【感想・ネタバレ】ミーツ・ザ・ワールドのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

(引用)
なんかさ、ニ次元と三次元とか、愛とか恋とか、好きとか愛してるとか、恋愛か友情かとか、恋愛か憧れかとか、世の中そういうの細分化しすぎだよ。自分が一緒にいて心地いいものとか、好きだって思えるものを思う存分集めて愛でればいいじゃん。
ライの態度は基本的に流しだ。実態を掴まれまいとしているかのように人からの言葉や質問をさらっと流す。ぶつかり合うことがない。
皆何かこういう個人的な救いをストックして、辛いときに頓服のように利用して生き延びているのかもしれない。
えら呼吸のライが、陸でも普通に生きられる手だてがないか、模索し続けているのだ。水槽の中で普通に生きていられるのなら、私が水槽を持ち歩いて暮らせばいい。
私たちの街では、いつも人が入れ替わっていくのよ。どんなに頻繁に通ってる常連だってある日突然来なくなったりする。それはもう何人も来ては消えて、二度と会わない人もいれば、二年後とか五年後とかにふらっと現れる人もいる。
これから先ゆかりんが誰とどこに住むかは、ゆかりんが決められる、っていうか、ゆかりんが決めなきゃいけないんだよ。今ゆかりんは自由で、ゆかりんを縛りつけるものは何もない。自由自由って皆言うけどさ、自由を手放す自由もあると思うんだよ。だから何か、俺が決めてやろうかなって気になったんだよ。
生きていても死んでいても彼女の存在を祝福したい気分だった。すごく刺さる本を読んだ時その著者がすでに死んでいても悲しくならないし好きな気持ちは変わらない。

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2024年04月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「自分は消えるべき存在。この世界から消えているのが自然な状態」と漠然とした「死にたみ」を持っているライ。
そんなライに生きていてほしいと奮闘する主人公の由嘉里。
どうすればライが生きていく希望を見つけられるのか、そもそもなぜライに生きていて欲しいのか、ライに生きていて欲しいと思うのはライのためではなく自分のエゴなのか、由嘉里は自問自答する。


人の価値観を尊重するってどういう事なんだろう。
それぞれの価値観を否定しないのはもちろんだけど、大事な領域に踏み込まないように、傷つけないように、距離を取って関わることだけが正解だとしたら、なんだか寂しい気がする。
否定せず見守る事しかできない事ももちろんある。
自分が相手に対して何もしてあげられなかったという罪悪感を感じたくない、というただのエゴなのかもしれないけど、相手に対して「なんとかしてあげたい」「自分が考える心身共に健やかな状態に少しでも近づいて欲しい」と思う気持ちってやっぱりあるよな。


自分はこの本を読みながら、仕事で関わったある人の事を思い出していた。
私はその人の細やかな気遣いだとか、茶目っ気だとか、話している時に安心する距離感が好きだったし尊敬していた。
だけど彼は孤独で、生きることに希望を持っていなかった。

なんとかしてあげたかったし、今より良い状態へ持って行きたかったけど、彼は全くそれを望んでいなかった。

こうすればもっと楽に生きられるのに。
もっと人生を楽しめるかもしれないのに。

そんな思いと、彼の価値観を大事にしたい思いがぶつかり合って、結局私は何もできないうちに、彼は私がもう関われない所へ行ってしまった。

「もっとなんとかできなかったのか」という後悔や、「彼にとってはこれが正解だったのかもしれない」という諦めを勝手に感じているのは私のエゴなんだろうか。
別に彼の人生を救う救世主になりたかったわけではなくて、彼には彼の素敵な所を知っている人に囲まれて幸せでいて欲しかった。
そんなことを思う事自体が思い上がっているんだろうか。
こうしてモヤモヤを吐き出すのも、アサヒからしたらダサいのかもな。


どうすれば違う世界を生きている相手とお互いの世界で生き続けられるのか。
相手への「理解できなさ」とどう接していけば傷つけずにいられるのか。
少しだけわかったような、やっぱり全くわからないような。


以下、心に残った箇所。

・「それは自分を殺すことと一緒だよ。ライに対して自分の真実を押し付けようとする時、由嘉里だって苦しかったでしょ。それはそうすることで相手の大切な部分を殺してしまうからだよ。私たちは同じ世界を生きてないんだから。こっちのルールを押し付けたら、向こうの世界は壊れる、向こうのルールを押し付けられてもこっちの世界は壊れる。離れた存在と近くで生きてると、必ずどちらかが壊れる」(P192)

・「人が人によって変えられるのは四十五度まで。九十度、百八十度捻れたら、人は折れる。それはそれで死ぬよ」(P192)

・「誰かとぶつかって怪我しても膿んでも反目しても喧嘩しても結びついても絡まり合っても溶け合っても溶け合った後分裂しても、結局究極この自分と生きていくしかない。どんなにくっついたとしても人は自分の人生しか生きられないのだ。でも全ての人が自分の人生しか生きられないからこそ、私たちは他人を、愛する人を包み込みその人が物理的にいなくなったとしてもその人の目を通して世界を見て、その人と共鳴しながら生きていくことができるのかもしれない」(P232)

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2024年01月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初めての金原さん。読み進めると、「言葉にできない、そんな夜。」で紹介された部分(3箇所)はすぐにピンときた。思いの外、救いのある温かい文章を書く方なんだなと感じる。
ライへ大いなるの愛着・執着が形成されるまでの過程はやや薄く、主人公の喪失感に気持ちを乗せることは難しかった。オタ活の部分は知識がないながらも面白く読めた。

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2023年06月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人と生きる難しさをこの本で考えさせられた。
どれだけ人のことを思っていても、互いに思い合っていても生きる世界が違えば息苦しくなる。見ている景色の違いはやがて大きな違いとなる。
誰もが愛を知りたいと一度は考えるだろうが、愛とは決まった形があるものではない。ライとの関係、アサヒとの関係、MIMとの関係。全てが愛でいいのではないか。体を交えること、ありがとうを言う何気ない時間、相手のことを想うこと。そんな愛の形をこの物語を通して見ることができた。

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2023年06月22日

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