【感想・ネタバレ】親鸞と道元(新潮新書)のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

平岡聡(1960年~)氏は、佛教大学文学部卒、同大学大学院文学研究科博士課程満期退学、博士(文学)、京都文教大学学長を経て、京都文教大学教授。
本書は、書名の通り、浄土真宗宗祖の親鸞と曹洞宗宗祖の道元を比較しつつ論じたものである。
日本の仏教には、平安時代に誕生した天台宗と真言宗に加え、鎌倉時代に起源を持つ、浄土系の浄土宗、浄土真宗、時宗、禅系の臨済宗、曹洞宗、黄檗宗、そして日蓮宗と、多彩な宗派があるが、その中でも寺院数が多いのは、浄土真宗の約2万2千と曹洞宗の1万5千で、群を抜いている。また、それぞれの宗祖である親鸞と道元には、明治以降の著名な文化人が評価した(親鸞は倉田百三、吉川英治、亀井勝一郎、三木清など/道元は和辻哲郎、田辺元など)という共通した特徴があり、それらも手伝って、両宗祖は鎌倉仏教の祖師の中でも特に人気があるという。
一方で、一般に(私も含め)、「親鸞仏教は他力、道元仏教は自力」と思われていることをはじめ、数々の対照的な点があり、本書では、それらを以下のような章立てで比較しつつ、最終的に、仏教としての共通点を探っていく。
序章:生涯と思想 第1章:機と法 第2章:出家と在家 第3章:師匠と弟子 第4章:救いと悟り 第5章:特殊と普遍 第6章:改読と転釈 終章:自力と他力~宗教の本質を問う
私は、仏教に対して特別の知識や関心があるわけではないものの、この二人については知っておきたいと思い、しばらく前に、梅原猛の『親鸞の告白』、栗田勇の『道元の読み方』等を読んだが、正直なところ消化不良に終わっており、今般書店で、二人を比較しつつ論じた本書を目にして購入した。
通読してみて、やはり「教え」について書かれた部分(第4章など)は難しく感じられたものの、二人を比べることで、双方の思想が浮き彫りになり、これまでよりは理解が進んだように思う。
本書から、親鸞仏教と道元仏教のエッセンスを引用するなら、以下のようなものである。
「大乗仏教は万人の成仏を認める平等思想に立つ。では、この成仏をいかに実現するか。親鸞は絶対他力の立場から、阿弥陀仏にたいする信を強調し、その信も自力で獲得するのではなく、「如来より賜りたる信心」に成仏の根拠をみいだした。一方、道元は「衆生は本来、仏なり」から出発し、衆生は本来、仏であるからこそ無我に立脚して修行(只管打座)しなければならず、その修行を継続(行持)するところに真理の現成(成仏)をみた。つまり、親鸞仏教が「他力を基盤にした他力」なら、道元仏教は「他力を基盤にした自力」だ。道元仏教には修行の継続という点で「自力的要素」はたしかに存在するが、その場合の自力も「吾我の自力」ではなく「無我の自力」(それはもはや「自力」とは呼ばないのかもしれないが)ということになる。だから親鸞と道元の仏教を、従来のように「他力vs自力」と紋切型で特徴づけるのは、厳密には正しくない。」
鎌倉仏教の中で双璧の人気を誇る祖師、親鸞と道元を比較しつつ、仏教の本質を探った良書といえる。
(2022年3月了)

0
2022年03月03日

Posted by ブクログ

家が曹洞宗なので、開祖道元のことを知りたくて読みました。はなしが横道それますが、読後永平寺にも行ってみたくなりました。

0
2023年10月26日

「ノンフィクション」ランキング