あらすじ
対人関係には、おのずと暗黙のルールが成立し、それを無視する者には制裁が加えられる。異動してきたばかりの厚生課で勝手な振舞いを繰り返す井野係長の場合は……?(「黙契」)迷いこんだ空地から何気なく眺めたアパートで、OLが殺されていた! 動機に潜む複雑な心理劇とは?(「影の方位」)社会の病理をえぐりだし、人生を凝縮した、傑作推理小説!
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Posted by ブクログ
行きずりのホテルで出会った女性と意気投合し、来週も会いましょうという約束をして別れた。次の週に約束の場所に行くも、1時間経っても女性は現れず、手元には女性が忘れていったフィルムが1本残っていた。その後女性が殺されたことを知り…。
森村誠一の、おそらく大半は初期の短編を集めた短編集。子供2人を戦争でなくしたおばあさんの話なんかは、昭和30年代くらいの話ではないかと思われる。
森村誠一の真骨頂である、細かい残存証拠という話ではなく、もっと荒い証拠の話だったり、犯人を追い詰めるという話ではなかったりと、ショートショートレベルで短くともオチは多様で、『世にも奇妙な物語』のようなものでも採用されそうな話が多い。
1990年代以降の小説では、「読者がわからないから」と削られてしまったような語彙がそこそこ含まれているあたりも、読みやすくて印象が良い。
難を言うなら、小道具が写真のフィルムだったりして古さは否めないのだが、それは若い人は調べて読んでみて欲しい。詩を小道具にする話も良い。
短編集というと、次の話を読むときに前作が引っかかって頭に入ってこないことがあるけれども、本作は結末のキレの良さと、冒頭の引きつけ方も良いので、前作に引っ張られることも少ない。
短編ミステリの教科書になりうる良い作品集だった。