あらすじ
「日本に経済格差はあるが、文化的には平等である」――戦後、こういった神話が語られてきたが、はたして本当に平等と言えるだろうか。平等だと言うことで、どういう現実が覆い隠されてきたのだろうか。
ピエール・ブルデューの『ディスタンクシオン』の問題意識と方法を共有しながら、社会調査や計量分析を基に、日本の文化資本の機能を読み解く。
芸術・音楽・読書などの趣味とジェンダー/ライフスタイルの関係、趣味を通じた友人のネットワーク形成、家庭の文化資本が学歴や地位の形成に及ぼす効果とその男女差などの分析を通して、日本における文化的オムニボア(文化的雑食性)という特性とジェンダーによる文化の差異を浮き彫りにする。そして、日本で文化の再生産が隠蔽されてきたメカニズムを解き明かす。
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Posted by ブクログ
趣味について大規模な統計を取るのは大変だけど、この本の研究はきちんとランダムなサンプルで統計処理をかけて、計量的に議論されていた。基本的なことだけど、感心した。90年代に国内でこのレベルで趣味に関する研究をやっていたのは先進的だったのではないか。
男性と女性で出身家庭の文化資本の影響が異なる点が興味深かった。男性では出身家庭の文化資本が高くてもオムニボアになり、成人してからの文化活動に直結しない。一方で、女性では出身家庭の文化資本が長じてからの趣味に反映され、また学歴や経済社会的地位に有意に影響する。
男性はサラリーマンとなり能力で戦いながら趣味の面では「出る杭」を避ける。女性は上品なお嬢さんとして良い配偶者を見つける。そのような伝統的な性別役割分担が背景にあるというのだが、その点は計量調査ではなくインタビュー調査で補強していた。
1990年代の調査内容が主なので、やや古い感は否めない。現代ならば女性にも、社会進出の効果でオムニボア化が検出されるのではないかと思う。