あらすじ
安アパートの一室で、老女が胸を撃たれ横たわっていた。捜査に出向いたキャレラは、老女が元有名ピアニストだったことを知る。やがて、老女が孫娘に大金を遺していたことが判明し、その金をめぐって熾烈な争奪戦が展開。アイソラの闇に沈む哀しくも皮肉に満ちた真実をキャレラは暴けるのか?
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
アメリカの作家エド・マクベインの長篇ミステリ作品『ノクターン 87分署シリーズ(原題:Nocturne)』を読みました。
『ロマンス 87分署シリーズ』に続き、エド・マクベインの作品です。
-----story-------------
安アパートの一室で、老女が胸を撃たれ横たわっていた。
捜査に出向いたキャレラは、老女が元有名ピアニストで、今は酒と猫を友とする孤独な日々を送っていたことを知る。
わずかな金を狙った強盗の犯行か、あるいは……? やがて、老女が孫娘に大金を遺していたことが判明し、その金をめぐって熾烈な争奪戦が展開する。
厳寒のアイソラに流れる哀しくも皮肉に満ちた死の旋律。
87分署の面々は、闇に沈む真実を暴けるのか?
-----------------------
1997年(平成9年)に刊行された、87分署シリーズの第48作です。
アパートの部屋で発見された老女の死体……だが、その老女はかつて絶大な名声と人気を誇ったピアニストだったのだ、、、
孫娘のために遺していた大金をめぐり、熾烈な争奪戦が繰りひろげられるが……アイソラの闇に沈む哀しくも皮肉に満ちた真実をキャレラは暴けるのか?
哀愁と混沌が交錯する、87分署シリーズらしい長篇でしたね……老女スヴェトラーナ・ディアロヴィッチの殺害事件を軸に、複数の事件が同時進行する87分署シリーズらしいモジュラー型の構成が魅力でしたね、、、
アイソラの安アパートで胸を撃たれて死んだスヴェトラーナは、かつて名声を誇ったピアニストであり、孫娘プリシラ・ステットソンに莫大な遺産を残していた……その遺産をめぐって周囲の人間がざわつき、欲望と思惑が入り乱れる展開は、街の暗がりをそのまま写し取ったような生々しさがありましたね。
一方で、売春婦ヨランド・マリー・マルクス、彼女と同居していたポン引きジャマル・ストーン、そして麻薬の売人リチャード・クーパの殺害事件が並行して描かれ、物語は常に複数の方向へと動き続けます……この街の雑音のような多層構造はシリーズの醍醐味ですが、本作では特に事件同士の距離感が近く、ページをめくるたびに別の捜査へ切り替わるリズムが心地良かったですね。
老女ディアロヴィッチの事件は、真相が明かされると一転して哀愁が漂い、彼女の過去と孤独が静かに浮かび上がります……遺産争いの喧騒とは対照的に、犯行の背景には人間の寂しさが滲んでいました、、、
対して、売春婦らの殺害事件は勧善懲悪的な決着で、こちらはスッと肩の力が抜けるような収束を迎え、街の闇を描きながらも、どこかけじめのある終わり方は、本シリーズのバランス感覚を改めて感じさせてくれる結末でしたね。
長年培われた87分署のレギュラー刑事たちの人間味あふれる掛け合いや、日常的な警察の捜査風景がリアルに描写されていることも健在……在庫は残り僅かとなりましたが、機会をみつけて87分署シリーズを順次読んでいこうと思います。