あらすじ
しっかり者の杏子と、勘の鋭いアルバイト・多絵が働くのは、駅ビルの六階にあるごくごく普通の書店・成風堂。近所に住む老人から渡された「いいよさんわん」という謎の探求書リストや、コミック『あさきゆめみし』を購入後失踪した母を捜しに来た女性に、配達したばかりの雑誌に挟まれていた盗撮写真・・・・・・。杏子と多絵のコンビが、成風堂を舞台にさまざまな謎に取り組んでいく。普通の書店にも謎はいっぱい溢れている!?元書店員ならではの鋭くもあたたかい目線で描かれた、初の本格書店ミステリ。〈成風堂シリーズ〉第一弾。
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Posted by ブクログ
うんうん、これいい!おもしろい!が読み終わった第一声。
書店を舞台にした日常ミステリで、そこかしこに好みの設定が散りばめられてました。
出版社名や作者名に実名が使われてたのにはほんのりびっくり。
物によっては仮名なのだけど、あんまりないですよねぇ。
見慣れた言葉がさらっと書かれているのはちょっといい。
Posted by ブクログ
本屋さんで働きたくなりますね。
『レジまで推理 本屋さんの名探偵』で書店謎解きに入門したので、そっちの方がパンチ効いてて、最後のどんでん返しもあって、個人的には好き。
ですが、これは好みの話で
本作も引けを取らずおもしろいです!!
本屋さんから、こんなにも話がふくらむのがすごいです。
日常の非日常。心が躍りますね!!
続編も読もうとおもいます!!
Posted by ブクログ
木下杏子
駅ビルの六階にある本屋、成風堂の店員。二十四歳。短大時代のバイトも本屋、就職も本屋。
西巻多絵
成風堂のバイト店員。杏子の三つ年下。法学部に通う女子大生。
吉川博美
成風堂のフリーター。短大卒業後、就職した会社が倒産した。
清水
寝たきりになった爺さん。読書家。
福沢
成風堂の店員。五十代半ば。会社をリストラされ、二年前に成風堂に入ってきた。
西岡
清水が希望する本を依頼に来た。塾講師。
喜多川理沙
成風堂をよく利用していた母を探している。大手薬品会社の課長。四十歳。
沢松ふみ
喜多川の母。
沢松貴史
ふみの息子。二十年前に事故で亡くなった。西が丘高校。
樫村
白髪の気のいい大学教授。元西が丘高校の国語の先生。
小林
成風堂の店長。事なかれ主義者。
内藤
成風堂の社員。二十代後半。
口数は少ないが、何かと気配りが利く。
上田美香子
貴史が想っていた古典の先生。
三日月館のマスター
商店街の中にある喫茶店。
バーバー・ハーレム
ハンサムな理容師が多い床屋。正式名称はバーバー・K。
ノエル
美容院。常連客がパーマをかけている最中に、月刊誌の中からその常連客を盗撮した写真が出てきた。
キング
バーバー・ハーレムのオーナー。
竹中美容室
オーナーは白髪まじりの初老の男性。
田中
バーバー・Kの元スタッフ。
田中
ノエルで盗撮された写真が雑誌に挟まれていた。
葛西
成風堂の常連客。黒いベレー帽を粋にかぶった白髪の老人。
河田菜穂子
先日まで中央病院に入院していた。
島村
地図ガイドの版元。
角倉夕紀
成風堂に新しく入ったバイトの女の子。元気のいい大学生。
渡辺紗弥加
夕紀と同じ学年の学生。
佐野佳彦
夕紀の一学年上の学生。
北島
常連客。これぞオタク男。
青木ユタカ
トロピカルの作者。
Posted by ブクログ
本屋さんを舞台とした「日常の謎」系ミステリ。まず,主人公の杏子と探偵役の多絵のキャラがその立ち位置も含め,きっちりかき分けられており,しかも,かなり魅力的な存在に描かれている。「パンダはささやく」以外は,ミステリは弱いが,いずれも読後感がいいさわやかな話がそろっており,通勤のおともや寝る前の読書に最適。誰にでも勧められる良作。ミステリとして弱いところが好みではないので,★3かな。
個別の作品の所感は以下のとおり
○ パンダはささやく
購入してほしい本を暗号で伝えたおじいさんの話。実は,おじいさんは資産家で,「姪」という触れ込みで押し入ってきた女に命を狙われており,暗号のカタチで危機を伝えていた。出版社が「パンダ」からYondaのキャラクターを使っていた新潮社。「あのじゅうさにーち」は,新潮社の「あ」の13の21で赤川次郎の「透明な檻」,「いいよんさんわん」は「い」の43の1で井上夢人の「ダレカガナカニイル」,「ああさぶろうに」は,「あ」の36の2で綾辻行人の「殺人鬼」。「やににまる」は,「や」の2の20で,山本周五郎の「ひとごろし」。自分が監禁され,命を狙われているというメッセージだった。暗号のトリックこそ,マニアックすぎるきらいはあるが,暗号で使われた本のチョイス,意外な真相など,デキは傑作といっていいと思う。
○ 標野にて 君が袖振る
「あさきゆめみし」という漫画の存在を知り,失踪した沢松という女性の行方を捜す話。真相は,交通事故で死んだ沢松の息子が,高校生だった頃に教師と付き合っており,その子供がいたので,ストーカーみたいになっていたというもの。この話は,ややリアリティに欠けると思うが,意外な展開ではある。
○ 配達あかずきん
かなりドジな存在である吉川博美というアルバイトの女性が登場。美容院に配達した雑誌から,美容院のお客の盗撮写真が挟まっており,美容院と客のトラブルが発生したという話。真相は,吉川が配達していたほかの床屋で前にバイトしたいた男が犯人。トラブルになった美容院の客の子どもが犯人だった。吉川博美のキャラクターが微笑ましく,読後感はなかなかよいが,ミステリとしては平凡なデキ。
○ 六冊目のメッセージ
入院している人に勧めた本がいずれも適切だった書店員を探す話。書店員が進めた本は,「宙の旅」,「散策ひと里の花」,「ダヤンのスケッチ教室」,「民子」,「夏への扉」。これらの本を勧めることができるような読書家の男性店員はいない。いったい誰が?という謎。真相は,書店の版元の社員だった。本を勧められた女性と,店員の間に恋愛感情が発生しているような雰囲気を残して終わる。読後感はいいが,ミステリとしては平凡。謎というほどのものではない。
○ ディスプレイ・リプレイ
杏子の勤める本屋が,人気漫画「トロピカル」のディスプレイ・コンテストに参加する話。バイトの角倉夕紀とその大学の友達が見事なディスプレイをするが,閉店後,誰かが店に忍び込み,黒いスプレーでディスプレイを台無しにしたという話。犯人はだれか?真相は,トロピカルの盗作騒ぎに乗じて悪質ないたずらがされたと思い,ディスプレイを手伝っていた夕紀の友達である紗弥加が犯人だったというもの。これもミステリとしては弱いが,読後感は悪くない。