あらすじ
データに基づいた、元トヨタ副社長らによる経済活性化への提言。
大きな追加投資をすることなく、高速道路を「普通車400円走り放題」にするだけで、人・モノ、そして情報の流れが生じ、GDPは35兆円増える!
▼傷ついた日本経済を立て直すための、本当に実効性のある政策とは
コロナ禍における日本経済の問題を根本から探っていくと、それは国内における「モノの流れと人の流れの沈滞」、いわば経済の「動脈硬化」によって起こっている。
経済を再び活性化することを考えたとき、他の産業と比べても経済波及効果が高く、即効性のあるのは「観光産業」だ。
そして、インバウンドと比べても圧倒的に効果が高いのが、「日本人による国内旅行での消費」なのである。
とはいえ、そのやり方と時期こそが重要だ。
たとえば「GoTo」キャンペーンのような大型補助を打てば、その瞬間だけいくらか経済は活発化するだろう。
しかし、補助金が底をついてしまえば、後に残るものは少ない。
本来、政策的に行われる補助は、「補助が終わった後にも経済効果が持続・拡大することが見込まれる投資」に対して行われるものであるのだ。
今、傷ついた経済を立て直すための実効性のある政策が「高速道路の定額化」である。
国内の最重要インフラの一つである高速道路のあり方は、先進各国と比べても極めてゆがんでおり、それが大都市圏と地方、あるいは地域間の格差を広げてきた元凶なのだ。
日本人は「遠くへ行くほど料金が高くなる」高速道路の距離制料金制度に慣らされ、それがおかしいとも気づかなくなっている。
日本の動脈に血を通わすこと、つまり日本全国に張り巡らされた高速道路の使い勝手を今より遥かによくすることが、なぜ経済を活性化するのか。
本書では、その理由を詳細に示したい。
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Posted by ブクログ
地域格差をテーマにした本はいろいろある。しかし、今回の本は一味違う。それは、高速道路の値段に着目した点だ。
高速道路を走行する距離が長くなればなるほど、料金が上がる。
コロナ禍で、海外からの観光客が期待できない現状を見ると、国内で観光客を増やす必要がある。高速道路の料金が定額制になれば、車で旅行する人が増える。
知らなかったが、国土交通省は、日本の主な高速道路では「Japan Expressway Pass」というサービスを海外からの旅行客は利用できる。定額料金の乗り放題で利用できるサービスだ。
海外の例としてイギリスとドイツを挙げている。両国とも乗用車に関しては基本的に無料だ。
国内旅行のボトルネックに関して、高速料金だと著者は指摘している。高速料金が原因で、自家用車を使って観光する人が増えない。
日本交通公社「旅行年報2019」のデータを取り上げている。日本人が行ってみたい旅行として、第1位は温泉で、同じく1位は自然観光だ。
温泉地のうち、3155ヵ所(国交省2016年公表値)もの宿泊施設がある温泉地で、鉄道の駅が近くにあるのは、熱海・別府・下呂などに限られる。
高速料金の定額化を地域格差解消の手段にするという発想は浮かんでこなかったので、新鮮だな。
果たして霞が関や永田町の偉い方々は、どう思っているのか。気になるところだ。