【感想・ネタバレ】Schoolgirlのレビュー

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Posted by ブクログ

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表題作『Schoolgirl』の親子は、簡単に病名が付く令和では客観的に診察されたら何かしらの病名が付くのかもしれない。親子関係としてはありふれた現代的な親子で、情報社会に影響を受けまくった活動家もどきの子供っていうのは沢山いる気がする。大抵は予防接種みたいなもので、厨二病の亜種のようなものなのかもしれない。
『悪い音楽』の主人公は音楽家になっていれば芸術家らしいと称される人物だろう。全てが音楽を中心の彼女が、音楽のために同居人を手放してしまわないことを祈る。登場する女子生徒は、私はめちゃくちゃ苦手なタイプ。なんで女が二股すると男同士が殴り合うんだろうな。二股した張本人を殴るならまだ理解できるんだけどな。
『Schoolgirl』の親子はこの後も親子として相手のことがちょっとわからなかったり、言いたくないことがありながらも親子であり続けるような気がするが、『悪い音楽』のソナタはふとしたキッカケで全てを手放してしまえる。しかもそれに対して後悔はしなさそうで心配になってしまう。

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2024年02月15日

Posted by ブクログ

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⚫︎受け取ったメッセージ
言葉で表現することの可能性


⚫︎あらすじ(本概要より転載)
祝・第170回芥川賞受賞
新芥川賞作家の原点。第73回芸術選奨新人賞受賞作。

どうして娘っていうのは、こんなにいつでも、
お母さんのことを考えてばかりいるんだろう。

社会派YouTuberとしての活動に夢中な14歳の娘は、
私のことを「小説に思考を侵されたかわいそうな女」だと思っている。
そんな娘の最新投稿は、なぜか太宰治の「女生徒」について――?

第126回文學界新人賞受賞作「悪い音楽」を同時収録。


⚫︎感想
2作ともこれぞ純文学という感じで、芥川賞に選ばれてもよかったじゃないか?と思えた。大変面白く読めた。

「School girl」
小説の可能性を見出せる小説。母になる前の母を知りたいと思い娘が見つけた太宰治の「女生徒」

太宰治の「女生徒」を踏まえた、対照的な娘と母の話。「女生徒」を読んでから本作を読み、よかったと思う。社会派YouTuberの聡明で正義感あふれる娘をもち、娘に小馬鹿にされる発言を受けながらも一生懸命子育てはしようとしている母である主人公。当たり障りのない言葉を探しながら。でもしれっと不倫していたりもする。

「東京都同情塔」でも指摘されていた2点。
誰も傷つかない言葉の追及、生まれながらにして恵まれていれば当然良い人になり、悪い人になりようがないという指摘。

周りのでき事も人も早回しで進み、娘は世界の真実を把握するのに「5分で分かる世界の真実」の動画を再生し、あっという間に子供に追い越され遠ざかる。これは現代の親の立場では共感する部分だ。

太宰が書いた時代の女生徒と、九段さんが書いたSchoolgirlとでは、同年齢の女の子たちでも、およそ100年違えば相当に異なった状況にある。思考のスピードの違いを「女生徒」の読点の多さという表記に重ねて考察しているところもおもしろい。

また、娘は、母親を小説に思考を侵されたかわいそうな人という一方で、母の蔵書のラインナップを探索することで、自分が生まれるまえの母という人を探る、そして見つけた「女生徒」。母を思う(いいも悪いも)気持ちは時代を超えても変わらない。



※特に印象的だった部分

「私とあなたではたぶん、前提の共有ができてないだけだと思う。あなたにとっては本当の反対は嘘で、夢の対義語が現実なんでしょ?フィクションの反対はノンフィクションで、良いの反対は悪い?…でも私の脳の言語野ではそんなきれいに言葉の意味ってわけられていないのよ。…」

「戦争に勝利すれば何かいいことがある」のような大きな「大説」は今はほとんど相手にされていないにしても、少なくとも太宰治が残したような「小説」は私もあなたも共有している。




