【感想・ネタバレ】ミーツ・ザ・ワールドのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

(引用)
なんかさ、ニ次元と三次元とか、愛とか恋とか、好きとか愛してるとか、恋愛か友情かとか、恋愛か憧れかとか、世の中そういうの細分化しすぎだよ。自分が一緒にいて心地いいものとか、好きだって思えるものを思う存分集めて愛でればいいじゃん。
ライの態度は基本的に流しだ。実態を掴まれまいとしているかのように人からの言葉や質問をさらっと流す。ぶつかり合うことがない。
皆何かこういう個人的な救いをストックして、辛いときに頓服のように利用して生き延びているのかもしれない。
えら呼吸のライが、陸でも普通に生きられる手だてがないか、模索し続けているのだ。水槽の中で普通に生きていられるのなら、私が水槽を持ち歩いて暮らせばいい。
私たちの街では、いつも人が入れ替わっていくのよ。どんなに頻繁に通ってる常連だってある日突然来なくなったりする。それはもう何人も来ては消えて、二度と会わない人もいれば、二年後とか五年後とかにふらっと現れる人もいる。
これから先ゆかりんが誰とどこに住むかは、ゆかりんが決められる、っていうか、ゆかりんが決めなきゃいけないんだよ。今ゆかりんは自由で、ゆかりんを縛りつけるものは何もない。自由自由って皆言うけどさ、自由を手放す自由もあると思うんだよ。だから何か、俺が決めてやろうかなって気になったんだよ。
生きていても死んでいても彼女の存在を祝福したい気分だった。すごく刺さる本を読んだ時その著者がすでに死んでいても悲しくならないし好きな気持ちは変わらない。

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2024年04月20日

Posted by ブクログ

最高だ〜。あらすじに示されるギラギラ感に気圧されて読むのが遅くなってしまったけど、中身は相変わらず硬派。

異なる環境/考え方の人間たちと交流することで自己が開けていく物語、といえば簡単だけど、主人公の拗らせ方がなかなか強力なのでところどころ笑ってしまった。
多くの登場キャラクターが骨太で、またすぐにでも彼女たちに会いたい。ライは「荒川アンダーザブリッジ」のニノのイメージを描きながら読んだ。あと焼肉食べたくなる。

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2023年12月20日

Posted by ブクログ

自分に向き合おうと、これまで多くの自己啓発本を読んできたけれど、わたしがやってきたのはただの向き合うふり、だったように思う。
読みながら、自分がどんな人間か、評価を加えず、矛盾に感じる部分も含めて書き出してみることにした。
これまで手をつけられなかった自分の痛いところに触れてしまったような感じもあるけれど、不思議と苦痛を感じずに書き出すことができた。

この作品は、いつもの金原さんの、強烈で鋭い痛みを伴う物語とは少し違った、壮大な自分探しの物語だ。さらに、主人公がリスカやODや浮気をしないというところも、これまでの金原さんの作品とはちょっと違うところかもしれない(お酒は飲んでる)。

死にたいキャバ嬢と推したい腐女子の物語ってどんなだよ!
と、思っていたのだけれど、ホストやオカマも主要キャラクターにいるもんだから、なかなかカオス!
それぞれのキャラクターの個性は強く、アンバランスではあるけれど、物語の中での関係性としては、バランスが取れている。

人生のある瞬間、とても濃密な人間関係を味わう時がある。職場でも、学生時代の友人でもない、趣味の繋がりともちょっと違う、一見、共通点がなさそうに見える関係。今はもう、連絡すら取っていない、どこで何をしているのかも分からない、過ぎ去った人間関係。でも当時は、それが全てだった。長い人生の中の、ほんの一瞬。その一瞬を、とても鮮やかな筆致で描き出している。

作中では、主人公の腐女子(由嘉里)が、「マトモな考え方」、いわゆる「一般的な考え方」を持った人物として描かれている。だから、彼女の偏見は今多くの人が持っているであろう偏見だし、読みながら自分にも偏見が多々あることに気づかされる。

