あらすじ
民主主義=選挙とは限らない。そして、選挙による「代表制民主主義」は、政策実現までの「時間的制約」、有権者と議員との「格差」といった欠点をもつ。21世紀に入って、世界中の市民が自国の政治家や政党を信頼しなくなってきている今、先進国の政治不信は過去最高の水準に達している。選挙によらない民主主義の形態を歴史的に振り返りつつ「くじ引き」の可能性を示す本書は、傷ついた民主主義をアップデートする希望の書である。
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Posted by ブクログ
民主主義=議会制民主主義という思考に陥りがちな中、民主主義の多様性について考えさせられた一冊だった。「政治家がダメだから投票率が低い!」というのは簡単だけれど、この本を読むとそうした非生産的な意見ではなく「このシステムはもっとこうした方がいい」と生産的な意見を持てるのも魅力の一つだと感じた。国家、地方だけでなく、日頃の日常にもこの本の思考の仕方は応用できるなと感じた。
Posted by ブクログ
機能不全を起こした代表制民主主義の補完を期待して、くじ引き民主主義の導入について検討している。代表制民主主義の行き詰まりにくじ引きがどう役立つのか、各国の具体例を示しながら利点と弱点を解説し、理解しやすく議論が展開されて読みやすい。
特に、興味深いと感じた点は、くじ引きで選ばれて議論を進める中で意見が変化する可能性を否定しないことだ。民主主義=選挙、投票して終わり。ではなく、課題を議論する過程を民主主義の強みとする考え方は新しい視点を得た。直接参加するくじ引き民主主義が、代表制民主主義を補完する役割になることがよくわかった。
Posted by ブクログ
機能不全に陥っている代表制民主主義を補正・修正し、民主主義にイノベーションを起こす方策として「くじ引き民主主義」を提唱。
タイトルを見た時は一見突飛なアイデアのようにも思ったが、「くじ引き民主主義」の歴史的、また理論的背景が理解でき、代表制民主主義を補うものとして、その可能性を感じた。
Posted by ブクログ
くじ引き民主主義は結論を出すことではなく、国民同士の対話や熟議の機会を提供することにこそ、その真価がある。
本来、選挙とロトクラシーでは選挙に分がある部分も多いが、投票率が低下し、容姿やイメージ先行で投票される今日では、ロトクラシーの方が有効なことがある。
問題は、ロトクラシーの責任を誰が負うかだ。
Posted by ブクログ
「くじ引き」で選ばれた人々が、話し合い、公的な意思決定を行う。近年、世界で広がりつつある「くじ引き民主主義」の動き、考え方を解説する書籍。
主権者が代表者たる政治家を選挙で選ぶ民主主義のことを「代表制民主主義」という。
代表制民主主義において政治への信頼は不可欠な要素だが、21世紀に入り、「議会を信頼しない」とする各国市民の割合は増加傾向にある。
今日、政治家や政党は信頼されていない。
しかしこれは、代表制民主主義を問題視するものであり、民主主義の理念そのものを否定するものではない。ほとんどの先進民主主義国において、「民主主義が大事だ」とする意見は多数を占めている。
「くじ引き民主主義」とは、地域の市民や住民、国民から無作為抽出で選ばれた代議員や委員が、特定の課題や目的について話し合い、その上で意思決定をする仕組みのことである。
2020年のOECD(経済協力開発機構)の報告書によると、くじ引き民主主義は、2010年頃から急速に広がっている。
くじ引き民主主義は、政治を刷新すべきだという人々の意識が高まって生じた点で、ポピュリズムと同じ発生源を持つ。
しかし、ポピュリズム政治がアウトサイダー的な政治家によるトップダウンでの刷新を目指す運動であるのに対し、くじ引き民主主義はボトムアップ的な民意形成で政治の刷新を試みるものである。
個人の能力に応じてモノや地位が与えられるべき、という考え方は、新自由主義などと相性がよい。しかし、人の能力は、資質だけでなく、受け継いだ様々な資本に大きく左右される。「機会の平等」さえもが不均等な現代において、この平等を人智でもって取り戻すのが、くじ引きの役割である。
Posted by ブクログ
政治のプロに任かせる代理制民主主義では左右とも支持団体の圧力により既存の既得権を打破できないのであれば素人から抽選で選んだ方がまだマシではないかと問います。政治参加がなかなか進まない中身近な地方の議会あたりから検討するのもいいかも。
Posted by ブクログ
社会の分断がトランプを生んだ
くじ引き民主主義ロトクラシー
第三極化 デジタル・レーニン主義
P23 議会を信頼してないとする市民の割合
P.25 日本のどの機関を信頼しているか
→代表になってない作動しない代表制民主主義
政治不信
・市民の批判意識の高まり
・政治のパフォーマンスの悪さ
・社会関係資本がなくなった社会への変化
アメリカの分断←多様性と党の戦略
しかしヨーロッパでも分極化・部族化
限界
①時間的
頻繁な選挙という短いサイクル→政策の射程が短期的になり、長期的な政策に取り組めない
②空間的
グローバル化という大きな空間での問題と小さな空間でおこる個人の実存的な問題
③非対称性
P.44 議員と市民の所属の非対称性
情報の非対称性 選挙時と当選後
選挙によらない政治参加
インターネットを活用した政治運動
M15@マドリード オキュパイ運動@ニューヨーク BLM運動@米 黄色いベスト運動@仏 平和安全法制反対デモ
代表制が機能するためには
・共同体を有効に統治
・人々が代表されていると感じている
・国民が代表制を機能させている
代表制の幻滅、民主主義への期待
日本国憲法の権威→権力→福祉のサイクルのフィクション化
ドイツ 計画細胞
アイスランド アンティルによる憲法会議 憲法を決めるためのマクロレベルのくじ引き
アイルランド 憲法改正
フランス 気候市民会議
ミニ・パブリックス
くじ引き民主主義
・政策について熟議による市民による決議・市民への諮問
・政策についての市民の意見表明
・特定の政策・法律についての市民の意見表明
・常設の諮問評議会
必要条件
・統計的代表性
・情報提供
・市民による討議
・公開性と匿名性
・目的
⇔熟議民主主義、参加民主主義
P.137 民主主義のカルテット
ベックの「再帰的近代化」
P.166 柄谷
設計
①アジェンダの設定(目的)
②くじ引き(抽出)
③情報の提供(input)
④熟議(検討)
⑤投票・意見提出(output)