あらすじ
「早月葬儀社で、フューネラルデザイナーとして働いてみないか? ご遺族の感情と、故人様の人生を思いやり、人生の最期に身に着ける衣装をご用意する、責任ある仕事だ」年上の恋人に裏切られたショックから仕事をやめ、逃げるように東北へと向かったファッションデザイナーの朝川糸花。弔井町の崖から身を投げようとした彼女を救ったのは、葬儀社の若き社長・早月霜だった。糸花の作ったドレスに目をとめた霜は、故人が葬儀で身に着ける衣装を用意する“フューネラルデザイナー”として、葬儀社で働かないかと持ちかける。霜の強引さに戸惑いながらも、糸花は早月葬儀社の一員として働くことになり……。思い出のワンピース、着ることができなかったウエディングドレス――大切な人の旅立ちのために、特別な一着を作る葬儀社を描いた感動作!
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Posted by ブクログ
初読み作家の来栖千依さん
葬儀屋さんを舞台にした作品は、他にもあるんだけど
「故人が人生最後に着る衣装」というテーマでのお話は
無かったので新鮮でした
自分だったら、最後に何を着たいだろうと思いながら
読みました!
Posted by ブクログ
──ここは、天国に一番近い町、弔井町──
・エンバーミング処置は、ご遺体の保全を目的にした準医療行為であって、損壊するのが目的ではありませんから。日本の法律では、亡くなってから二十四時間以降でなければ、埋葬も火葬も認められていませんが、荼毘に付すまでの期日はないのです。エンバーミング処置の基準を設けている日本の団体は、亡くなってから五十日以内の火葬を規定しています。逆に言えば、処置をして適切に管理していけば、五十日は安全が保たれるということです。
・「俺は、すでに壊れている」
・人は己の絶命こそが死の本質だと捉えがちですが、それは誤りです。人が実感する死とは、家族や恋人や親しい人の死なのです。大切な人を失って初めて、人は本当の悲しみを知ります。心を引き裂かれるような悲痛に直面したとき、それを意地で止めてはなりません。喪主や遺族としての責任が負えないようであれば、葬儀社に丸投げしたっていい。どんな場合でも、我々は心を込めてお見送りします。
・「死別のストレスで、人は壊れてしまうんですね」
・絶望している人間に、特効薬はない。
・死はいつだって生者につきまとい、ときとして残酷に襲い来るものなのに。 だから、自ら死んだりしてはいけないのだ。 寂しくても、辛くても、絶対に。
・─誰かがやらないと、人は悲しみに囚われ続けてしまう。
エンバーミング処置は初めて知った。自分のことを壊れていると言っていた霜は糸花と出会ったことで人間としての暖かい心を取り戻した気がする。今後のふたりが気になるような作品だった。
Posted by ブクログ
おもしろかった。最初は糸花の雰囲気にちょっと置いていかれ気味だったけど。葬儀への思いというか、大切さがとてもすんなり納得できた。想の周りで支え続けた人たちがとても明るくてあたたかい。
文庫にあとがきも作者紹介もなくて、この作者さんかが他に何か書いてるのかどうかもわからなかったのが残念。
Posted by ブクログ
葬式の際に死者に着せる服をデザインする仕事に生きがいを見つける、明るい調子の物語。葬式にまつわる珍しい設定のお話で、ストーリー自体は読みやすいものばかり、ジーンとくるシーンもあって楽しめた。
Posted by ブクログ
お葬式には何度も出席したことあるけど、故人が何を着ているかまでは気にしたことなかったな...
「最期の晩餐に何を食べたいか」は割とよく考えるのに、「最期に何に身を包みたいか」はなんで考えたことなかったんだろう...?