あらすじ
資本主義と社会主義に世界を二分し,国家や人々の生活を激しく揺さぶった冷戦.その起源から終焉までの一〇〇年を,冷戦史研究の第一人者が描き切る.米ソや欧州のみならず,アジア,アフリカ,ラテンアメリカなど全世界を包含した稀有の歴史叙述.上巻は一九世紀末からキューバ危機まで.下巻はヴェトナム戦争からソ連解体まで.
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Posted by ブクログ
この本を読んでいて驚いたのは冷戦が本格的に始まる第二次世界大戦後からソ連の崩壊に至るまで、それこそ世界のどこかで絶え間なく争いが起きているということでした。しかもその争いというのもいつ全面戦争になってもおかしくないほど危険なものだったということです。
第二次世界大戦の後は戦争が終わり、世界は平和だったと日本では考えがちですがまったくそんなことはなく、たまたま日本が戦場になっていないというだけの話で、世界中危険な空気があったということを思い知らされました。
Posted by ブクログ
通史本。ナチの台頭に対抗して自由主義国と共産主義国が手を組み、WW2後の東欧問題における互いの意図を読み違えて対立した欧米vsソ連の軸と、荒廃した欧州の支配下にあったアジア・アフリカが反植民地主義(民族主義)から米国とソ連の間を彷徨い、米国・ソ連が対応に苦慮するアジア・アフリカ独立の軸が重なり合って複雑な国際秩序が形成されたことを示す。その中で米国は圧倒的経済力から超大国となり英仏ら旧帝国を従える。そういう意味で東側の中ソ分裂が分岐点になったのかも。
後編。米ソのイデオロギー対立が他世界(南米・東南アジア・中東・アフリカ・印)にも持ち込まれていたことを示す。右派国粋主義軍部による開発独裁と社会主義に親和性があったこと、資本主義と経済発展が同義ではなかったことは印象的だった。ナショナリズムが冷戦システムに組み込まれていく様子は一国の無力さを感じさせられる。1975頃のデタントが、米国民の自国没落への恐れから破れてレーガン登場につながるのは皮肉。ゴルバチョフの政策は時勢を踏まえれば悪くないものだったが、勝負どころの機敏さが欠けていたのが悪かったように見えた。結局人民の意志が反映されていない国は不安定にならざるを得ず、格差や独裁の放置は根本的な危機を招くという歴史の教訓はよくわかった。
副題の通り、米ソの観点以外からの冷戦史が叙述されていて、地球規模で資本主義と共産主義の理念弁証法的対立が世界を覆っていた20世紀の空気を垣間見ることができた。