死にたい、という気持ちは分かるけど、死にたいキャバ嬢(ライ)が言う死にたみの意味はよくわからなかった。
隣人が、死を思わせる言葉を発したら、どうにか助けたいと思う。そういう感覚で、由嘉里はライを救いたいと思っている。ライに生きていて欲しいと思っている。ストレートにそれを伝える。たぶん、一般的な感覚だと思う。
しかし歌舞伎町の住人たちは皆、そんなライの死にたみは知っているけど、由嘉里のようにまっすぐに止めようとしたり、生き続けることを押し付けない。でも、ライを心配して奮闘する由嘉里のことも決して放置せず、話を聴いて、そばにいてくれる歌舞伎町の住人たち。

この作品に出てくる歌舞伎町の住人たちは、ライの死にたみに強く踏み込むことをしていなくて、その気持ちを受け止める、というところに留めている。その根っこにあるものはなんだろうと考えさせられる。ライのことを深く知っていてそうしているのか。深くは知らないけれど、歌舞伎町の住人たちが皆それぞれ、ライが抱える死にたみに近いものを抱えているのか。ライに死んでほしくないけど、ライが死を選ぶなら仕方がないのか。
そこに踏み込まないことは、優しさなのか、共感なのか、諦観なのか。

ライの死にたみを理解しよう、助けようともがく由嘉里。
その中で、これまで想像もしてこなかった、さまざまな価値観に触れる。
由嘉里が歌舞伎町の住人たちと交流することは、自分が縛り付けられていた価値観から解放され、自分の生き方に向き合うことでもあったのだ。

自分がされたら嫌だけど、それを相手にしてしまうことって、ある。
相手にかける優しい言葉を、自分にはかけてあげられなかったり。
わかってはいるけど、うまくできないことって、たくさんあるんだよな。
わかってないのに、わかったふりをしてしまうことも。
多くの複雑な人間関係を経験してきたからこそ、味わえる作品だったりするのかな。

そんな金原さんは、文學界新人賞の選考委員をつとめているわけだけど、一言「何でもいいよ! 小説書けたら送ってみて!」と短くもシンプルで包容力のあるコメントをされていて、選考委員であるにも関わらず、そこに全く評価を感じさせない言葉に、愛を感じる。この作品に出てくる人たちとも重なる、目の前にいる人を救済しようとする愛を、金原さん自身からも、ひしひしと伝わってくる。

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2023年12月17日

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蛇にピアス、アッシュベイビー、アミービック、ハイドラ、星へ落ちる、って金原ひとみさんの作品これくらいしか読んだことなくて、全部暗くて猥雑な作風(それが大好きだった)だったからこの話のあらすじを見たときは「えっ、金原ひとみさんってこういうの書くの!?」って驚いた。ちょっと冗談じゃないくらい良かった…。
登場人物たちの愛があってもどんなに好きでもどうしたってわかりあえない、共感することもない、でもそばにいることはできるしずっと思ってることはできるって姿勢がすごく好き。
ゆかりの『でも、会えない人を熱烈に愛して思い続ける才能が、私にはあるんです。』って台詞はフィクションの登場人物やアイドル、芸能人を推してる人間には刺さるよ。それだけじゃなく、この台詞が発せられるタイミングも泣きそうになるくらい良かった。大好き。

