あらすじ
◎「大切なものを見失わない」生き方・「生きがい」よりもっと大切なことがあります・世の中は世の中、あなたはあなた・早いピークは本当に幸せでしょうか・「人間らしく生きる」これだけは忘れない仕事、健康、人間関係……私たちはつい、目の前の細かいことにこだわって一喜一憂してしまいがちです。しかし、「本当に大切なことは何か」を忘れないためにも、もう少し気長に、「いま」を楽しむ気持ちのゆとりをもちたいもの。長い人生、思う存分、好きなことを満喫するヒントを精神科医の和田先生がアドバイス!
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Posted by ブクログ
自己啓発本の類は読まないと決めて生きてきたけれど、今年の夏は精神的にも体調的にもちょっと本当に具合が悪くて、満身創痍、藁にもすがる思いで手に取った。「些事に囚われ」嬉しいときは全身で喜びを表現し、悲しければ人目も憚らず号泣し、気に食わないことがあれば何もかも投げ出して逃亡する。些事にこだわり大事を忘れ、感情の赴くままに振る舞う生き方をしてきてしまったなあという反省はずっとあって、でもそれが自分だしと半ば諦め、半ば開き直り、ああまたやってしまったと落ち込むことがあってもその都度なんとなくやり過ごしてきたように思う。でもその対処の仕方が最近はどうやらうまく稼働しなくなってしまったようで、そのツケが今年、夏バテと共に顕著に出た。感情的な浮き沈みとそれがもたらす失態の数々をのらりくらりと受け流すことがもうできなくなってしまったのかもしれない、というか、きたのかもしれない。
わたしは今三十代半ばだけれど、この本はもっと年齢的に上の読者を想定したものであると感じた。実際に本文中に「五十代」「七十代」「高齢」というワードが頻出する。それでも、今のわたしが読んでも十分ためになるし、今後も折を見て繰り返し読みたいと思う。もっと肩の力を抜いて生きていいんだ、と感じさせてくれる本だった。誰かから認められなくても、大きな花を咲かせることはなくても、「生きがい」のような大それたものがひとつもなくても、人は幸せを感じながら生きていくことができる。むしろそうやって何もない状態で満たされるためには自分の人生をどういうふうに捉えたらいいか、できる範囲でどんな選択すればいいか、ということを指南してもらえたような気がした。わたしは常に大きな視野を持つことがすごく苦手だという自覚がある。今までそうやって生きてきてしまったから仕方ないと諦めるのではなく、できることから少しずつ良くする努力をしてみようと前向きになれた。
自己啓発本の「類」と偉そうにまとめて全否定してきたけれど、どうやら、良いものは良いらしい。