と藩国、隣国の思惑や駆け引きと絡めて物語は重層的に展開し、更にオアレ稲の謎も気になり、途中でめくる頁の手を止められない面白さ。
植物、というか現代の自然と人間との関係性についても考えさせられる物語です。さすが上橋さん!
下巻も楽しみ。

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2023年11月22日

ネタバレ 購入済み

現代の農業に警鐘を鳴らす物語。

香りで世界を変えるーー面白いところから物語が始まったな、と思いました。
読み進めていくうちに、現代の世界的な農業の問題であるF1種のことを言っていることに気付き、これをファンタジーで語るのか、と驚きました。まだ前編ですが、後編どうなるのかが楽しみです。
惜しいと思うのは、物語の緻密さからも、テーマの重さからも、上下2巻では少し重たいのでは、と思うことで、守り人シリーズなどと比べると設定を追うのがかなり忙しくなり、説明も多いです。5巻くらいの広大な物語の方が読みやすかった気がします。

#深い

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2022年09月28日

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