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2023年10月18日

Posted by ブクログ

共感することが多すぎた。
なんか生きる希望をもらった気がする。
恋愛に執着しなくてもいいんだって思えた。

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2023年05月19日

Posted by ブクログ

金原ひとみさんの作品の中では割とポップな印象。主人公のキャラクターでそう感じるのかな。
サンカク?知らない肉の部位がいっぱい出てきた

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2023年05月06日

Posted by ブクログ

主人公のオタク度合いの解像度が高い! 高すぎて共感できすぎて、どんどんのめり込んでしまった。主人公と同じようにライに救われて、ライを通じて出会った登場人物たちに救われた。ライっていわゆる「オタクにやさしいギャル」に近い存在だけど、そしてそういう人は実際には存在しないと言われることが多いけど、この世界にはライがいるんだなあ、と自然に思えた。この世界にライがいてよかった。
分かり合える人と分かり合えない人だったら、当然だけど、分かり合える人とのほうが仲良くできる。オタクはオタク同士で仲良くなるし、オタクの中でも同ジャンルの人とのほうがさらに仲良くなりやすい。でも生きていると、どうしようもなく分かり合えない人にどうしようもなく惹かれてしまうこともあるかもしれない。そういうとき私はどうするだろう。自分の世界を変えてしまうか、相手の世界を変えようとするか、それとも分かり合えないまま他の共生方法を探すか。どんな手段を取るにしてもとにかくたくさん考えなければいけないんだと思う。

【読んだ目的・理由】フォロワーがおすすめしていたから
【入手経路】買った
【詳細評価】☆4.5
【一番好きな表現】私がトモサンに救われているように、皆何かこういう個人的な救いをストックして、辛い時に頓服のように利用して生き延びているのかもしれない。(本文から引用)

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2023年02月12日

Posted by ブクログ

読んだ人によって響く箇所も響き方も全く同じじゃないし、同じものを見て全く同じ響き方をする人はいないと理解することが大事だと思った。

これは自分語りだけど、他人からの感情の温度と湿度が苦手で、分かり合う事ってきっと無いなと思いながら生きている自分がいることを分かってほしい。みたいな事とか、この本を読んでいる中で自分の中身がとめどない事になっていたように感じる。腹の中にある玉が自分の中身をねじ切りながら還元していくような感じがした。

読んでいく中で思うことが多すぎてまったく言葉にならないので、もうしばらくこの本借ります先輩ごめんなさい!

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2023年01月09日

Posted by ブクログ

金原ひとみの小説の中では、希望の持てる展開だったのではないかと思う。いつもは酒、男、セックスばかりの作品が多かったので、今回は読みやすかった。
ミート・イズ・マインの設定が面白くて、よく考えてたなと感心する。

主人公の由嘉里は最初は自分に自信もなく好きにはなれなかったが、ライに拾われ、アサヒやオシンとも出会い、どんどん変わっていく。オタクである事を隠さず、自分自信を認めるようになり、母親にも言いたかった事も言えるようになり、とても成長した。
ただ金原ひとみらしい表現はそのまま生きていて、好きな作品になった。

卑しさのない人と接する時は、高い白いワンピースを着てカレーうどんを食べるくらい気をつけるが、卑しい人の前では、安い黒Tシャツでカレーうどんを食べるくらい気が楽だという。すごい例えだけど、何か分かりやすいかも。


・「自分にはよく分かんねえなって奴見た時はさ、可哀想とかバカだなとか思うんじゃなくて、自分よりめっちゃ楽しいこととか面白いこと知ってんじゃねぇかと思った方がいいぜ。」アサヒ
・「無駄に自分を貶めるような言い方はしない方がいい。」ライ
・「何でも知ることができるからこそ取捨選択をして、何を知っていて何を知っていない自分であるべきかをあ、服をコーディネートするみたいに考え続けなければならない。」ユキ

みんないい事言うな。

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2023年01月08日

購入済み

必ずチェックする作家さん

深くてリズミカルで勢いとパンチ力のある文章が大好きです。韻踏んでる箇所が多くて面白かった。
癒しさえ感じる

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2022年01月29日

Posted by ブクログ

銀行に勤める由嘉里は、合コンで泥酔して倒れたところをキャバ嬢のライに助けられ、その流れで一緒に暮らすことになる。

推し活が生きがいで腐女子を自認する由嘉里の語りが軽妙で、これまでの金原作品とはかなり雰囲気が違って戸惑うが、内容は相当深くて重たかった。

由嘉里は、自分を肯定してくれ、何にも執着せず消えたいと願っているライに惹かれ、彼女が何とか幸せになって生きてくれるように手を尽くそうとする。

多様性が言われて久しい。いろんな価値観や生き方を互いに尊重し認め合うことがよしとされる。確かに恋愛して結婚して子どもを育てて、という型どおりの「幸せ」の押し付けは違うと思う。

