あらすじ
古希を過ぎ、私の技は今までで最も使えるようになり、さらに進展し続けている。
本書では、私自身のこれまでの生き方や武術研究者としての気付き、
それをいかに日々の生活の中で考え、そこで気付いたことで日常の場面に役立てるかといったことを書いています。
本書が、生きているということの不思議さや精妙さを味わい、
自分自身の内側を掘って、人が生きているということを深く見つめ直す一つのきっかけになれば、
著者としてこの上ない喜びです。
(はじめに より)
■内容
はじめに
一章 昨日の自分よりも、今日の自分のほうが出来る
二章 情けない老人になっていないか
三章 身体の感覚を取り戻す
四章 武術を生活に生かす
五章 人生を助けてくれる「技」
六章 死ぬその時まで納得して生きるために
おわりに
■著者紹介
甲野 善紀(こうの・よしのり)
1949年東京生まれ。武術研究者。
1978年に「松聲館道場」を設立。以来、独自に剣術、体術、杖術などの研究に入る。
近年、その技と術理がスポーツや楽器演奏、介護、ロボット工学や教育などの分野からも関心を持たれている。
最近は、日本を代表する柔道選手などとも、手を合わせて指導をしている。
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Posted by ブクログ
64歳でババナ→フロリダ横断を達成したダイアナ・ナイアド著の「対岸へ」を読んだので味わい深かった。
70歳になった甲野善紀さんが思うのは「最近の老人は」と思うらしい。彼が同年代以上で会いに行きたいのは野口裕之、養老先生、桜井章一、宮崎駿くらいらしい。
自分達には出来ない大きな問題を真剣に考え、いかに下の世代に託すか、人間が地球で自然に「生きる」とは何なのかと真剣に考えれば生きがいのない情けない老人にはなり得ないと言う。
彼が20代で悟った事「人間の運命は完璧に決まっていて同時に自由である」この言葉は4年間突然の癌罹患に苦しんだ筆者にとっては重い。
甲野善紀先生は70歳で「影観法」という我ならざる我という裏の意識を使った技が使えるようになったそうだ。凄い事を言うなぁと思ったのはイチローが50まで現役を続けると言ってたのに45で引退する事になったのは「どこかで自分は大したものだと満足した」部分があったからだと看破する。
甲野先生はアンチ筋トレ派である。筋トレは部分で身体を疲れやすくし筋肥大を目指す。弛緩から緊張へとグラデーションを速やかに全身を使うのが良い身体の使い方だがその使い方が筋トレでは身に付かない。必然性のない動きは身につかないとされている。
筋力、聴力、視力は衰える。だが身体の感覚、全体性、脳は多分一生成長する。この本を読んで残りの人生を身体の研究に捧げる事の決心がついた気がする。