あらすじ
女子大生・三浦鈴女は、殺害された人気アイドル・神崎あやが中学時代の同級生であったことに衝撃を覚える。傷だらけの状態で発見されたあやには、刺青を消した痕があった。続いて、別の同級生が隅田川で水死体として発見される。彼女にもあやと同じ場所に、同じ刺青があった。2人の右肩にあった小さな薔薇の刺青。刺青同様に2人の同級生が消したかった過去とは何か。あやの事件の記事を依頼された柚木草平は、鈴女たちの中学時代に事件の発端があるとみて関連性を調べ始めた。事件の背後にある悲しい真実に二人は?《柚木草平シリーズ》番外編ともいうべき傑作。
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Posted by ブクログ
柚木草平が嫌いということではないんだけど、樋口有介は、やっぱり青春真っただ中な主人公が事件を探っていく話の方がいい。
それは、最初に読んだ著者の本が『ぼくとぼくらの夏』と『風少女』だからだろう(どっちを先に読んだのかはおぼえていない)。
これは主人公が大学4年の女の子ということで、そういう意味でも樋口有介っぽくって、すごく好みの話。
というかー。
柚木草平って、このポジションの方がおさまりがいいと思うんだけど?w
読み始めて、最初に感じたのが、え? 樋口有介って、こんな文学的に情景描写する人だったっけ!?ということ(^^;
たしかに、変に詩的なタイトルwとか、ムダにキザなへらず口とかw(いや。どっちも好きなんだけどさ)、書きたがる作家だとは思っていたけど。
でも、“細い地雨がフロントガラスをけぶらし、ワイパーの移動が隅田川の夜景を飴色に明滅させる……”みたいな描き方、記憶ないけどなーと、他の本を見てみたら、やっぱりないと。
え? これ、なんなの!?なんて思いながら読んでいたんだけど、特にはわからなかった。
ま、たんに他の柚木草平の話は、彼の語りで話が進むけど、これは三人称の文章だから、そういう風に書いたっていうことなのかな?
ていうかー、樋口有介。こっちの描き方の方がよくない?(^^ゞ
話は主に、主人公の三浦鈴女のパート、柚木草平のパートと進んでいくんだけど、それぞれ初めにその情景が描かれることで、二人の感情や思いがより鮮明になってくるっていうのかな?
この話のやりきれない結末もあって、描かれた風景が無機的なんだけど、だからこそ、それらは誰にも平等で、優しくて、哀しい。
そこが、すごくいい。
唯一難点を言えば、左近万作の物言いが柚木草平と妙にダブることw
いや。決してキザなへらず口をたたくわけではないんだけど、ぶっきらぼうな物言いがなぁー。
もうちょっとバリエーションがあってもいいんじゃない?(爆)
読み終わって、違和感を覚えたのが『刺青白書』というタイトル。
だって、これって、刺青白書な話でないよね?w
『刺青白書』ってタイトルを見た時、すごく樋口有介あるある的なストーリーをイメージしたんだけど、でも、これはそういう週刊誌的なセンセーショナルさが事件になっている話では全然ない。
むしろ、事件の根本にあるのは、抑えきれない虚栄心の暴走(迷走?)みたいなものがきっかけになって起こっていく地味な話なのだ。
地味だし、また、意外なところに配置されていた犯人も、実はこの手の話の定番の配置だったりするwんだけど、ミステリー小説に、すごいトリックも、驚くようなどんでん返しも、これっぽっちも期待していない自分みたいな読者からすると、そこがよかったりするのだ。
ていうか、樋口有介のファンって、そういう読み方をする読者の方が多いような気がするんだけどな。
『刺青白書』というタイトルは、無理に煽ることで売ろうとする最近の新書のタイトル(or帯)みたいで、すごくイヤ(爆)
違和感といえば、もう一つ。
三浦鈴女の最初のパートで、彼女が神保町でカラスアゲハが飛んでいるのを見る場面があるんだけど。
神保町でアオスジアゲハが飛んでいるのよく見かけたけど、カラスアゲハは1回も見たことないんだよなぁ~(^^ゞ