では、生きたくない、消えたい、消えているのが本来の自分、というライの「死にたみ」をそのまま肯定していいのだろうか。事情を聞いたり、頑張って生きようよ、などと励ますのは、とんでもなく野暮でダサい行為なのか。難しい問いに由嘉里と一緒に悩んでしまった。

ハッピーとは言い切れない結末だけど、やれるだけのことをやった由嘉里が清々しくて救われる。尊重はしても迎合はしない。テーマは重いが、由嘉里とホストのアサヒ始め、オシン、ユキとのやり取りが温かく楽しかった。

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2024年05月05日

Posted by ブクログ

自分の常識は必ずしも正しいとは限らない。
新宿歌舞伎町の中で、歩いているホストだとか
銀行で働いているOLがイメージ通りの人格や人生を歩んでいるわけではない。
それらを見つけるためには、人と過ごし様々な生き方を見ることで自分のパラダイムを無くしていくことができる。
それは人だけではなく、感情にも言える。
愛だとかそれが人生を豊かにしてくれるとは限らない。
何かに縋るのではなく、自分の目で様々なことを知り自分らしく生きていくこと・誰かを干渉しないことが自分にとって良い選択になるのではないだろうか。

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2024年04月14日

Posted by ブクログ

焼肉擬人化漫画「ミート・イズ・マイン」を愛する、29歳腐女子で銀行員の由嘉里と、強い死にたみ(希死念慮)を持つ美人キャバ嬢のライが出逢い、ライの住む広いマンション(だがゴミ屋敷)で同居し始めるところから始まる物語。

ここ数年金原さんの小説はけっこう読んだけど、この作品がいちばんコメディ味があると思う。とは言え金原さんの深く重めの思想が散りばめられているからジャンルはコメディではないのだけど、「味はある」という意味で。
なんと言っても「ミート・イズ・マイン」(略してMIM)の内容の作り込みがすごい。由嘉里の推しは臓物系のトモサンカクで、推しカプは…とか、腐女子の世界を描くににしても、なぜに焼肉漫画?という不思議な面白さ。
その界隈のオフ会では焼肉を食べに行くのが定番、とか、本当にありそうで。笑

由嘉里は美人とは言えない、恋愛もしたことがないアラサーで、だけど銀行員でそれなりに収入はあるし、何と言ってもオタ活という趣味があって人生はけっこう充実している。
「平均」「常識」を夢見て何気なく始めた婚活の最中、酔っ払いすぎてゲロゲロしていた歌舞伎町でライが助けてくれたことで2人は知り合う。
ライは美人で、由嘉里はそれだけで羨ましいと思うのだけど、ライには誰にも消せない「死にたみ」がある。
由嘉里はそれを止めたい。ライと分かり合って、ライに希望を持って生きて欲しいと願う。
ライをきっかけに由嘉里が知り合った歌舞伎町の人々(離婚寸前のホストのアサヒ、ゲイの飲み屋経営者オシン、やさぐれた小説家のユキ)は、ライの「死にたみ」を否定もしないし止めようともしないけれど、由嘉里のライへの思いも否定しないし止めようともしない。
ある種の諦めがそこにはあって、由嘉里だけがまっすぐに「諦めない」感情を抱く正当な人間として描かれるけど、一見相容れない同士が仲良くなっていくさまが素敵だ。

