あらすじ
寂しさを消すことができるなら、私は死んでもいい――
女が女になり、女でしかなくなる瞬間を描く問題作!
わたしの心が「寂しいの、なんとかして」と色目ならぬ物欲しげな瞳を駆使して、受動的に、男を付け狙っているわけです。(中略)
男に付け込まれるように、狙われるように、心がそういう風に巧みに振る舞っているわけです。
これがわたしの本性であるところの「受け身のストーカー」です。(本文より)
これは、性にまつわるあらゆる体験を味わい尽くす「女」の物語。
女という性をやめられず、女という性から逃れられない「生」の先には何が見えるのか?
太宰治の『人間失格』を下敷きに、「女性が女性であることで覗きこむ深淵」を照らし出す意欲作!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
これ絶対私好きだろうな〜と思っていたのですが、ほんとによかったです。
女性性にフォーカスした作品で、きちんと母性とか処女性との対比(違い)も意識して描かれていました。
たぶんこれあまり売れてない(流通してない)ような気がするのですが、なぜ!?と不思議なくらい。
若干、終わり方がふわっとしているような気がしますが、話の展開というよりは要素や描き方が面白い作品なので、個人的にはあまり気にならずでした。
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すきなひとは、死にました。そうして、わたしだけ助かりました。
女にあるまじき女です。母親になれなかった、なろうともしなかった、出来損ないの、不完全な女です。女の恥。罪深き女。恥の女。
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Posted by ブクログ
女であることを巧みに振る舞う主人公、葉湖。ねっとりした女の性が鋭く突き刺さる物語。作中に登場する津島が太宰と重なった。葉湖同様、ハピでもアンハピでもなく、いっさいは過ぎていくのだろう。
Posted by ブクログ
結婚について、「男と女が為すことですから、これはもう、過ち以外の何物でもないでしょう。」「人間同士が為すことだから、その行為自体が過ちである」という言葉がとても印象的でした。
Posted by ブクログ
書店で吸い込まれるように手に取った作品。帯の強烈な一句に惹かれて一気読み。ですが、自分を知っている人にこれを読んだことを知られたくはないですね。
というのも、私も同じように感じることが多く、もしこの本を読んだら何かわかるかもしれないと思ったから。
結論から言うと、答えは出なかったけど、私が感じるあれこれは生きている限り、続くだろうし、けっして救われることはないけれど、否定できないものってわかったのは大きな収穫だと思います。
主人公同様、結婚しても私は変わらなかったし、私の場合子どもを産んでも変わらなかった。どこまでも女性であることからは逃げられないし、結局寂しさは寂しさでしか埋まらない。寂しくなるってわかっていても、そこに吸い寄せられていく人間が一定数いるんだなあと思えば、まだ生きてていいのかなと思いました。
あー生きるのつら。
Posted by ブクログ
この作品は女性失格と表題にあるけれど、内容はそうではない。女であることがマイナスのように描かれているけれどそうではない。男にも女にも起こりうる人生の物語。ハッピーであったりアンハッピーであったり、ありきたりの市井の日常。
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「男は単純だから…」
「いや、女も単純ですよ…」
同僚と何気なくかわした会話を思い出しました。表面的には単純に見えるけれど、その内面にある欲情が赤裸々に綴られています。読後、やっぱりそうだよな~と納得。
Posted by ブクログ
とんでもない女の話なのだろうと読んでみたけど、共感できる所も多かった。
いつも寂しいような、結婚した時にもう寂しさを感じなくていいと思った、結局男も女も自分が可愛い…
小さい時から人間不信だった葉湖が良夫と結婚して幸せそうな描写は、微笑ましかったけどな…
裏切りは本当に心を殺しますね…
葉湖さんは、実在されてて、もうお亡くなりになられてるのかな?
作家にはなれなかったけど手記が世に出た事は彼女にとってよかったのではないかな。
Posted by ブクログ
年始早々に読んで、ちょっと暗くなってしまった。
女性版「人間失格」って感じです。
この本の主人公は実在の人物なんでしょうか?
告白文でストーリーが進んでいくのですが、かなり自分に酔いしれてる感じが見受けられます。
これは重度のこじらせっぷりですね。
彼女の根本的な考え方が”不幸”が元になっているんですよね。
”わたしはもっと不幸になりたかったのです。不幸には、幸福にはないような蜜の味があるのです。それをとことん味わいたい、不幸を突き詰めていったら、そこに何があるのか、何もないのか、何もなくていい、何があってもいい、男の胸の中で喉に息を詰まらせながら、わたしは不幸のもたらす快楽を貪りたかったのです。”(抜粋)
幸福を追求するのではなく、不幸を追求する。
何もかもが私の考えている事と真逆すぎて、理解できない。笑
しかし、これこそ「人間の性」なんじゃないかと思いました。
やりたくてやりたくて仕方ない。
誰かに止めろと言われても、求めずにはいられない。
理性が感性を止められない。
文章から「不幸」に対する情熱をみなぎるように感じられます。
人生の目標は必ずしもポジティブなものとは限らないのです。ネガティブなことで幸福になる人も一定数いる、というのを感じました。
「引き寄せの法則」っていうんですかね。
求めているものを自然と引き寄せるっていうあの法則、そのものの展開が繰り広げられているんですよね。
年明け早々にヤバイ本読んじまったな、って気もしたのですが、これはこれでいい勉強になりました。
「人間失格」を再読したいなぁ、という気持ちにもなりました。(この小説と対比させたい)
何はともあれ、やっぱり私は幸福を追求したい!です。
Posted by ブクログ
『人間失格』のオマージュなのかと言えば疑問です。主人公の葉湖は人間不信で孤独で、自分の嫌な部分を必要以上に嫌悪しながらもひた隠し、他人からはよく気の付く良い子だと思われるように振る舞う。私自身も彼女ほど極端ではないけど、遠からずと言ったところです。それより、悲しみや孤独、人の痛みをあまり気にもせず、まわりにチヤホヤされながら、のほほんと生きている女性の方が「失格」なのではと感じてしまう。そんな私もやっぱり「女性失格」なんでしょうか。