【感想・ネタバレ】日輪の遺産のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

終戦時の他者、そして国を想う軍人と少女たちの話。
現代と交互に物語が展開していく。そこでよくありがちなのが、頭が混乱してついて行けなくなること。しかし本書は交互だからこそ理解が深まるように丁寧に書かれている。
もっとも印象的だったのは、登場人物の苦悩が自分の感覚のように伝わってきたこと。戦争を知らないのに身につまされた。
特に衝撃を受けたのはマッカーサーの驚愕とその後の行動。でも結果的にそれで良かったと思う。
また、最後まで引っかかっていた少女たちの自害の理由は、エンディングに一人の少女のセリフによって明かされる。悲しい。でも分かる気がする。そしてこの構成は上手い。
戦中戦後の日本人は、正解か否かは別として「自分でも日本の役に立てる・立ちたい」と本気で信じて行動していた。美しい。平和ボケの我が身が恥ずかしくなったと同時に背筋が伸びた。
作者は、あとがきで「4年後に読むと曖昧で稚拙な部分もある」と書いている。確かに金原が前半、真柴老人を馬鹿にしていたのに、最後に「尊敬していた」とシリアスな場面で口にした部分などは若干違和感を抱いた。
でも、テーマ、構成、文章力、どれも一級品。
やはり『永遠の0』同様、実力ある作家が体験者をじっくり取材した戦争小説の価値は高い。
※『永遠の0』はゼロ戦パイロットに会わずに書いたらしいけど……。

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2021年03月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2016年、20冊目です。

浅田次郎の初期の長編小説です。
秀逸な作品だと思います。
太平洋戦争末期のポツダム宣言受諾の時期から始まる物語が、長い歳を経て、戦争経験の無い世代の人間と接点を持ちます。2つの時間軸で物語が展開していきます。

日本を再興させるための軍の財産を山の中に隠すために動員された女子学生たちの姿と彼女らとその後の日本の両方を憂う人間たちの苦悩が描かれています。
彼らの残したものを知ることになった2人の戦後生まれの男たちは、それぞれが抱える問題の中でやはり苦悩しています。2人自身の再興のとも交わりながら物語は進んでいきます。少し長い小説でしたが、ストーリーにも興味を失わず読み切ることができました。

追記
私は観たことはありませんが、この作品は、映画になっているようです。基本、小説の映像化されたものは見ません。作家の意図とは違う、映像製作者の意図がそこに加わってくるので、自分で原作を読んで、感じることでいいと考えています。

おわり

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2016年04月17日

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時価200兆円のマッカーサー親子が残した財宝を巡る戦後~現在までの長編小説。

単純に財宝を巡るトレジャーハンティングでない所が良い。
後味の悪い結末が待つが、お金ではなく人から人へ繋がれる強い日本人としての意思。

東京西部に住む人(稲城市周辺)ならさらに楽しむことができる。

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2015年11月25日

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ポツダム宣言受諾を決めた大戦末期の日本。
敗戦後、いずれこの国が再び独立国家として立ちあがるための資産を極秘に隠匿する密命を与えられた若き近衛師団少佐と大蔵官僚、その任務を遂行する人員として選ばれた負傷兵と若き少女たちの物語『日輪の遺産』を読みました。

らじは浅田次郎さんが好きだからけっこういろいろと読んでいるんだけど、この本は内容は違うけれど『地下鉄に乗って』みたいな文体と雰囲気だったよ。

つまり、浅田さんの小説はベタで直球なところと本当に悪い人がいないところが好きなんだけど、まだちょっと思いっきりベタな内容を究極のベタにまでは描けずにいて、余韻が少し薄い感じ。
やっぱり初期の作品なんだね(笑)

日本が復興するためにマッカーサーから奪った財宝を陸軍多摩火工廠に隠すんだけど、やっぱり主軸は人の心なわけ。
この国の未来を信じて亡くなっていったたくさんの人たちのことを思うと、日本カピとしてらじもだらしない生活をしていてはいけないな…って思いました。

映画化もされているけど、映画とはちょっと違うお話でした。
確かにスーちゃん役は、原作でも土屋太凰ちゃんっぽかったけどね…。
※ただし『まれ』以前。

でも、浅田作品としては物足りなかったなぁ!
らじのお散歩コースにある場所(例:少女たちが働く三鷹の横河電機工場)がちょこちょこ出てきたのは嬉しかったけどね…。

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2016年05月31日

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1993年8月発行 数えきれぬ人間が、自分の命に勝手な理由をつけられて死んでいった 心をくくっていた不条理の網のすきまから、道義という言葉が頭をもたげた 

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2012年03月10日

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敗色濃厚な終戦直前、帝国陸軍がフィリピンから奪い取ったマッカーサーの財宝を秘匿する密命を受けた3人の軍人。
時価200億円と思われるその秘宝は戦後の日本復興の切り札となるはずだった。
密命を帯びた軍人、その秘宝を秘匿する作業を行った勤労動員された女学生を中心とした終戦前後と
その秘密を記した手帳を入手した様々な問題を抱えた現代の2人の男
を交互に話は進んでいきます。

感想としては、まずまず面白かったです。

しかし、お話としては盛り上がりに欠けました。
浅田次郎の得意技、泣かせる構成は健在でしたが、その部分も力強さに欠けた感あり。

「壬生義士伝」「輪違屋糸里」の様な史実の上に載っけた一大エンターテイメントと言う感じではなかったな。

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2012年01月22日

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【日輪の遺産】 浅田次郎さん

不動産屋の丹羽明人は競馬場で知り合った老人・真柴
から一冊の手帳を託された。

その手帳には終戦後に日本が立ち直るための復興財源
として帝国陸軍が隠した財宝のありかと、その財宝の
隠匿作業に従事させられた女子中学生たちとの記録が
書かれていた。

ボランティア活動家の海老沢も丹羽と同じ手帳を真柴
老人から託されていた。

彼らは各々、独自で手帳の真相を調べ終戦直前に
多摩川・火工廠の裏山で何がなされ、どういう惨劇で
幕を閉じたかという事実を探る。



「七生報國」と書かれた鉢巻を締め、鬼となってま
でも宝を守ろうとした女子中学生たち。

軍の命令に逆らってまで彼女たちを助けようとして
少佐。

戦後、国民を飢餓から救うために財宝の隠し場所を盾に
命をかけてマッカーサーと取引をしようとした中尉。

すべては国のため、国民のため。良心と使命感にあふれ、
私欲無く行動を起こす人たちの物語はとても私の好みの
物語です。(^^)/

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2012年09月19日

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