ライの元カレの死に対する哲学とか、物語の端々に、感じ方によっては「希望」になる言葉がたくさん散りばめられている。
金原さんの小説って、死・暴力・セックス・不倫・オーバードーズ…みたいな世界観が多めだから(偏見でなければ)、希死念慮の感覚はあるにせよ、これまで読んできた作品とはトーンが違った。
なんか、色々考えさせられた。いわゆる標準や平均とは違う自分なりの生き方とか、生きているうちにだんだん分からなくなっていくものを、今一度求めてみたい感覚になった。

由嘉里は、何でも聞きたがるし、何でも知りたがるし、何でも理解したがる。そして理解し合いたがる。
だけど人と人はそうはいかない。曖昧で、グレーな感じでやっていかなきゃいけないことの方が多いし、どうしたって理解し合えないことの方が多い。
けど諦めないことに希望はあるのかも、とも思う。
由嘉里がライを追いかけるのは、絶対掴めない推しを追うことに似てるのかも。
…と考えると、なんて含蓄のある物語だろうか、などと思ったりした。

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2024年03月07日

Posted by ブクログ

2023年11月にNHKで放送された、『最高の一通 〜おせっかいな文具店 シロヤギ〜』という番組の中で、とある脚本家に宛てた金原ひとみのファンレターが読まれた時、「この人の書く作品を読みたい」と思った。

『蛇にピアス』という作品と作家さんの名前を共に覚えたときから早10年以上、私はまだ作品を読んだことがなかった。
『蛇にピアス』を初めましてで読むのもいいかと思ったけれど、せっかくなら最近のものを、と思っていくつかあらすじやタイトルを探してみる中で、1番興味を引かれたのがこの作品だった。

金原の文体は、私にとってあまりこれまで出会ったことのないものだった。
推理小説の解決シーンでもないのに、文字が、迫ってくる。こんなに余白の少ないページがめくってもめくって続くような視界は、小説を読んでいて初めてだった気がする。
息を吐くのを忘れたように喋る人たちに近い。それが、視界の、ページの隅々で起こっている感じ。

ゆかりだったら、ライだったら、アサヒだったら、ユキだったら、おしんだったら、、、をどのシーンでも考えた。
どの登場人物の人生とも全然似てないのに、どの登場人物も「私だったかもしれない人」のように思えた。だけど多分、きっと世界の人のほとんどは、「私だったかもしれない人」なんじゃないかとも思った。きっと、1ミリも被ってないひとなんて、そんなにいないんだろうな、って。
それが救いのように思えて、だけどなんの救いにもならない日常で、別の救いに救われながらゆかりが立ち上がりつつあるラストがよかった。

本を読み始める前に、朝日新聞のネットインタビューを読んで、またより作者に興味が湧いた。
この人の見てる世界を、その見てる世界から生まれる作品を、もう少し見てみたい。
他の作品も手に取ってみようと思う。

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2024年02月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「自分は消えるべき存在。この世界から消えているのが自然な状態」と漠然とした「死にたみ」を持っているライ。
そんなライに生きていてほしいと奮闘する主人公の由嘉里。
どうすればライが生きていく希望を見つけられるのか、そもそもなぜライに生きていて欲しいのか、ライに生きていて欲しいと思うのはライのためではなく自分のエゴなのか、由嘉里は自問自答する。


人の価値観を尊重するってどういう事なんだろう。
それぞれの価値観を否定しないのはもちろんだけど、大事な領域に踏み込まないように、傷つけないように、距離を取って関わることだけが正解だとしたら、なんだか寂しい気がする。
否定せず見守る事しかできない事ももちろんある。
自分が相手に対して何もしてあげられなかったという罪悪感を感じたくない、というただのエゴなのかもしれないけど、相手に対して「なんとかしてあげたい」「自分が考える心身共に健やかな状態に少しでも近づいて欲しい」と思う気持ちってやっぱりあるよな。


