【感想・ネタバレ】生命を守るしくみ オートファジー 老化、寿命、病気を左右する精巧なメカニズムのレビュー

あらすじ

2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典氏と共にオートファジーの研究に携わり、この分野の第1人者としてさらにオートファジーの役割やさまざまな病気や老化などとの関連を解明し続けている著者が、この細胞の驚きのメカニズムを詳しく解説します。
私たちの体の中では、タンパク質の分解と合成が毎日繰り返されていますが、その細胞のリサイクルシステムとも言えるしくみを担う主なものにオートファジー(自食作用)があります。オートファジーの発見自体は1950年代とかなりさかのぼりますが、生命にとって非常に重要な役割を果たしていること、そして、さまざまな病気と関係があることがわかってきて注目が集まるようになりました。
この本では、まずオートファジーを理解するために、細胞の中の世界ーー数多く存在する袋や膜のしくみや、物質を輸送するメカニズム、そこで何が行われ、どういう意味があるのかーーなどを丁寧に説明します。また、ノーベル賞に結びつく研究がどのように進んでいったのか、臨場感と共にその様子を紹介します。
さらにオートファジーが生体にとって極めて重要で多岐にわたる機能を持つこともわかってきました。主要な3機能、栄養源の確保、細胞成分の新陳代謝、有害物質の隔離除去を中心に取り上げます。また、オートファジーはどのように分解するべきものを認識するのか、その秘密に迫ります。
後半では、がんなどさまざまな疾患とオートファジーの関係、予防や治療に結びつく可能性について触れます。また、著者が発見した、年齢と共に増加しオートファジーを抑制して老化や脂肪肝に関わっていると考えられるルビコンというキーになるタンパク質について詳しく紹介します。
老化や健康寿命、病気、免疫といった身近な問題の鍵になるかもしれないオートファジーの研究をあらゆる角度から語る1冊です。

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Posted by ブクログ

同氏の『LIFE SCIENCE』を先に読んだが、どちらも似たような中身ながら、本書の方が若干専門的か。だが、吉森先生の解説が分かりやすいので、読者を置き去りにしている感じはしない。

で、一番気になるのは「老化」に対して効果があるのか否かだ。俗っぽい興味だが、理論より先にそちらに興味が向くのは仕方ない事で…そんな俗物根性丸出しで読み始める。

ー 細胞の中には膜でできた袋がたくさん詰まっていて、オルガネラと呼ばれている。ミトコンドリアやリソソーム、小胞体、ゴルジ体などがある。オートファゴソームもオルガネラの一つだが、ほかとは大きな違いがある。ほかのオルガネラは常に存在していて、細胞が分裂するときは2倍になって分配される。一方のオートファゴソームは、隔離膜として出現し、つくられては消えていく。

ー オートファジーによる栄養源の確保は、特に酵母のような単細胞生物では重要である。単細胞生物の場合、1個しかない細胞の中に栄養をたくさん蓄えておくことはできない。そのため周りから栄養を取り入れ続ける必要があり、栄養の枯渇は命に関わる。だから周りから栄養を取り入れることができなくなると、オートファジーによって細胞の成分を分解して栄養源を確保するのだ。タンパク質を分解すると、アミノ酸になる。そのアミノ酸をエネルギー源として使ったり、アミノ酸を材料にして生存に不可なタンパク質をつくったりする。細胞の成分を分解して得られる栄養源には限りがあるものの、例えば酵母の場合は、飢餓状態で何十日も生き延びることができる。そうして周りの栄養状態がよくなるのを待つのだ。

と、まあ先ずは専門的な用語を浴びて、基礎知識を得る。で、ひたすら、老化対策についての叙述を待ち侘びる。

そして、期待は裏切られない。しかし発言は慎重だ。こうすると寿命が延びるということが、さまざまな動物実験から知られている、と来た。専門用語で「寿命延長経路」と呼ばれ、主に5つ。

1つ目はカロリー制限。1食のカロリーや食事回数を減らすと、寿命が延びる。ただし、生命の維持にカロリーは必要。2つ目はインスリンシグナルの抑制。食後に血糖値が上昇すると、それに反応して膵臓からインスリンが分泌されるが、このインスリンシグナルはある程度抑制した方が寿命が延びる。3つ目はTORシグナルの抑制。TORはリン酸化酵素で、アミノ酸やグルコースなどの栄養源が増えると活性化され、標的分子にリン酸を付加することを通してタンパク質の合成や細胞の増殖を制御している。TORシグナルも、抑制すると寿命が延びる。4つ目は生殖細胞の除去。生殖と寿命は逆相関の関係にあり、生殖を盛んにすると寿命は短くなる。動物実験からわかったことだが、かつて生殖器を切除した宦官と呼ばれる男性たちの平均寿命が、50歳前後だった時代に、彼らは70歳くらいまで生きたという記録がある。最後はミトコンドリアの機能をある程度抑えた方が、寿命が延びる。

