あらすじ
「トキさん」は1906年、十勝の入植者の子どもとして生まれ、口減らしのため、生後すぐにアイヌの家族へ養女として引き取られた。和人として生まれたが、アイヌの娘として育った彼女が、大切に覚えてきたアイヌの言葉、暮らし。明治末から大正・昭和の戦前戦後を、鋭い感覚と強い自立心でアイヌの人々と共に生き抜いてきた女性の人生を描く優れた聞き書き。
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Posted by ブクログ
入植者の子供として生まれ、生後すぐにアイヌの養母に引き取られた女性の口述筆記。
本文中からアイヌの文化・神・自然の中で暮らした力強さを感じる。
まさに『アイヌの世界に生きる』女性の物語だった。
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トキさん、明治39(1906)年生まれ、十勝に入植した開拓農家の子どもであったが、生後1年たらずでアイヌの養子になり、アイヌの娘として育った。そんなトキさんが70歳近くになって、「かつて暮しの中で使われていたアイヌ語を文字に残すことによって、養母も自分も新たに生き返らせたいと願った」ことから、当時北海道で働いていた著者茅辺かのうは、アイヌ語の口述筆記を引き受けることになった。
アイヌ語の説明に入る前に、トキさんは自分の生い立ちを詳しく心を込めて語った。「生い立ちの話をぜひ聞いてもらいたい。そうすればアイヌ語の記録を思い立った自分の気持ちがわかると思うし、わかった上でアイヌ語の説明も聞いてほしい」からと。
北海道の厳しい自然、アイヌへの差別がかなり厳しかった時代を生き抜いてきたトキさんの人生にジーンとしてしまったし、人間と生活を知らなかったならば言葉は理解できないという当たり前のことが当たり前でないところから、無理解や偏見が生まれると言うトキさんの言葉には納得させられた。
著者がトキさんからアイヌ語の筆録をしたのは20日間ほどのことだったようだが、
とても温かで濃密なな交流だったことが、本書全体から窺われてくる。