自分はこの本を読みながら、仕事で関わったある人の事を思い出していた。
私はその人の細やかな気遣いだとか、茶目っ気だとか、話している時に安心する距離感が好きだったし尊敬していた。
だけど彼は孤独で、生きることに希望を持っていなかった。

なんとかしてあげたかったし、今より良い状態へ持って行きたかったけど、彼は全くそれを望んでいなかった。

こうすればもっと楽に生きられるのに。
もっと人生を楽しめるかもしれないのに。

そんな思いと、彼の価値観を大事にしたい思いがぶつかり合って、結局私は何もできないうちに、彼は私がもう関われない所へ行ってしまった。

「もっとなんとかできなかったのか」という後悔や、「彼にとってはこれが正解だったのかもしれない」という諦めを勝手に感じているのは私のエゴなんだろうか。
別に彼の人生を救う救世主になりたかったわけではなくて、彼には彼の素敵な所を知っている人に囲まれて幸せでいて欲しかった。
そんなことを思う事自体が思い上がっているんだろうか。
こうしてモヤモヤを吐き出すのも、アサヒからしたらダサいのかもな。


どうすれば違う世界を生きている相手とお互いの世界で生き続けられるのか。
相手への「理解できなさ」とどう接していけば傷つけずにいられるのか。
少しだけわかったような、やっぱり全くわからないような。


以下、心に残った箇所。

・「それは自分を殺すことと一緒だよ。ライに対して自分の真実を押し付けようとする時、由嘉里だって苦しかったでしょ。それはそうすることで相手の大切な部分を殺してしまうからだよ。私たちは同じ世界を生きてないんだから。こっちのルールを押し付けたら、向こうの世界は壊れる、向こうのルールを押し付けられてもこっちの世界は壊れる。離れた存在と近くで生きてると、必ずどちらかが壊れる」(P192)

・「人が人によって変えられるのは四十五度まで。九十度、百八十度捻れたら、人は折れる。それはそれで死ぬよ」(P192)

・「誰かとぶつかって怪我しても膿んでも反目しても喧嘩しても結びついても絡まり合っても溶け合っても溶け合った後分裂しても、結局究極この自分と生きていくしかない。どんなにくっついたとしても人は自分の人生しか生きられないのだ。でも全ての人が自分の人生しか生きられないからこそ、私たちは他人を、愛する人を包み込みその人が物理的にいなくなったとしてもその人の目を通して世界を見て、その人と共鳴しながら生きていくことができるのかもしれない」(P232)

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2024年01月04日

Posted by ブクログ

腐女子、キャバ嬢、ホスト、ドラックとアルコール依存の小説家、、、出てくる登場人物は、自分とは全く違う肩書きの人々だし、どの人物もいい人!とか、尊敬する!とかではないんだけれど、、、どの登場人物もとても良い。とても愛着が湧く。読み進めていくうちに、それぞれの人物の奥深さがみて取れて、面白かったです。

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2023年12月11日

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人間関係は一方通行。ライと自分、母親と自分との関係に気づくところが良かった。希望がある終わり方もマイルドで良い。ファッション誌に連載されていたというところも関係があるのかな。
一番好きなところは、元カノの使っていた柔軟剤をたくさん買っていますという告白に引くところ。あ、無理、となる瞬間がリアル。
原作品の主人公は道を歩いていて声を掛けられ続ける美女がデフォルトだと思っていたけど、こういう人も面白い。

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2023年08月21日

Posted by ブクログ

登場人物がみんな語彙力豊富で、自己分析力、他者分析力に長けている。
なんかみんな色々あるけどしっかり自分の考えを持ってる人たちだなぁという感想。

会話での心情吐露が多くて読んでいて少し疲れた。
話自体は面白かったけど、内面を言語化しすぎて余白(読者の想像する余地)があまりない気がした。

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2023年08月15日

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ゆかりとライの出会いの話かと思ったら、ミーツってそっち…?いや出会いだよね?笑
このままでいいのかな、結婚してみたい、そう思うくせに実際のとこそんなの望んでないんだよね。周りからの目とか、みんながしてるという謎のプレッシャーとか。
わかるわかるって感じの話じゃなかったけど、登場人物も設定も独特でおもしろかった。ライもアサヒもオシンもユキも、悪い人じゃない感じ、けっこう好き。もう少し金原さんの小説読んでみたい。