「悪い音楽」
感情がうすい音楽教師、三井ソナタ。音楽の抜群の才能がある。生徒が怪我する場面、父(世界を飛び回る音楽家)が音楽教師などだめだと意見する場面、「横田かのん(情熱的だが、音楽の才能は皆無)」が訴えかけてくる場面…など深刻な場面で、ほぼ感情が動かないどころか笑えてきたり、別のことをかんがえたりしている。真剣な場面で無意識に微笑んでいたらしく、指摘される。
彼女自身、感情について考察する場面がある。芸術家たちがが感情のバリエーションを創り出し、それらを吸収しているだけではないのか?と。「表情なんてものは、ただの顔を組織している筋肉の動きじゃないか」。と、考えたその夜、表情筋トレーニング講座に申込をしている。生徒たちの合唱よりも、合唱祭にかける自らの音楽とその完成度からも、全く教師には向いていない。最後は横田に担任先生としての立場を奪われる。

三井ソナタと横田かのんは対照的な人物像で、おもしろい。二人ともバランスが著しく悪い。一方は音楽の天賦の才能を持つが感情が薄く、もう一方は大変情熱家で自らが中1にもかかわらず、生徒を率いる力があるが音楽の才能はない。

感情がうすくて客観的すぎるものの見方のせいで、笑える箇所が何ヶ所かあり、最初から最後まで一気に読めた。

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2024年02月04日

Posted by ブクログ

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つい最近芥川賞を取ったばかりでマスコミに露出も多くなった作家なので受賞作はまだだが先ずは本作から読んでみた。2作の短編だがどちらも女性が主役だ、文章に区切りがなく読みにくい作風だが、そのたたみ掛けが良いのかもしれない。一人は主婦そしてその娘、もうひとつは音楽教師とその生徒。どちらもその役割を実際の行いとその思想に問題はあるが必死にその役割を果たそうとしている、何故か生きるのがつらそうだ、世の中の女性は皆そうなのかと疑ってしまう、その点男の単純なこと、なぜだか悲しくなってしまう。

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2024年05月25日

Posted by ブクログ

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新人賞受賞作「悪い音楽」から読みました。
人の心がわからない教師の話。
音楽家の父につけられた名は「ソナタ」。
もうこれは呪いだな。

確かに、心に寄り添うとか感情を揺さぶるとか、やたら共感を求められる時代にあって、他人の感情を忖度しない人は悪者扱いされてしまうのかも。

ソナタ先生は感情が無いわけではなく、自覚が薄いだけで喜怒哀楽の末に苦しんだり傷ついたりもしている。サエはちゃんとそれを感じとっているのだとラストシーンを解釈しました。


「Schoolgirl」はステレオタイプな思考が並び実態がつかみづらい。世界は大小のさまざまな説でできている。良い意味で最初の印象が裏切られていきます。

主義にとりつかれている娘は、生きている実感が欲しいのかな。だとしたら私も誰かが語る「現実」よりも小説を支持します。

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2024年05月23日

Posted by ブクログ

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「Schoolgirl」
環境・貧困など世界の問題に興味を持ち、発信している娘と
小説が好きな母親。
娘くらいの年齢の頃に、環境などに問題意識を持ち、
それを気にしない大人に苛立ちをおぼえるのは、
私も思春期に経験があるので、分かる気がした。
(大人になるにつれて、その問題もかなり恣意的なものであることに気がつくのだが…)

でもどんなに大人ぶろうとも母親が好きで、密接不可分だという母娘の難しさ。
ただ私が「女生徒」未読なためか、
今ひとつ感じ取れないものがあったので、ちゃんと女生徒を読もうと思った。

 ・大きな説(世の中)は変わっても、小説は読み続けられることもある


「悪い音楽」
感情がやや欠如した音楽教師。
それを敏感に感じ取った生徒との争い。
こちらのほうが好み。
表情や感情の話が良かった。

 ・感情 これまでに芸術家や小説家が概念を見つけたり、名付けたりしてきたもの
 メディアなどで広がり、それを学習して使っているだけ

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2023年08月05日

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