何事もほどほどに、がよいらしい。詳しくは本書。書き過ぎないよう、ほどほどに。食べ過ぎない、運動し過ぎない、性的にもほどほどに、だ。

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2025年07月05日

Posted by ブクログ

著者がオートファジーについて研究を始めたきっかけから、どんなテーマでどんな実験をしてどんな成果が得られたのかを、ほぼ時系列に沿って説明

細胞レベル、分子レベルでどんな反応が行われているのかが図で説明されていて、わかりやすく感じられる

何が書いてあったのかを説明しろ言われても説明はできないが、読んでいる時にはとてもよく分かった気がする

トップを走る研究者の講義ってこんなに面白いのかと感じた

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2022年08月05日

Posted by ブクログ

オートファジーに関して、いろいろな情報を耳にする機会が増えた。けれど、それはどこ情報?正しいのか?結局オートファジーって何?など疑問が膨らんだので、実際に研究をされている先生による科学的な説明が書いてある本を、と友人から薦められて購入して読んだ。

ブルーバックスだから一般向けに解りやすく書かれているのだろうけれど、文系脳+ポンコツ気味な私には正直なところ難しくて読み終えるまでにかなりの時間がかかった。
オートファジー研究の第一人者といってもいい先生による著述なので何よりも説得力があって、信頼できる。
オートファジーの仕組みや現状を知ることが出来て、読んでみて良かったなと思えた。

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2022年05月29日

Posted by ブクログ

前著ライフサイエンスは、科学思考を丁寧にわかりやすく説明し、ベースを作り上げた上でオートファジーを解明する名著、今回はオートファジーにフォーカスした内容で、オートファジー3機能である自食、新規再構築、攻撃を説明し、将来までを見据えた科学的名著

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2022年04月09日

Posted by ブクログ

ファスティングを調べているうちにいきついた「オートファジー」という言葉。
LIFE SPANにも書いてあって何となくしっていた言葉だったけれど、本書は研究の第一人者である吉森先生が素人にも分かりやすくオートファジーについて説明してくださっていた。
これから解明されていく可能性を考えるとワクワクさせられた。
それ以上に吉森先生をはじめとする最先端の研究者の方々のあくなき探究心に惚れ惚れしてしまった。

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2022年03月21日

Posted by ブクログ

オートファジー研究者の吉森保さん自らオートファジーの最新情報について解説された一冊。オートファジーは老化や免疫、認知症などの病気にも関わっている細胞のリサイクルシステム。本書では、オートファジー研究の歴史~仕組み~効果~発動方法まで一冊でオートファジーの現在がすべてわかる内容となっている。現在研究中のオートファジー関係のサプリや化粧品の話もでてきて面白い。最近所々で聞くようになったオートファジーについて詳しく知りたい人にオススメ。

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2022年03月09日

Posted by ブクログ

オートファジーについて書かれた本は幾つか読んでいたが、途中まで、LIFE SCIENCEと同じ著者だということは気付かなかった。あれに比べると、同じ一般書だが、もう少し科学的な仕組みに寄っている感じがする。ノーベル賞を受賞した大隅良典教授との出会いや、研究成果の展開について、興味を惹くように書かれており、最後には、オートファジーの研究成果がもたらすかもしれない疾病予防や治療などについても触れられている。たしかに、オートファジーの応用分野については、未だ知られざる可能性が多くありそうだ。正しく活用されることを祈りたい。

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2022年02月14日

sun

購入済み

健康寿命に関心のある人に

細胞のリサイクルシステム「オートファジー」を解説する一冊。ノーベル賞受賞の研究を基に、栄養確保、代謝回転、有害物除去の3機能をわかりやすく紹介。がんや老化との関連、ルビコン蛋白質の役割も詳述。専門的だが例え話で親しみやすく、未来の医療応用に期待が高まる。

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2025年06月30日

Posted by ブクログ

後半、専門滝な説明になると、図解があってもついていけないところが多々あった。
まだ研究の途上にあるということらしいので、その実益に関しては今後の研究に委ねられているということなのだろう。

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2025年05月19日

Posted by ブクログ

新書レベルとしてはちょっと難しい。
オートファジーの仕組みや発見の経緯の話の方がボリュームが多い。
オートファジーを生かして、実生活をどう改善するかという知見を得ようと思って読むと期待外れになる。

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2024年01月21日

Posted by ブクログ

細胞が自己成分を分解する機能をオートファジーというらしい。

2016年にノーベル賞を受賞した研究だが、受賞者曰く「まだ3割程度しかわかっていない」とのことで、今最先端の研究過程が読めてとてもライブ感があった。

病気の治療や予防、果ては健康寿命の延長まで解決しうる、非常に夢のある題材だった。

れだけ日本でリードしている研究なのに特許やそれを使ったベンチャー企業などが少ないという言及に自分も危機感を覚えた。

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2022年05月05日

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