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2023年07月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初めての金原さん。読み進めると、「言葉にできない、そんな夜。」で紹介された部分(3箇所)はすぐにピンときた。思いの外、救いのある温かい文章を書く方なんだなと感じる。
ライへ大いなるの愛着・執着が形成されるまでの過程はやや薄く、主人公の喪失感に気持ちを乗せることは難しかった。オタ活の部分は知識がないながらも面白く読めた。

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2023年06月24日

Posted by ブクログ

p110
自分以上の重みに耐えられない

金原ひとみが描く腐女子の思考が好きだった。こんな子を主人公にする話をもっと書いてほしい。

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2023年03月11日

Posted by ブクログ

金原ひとみさんの小説は、芥川賞をお取りになった時読んだ「蛇とピアス」以来かも。
字がいっぱい詰まってるなぁと思ったが、つるつる読めた。主人公由嘉里の言動に共感できるというか納得できるというか。年齢も趣味も何もかも違うが「わかるよー」と言いたくなる説得力があった。ライ、アサヒ、オシンさんたちも読んでいるうちに好きになっていく。
由嘉里の母の気持ちがよくわかってしまって、ダメだよなぁ、これではと反省しつつ、同情してしまった。夫を亡くし、娘が自立して、自分だけが取り残された感じ、今さら自分の人生を生きよと言われても、そのようには形作ってこなかったわけで。

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2023年01月08日

Posted by ブクログ

登場人物がみんなカオスだった。由嘉里の適応能力がすごかった。適応能力というか、もともとはステレオタイプだった考え方が、ライ・アサヒ・オシン・ユキに出会ったことでどんどん変わっていく感じ。この職業の人はこういう人、こういう見た目の人はこういう人、と頭から決めつけてしまうことって多いよなと思う。当たり前だけど1人1人違う考えをもっていて、その人はその人だけであり、完全に理解することはできない。ライのことを理解したい、できるはずだと思う由嘉里の気持ちはよくわかるし切なかった。
はじめは腐女子であることを恥ずかしい、知られたくないと思っていた由嘉里が、好きなものと、それを好きな自分にも自信を持っていくのがとてもよかった。

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2022年12月29日

Posted by ブクログ

主人公にとても共感した。結婚や人と付き合う事に対する不安感もだけど、結局、幸せに生きるために必要なのは自分が心から好きだと思えるモノがあるかどうかなんだと思った。それでも自分の世界に閉じこもっていたら外界へのストレスにやられちゃうし、変化のない生活は思考を凝り固ませてしまう。寛容な態度で人と関わっていきたいと感じた。

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2022年11月23日

Posted by ブクログ

普通って、不要な言葉だな。
読んでる途中から読み終わった後も、ずっとそう思わせる、現代に生きる人は全員読んだ方がいい一冊!!
自分の価値観や考えが、気持ちいいほど覆される。自分ってちっちゃいなー!って反省させられる。
世の中に対する許容量がぐんと大きくなった気分です。

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2022年10月28日

Posted by ブクログ

主人公の語りと心情が回りくどくてオタクっぽくて最初は読みづらいけど、慣れてくる。中盤からそれぞれの人物に愛着が湧いて、どんどん面白くなる。
生と死を考える良いきっかけになった。死=吸収というのが個人的にはしっくりきたシーン。
個性的な登場人物みんな良かったけど、アサヒとの絡みが1番好きやったかな。
『寂寥(せきりょう)』が最後まで覚えられへんかったからメモ。笑

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2022年10月13日

Posted by ブクログ

GWはまさかのカレンダー通りです。⁡
⁡⁡
⁡ってな事で、金原ひとみの『ミーツ・ザ・ワールド』⁡
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⁡なんか読んだ事ある様な感覚。⁡
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⁡何なんかな?この感触と言うんか感覚。⁡
⁡⁡
⁡何かと何かが混ざった感じ。⁡
⁡⁡
⁡死にたいと推したい。⁡
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⁡ダチョウ倶楽部さんの熱湯風呂の押すな押すなの生死を掛けた推し芸じゃない
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⁡宇佐美りんさんの『推し、燃ゆ』と二階堂奥歯さんの『八本脚の蝶』がミックスした感じかなっと。⁡
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⁡推しがいる幸せ、推せる人生、推しが全ての生き甲斐。⁡
⁡⁡
⁡方や自分の存在意義が無いと言う想い、存在を消したい思い。⁡
⁡⁡
⁡必死に生きると、必死に死ぬこと。⁡
⁡⁡
⁡全くの真逆の事じゃが、どちらも『必死』⁡

⁡⁡必ず死ぬ事に向かうって方向は同じなのに、思いや考え方は正反対。⁡
⁡⁡
⁡ライと奥歯さんの想いは似てる様でも、全然違う様な、じゃが何処か重なる意思がある様な。⁡
⁡⁡
⁡死の自己選択って本人じゃないと、その想いは分からんよね。⁡
⁡⁡
⁡わしは生きたい。楽しく悔いが少なくなる様に。⁡
⁡⁡
⁡2022年30冊目

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2024年02月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人と生きる難しさをこの本で考えさせられた。
どれだけ人のことを思っていても、互いに思い合っていても生きる世界が違えば息苦しくなる。見ている景色の違いはやがて大きな違いとなる。
誰もが愛を知りたいと一度は考えるだろうが、愛とは決まった形があるものではない。ライとの関係、アサヒとの関係、MIMとの関係。全てが愛でいいのではないか。体を交えること、ありがとうを言う何気ない時間、相手のことを想うこと。そんな愛の形をこの物語を通して見ることができた。

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2023年06月22日

Posted by ブクログ

金原ひとみが描く腐女子、ああ実際にこんな人いそう。

焼肉擬人化漫画をこよなく愛し、推しの舞台を観覧、グッズを集め、けれど職場ではオタである事をひた隠す。
実生活では真面目な銀行員、いずれは恋愛も結婚もしたいと考えている。

そんな腐女子の由嘉里が人生二度目の合コン帰りに出会ったのは、正反対とも思える美しいキャバ嬢・ライ。
全く共通点のない二人が共に暮らす事で起きる化学変化。

読点の少ない文章に煽られるように息をする事を忘れ読み進めた。

金原作品を読むと「~しなければいけない」から解放される。
哲学書を感じさせる恋愛小説。

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2023年02月18日

Posted by ブクログ

独特の文章と例えそして内容は小生には頭が痛くなった。若い方向けの本なのかも。小生みたいな歳を重ねた者には難解な一冊でした。でも思いやりのある人達が世の中にはいることにひと安心!

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2023年01月21日

Posted by ブクログ

 うーん。正直刺さらなかったかなぁ。

 死にたいキャバ嬢とオタク腐女子の物語。腐女子の由嘉里が合コンでボロボロになっているところを救ってくれたキャバ嬢のライ。そこから由嘉里とライの同棲が始まる。

 死にたいというライをなんとか救いたい由嘉里だが、いつしか由嘉里を置いていなくなるライ。ライの友人であるホストのアサヒやゲイのオシン、作家のユキに支えられながら生活していく中でライへの想いを整理していく由嘉里。

 由嘉里はものすごくライに依存しているが、ライの魅力というか、描写でそこまで伝わらないため、由嘉里がそこまでライに固執することに違和感を感じた。ただ、周りの人たちがいい人ばかりなので、救いもあるし、前向きになれる物語だった。

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2023年01月07日

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