【感想・ネタバレ】刑務所の精神科医――治療と刑罰のあいだで考えたことのレビュー

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Posted by ブクログ

凶悪犯罪についてのドキュメンタリー動画をYouTubeでよく見たりするので、個人的にはおもしろかった。
治療と刑罰を同時に実行するのは難しい問題なんだなと思ったし、人間を育てるのも大変だなと思った。

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2022年08月21日

Posted by ブクログ

矯正施設の受刑者や非行少年たちの中には、一般社会よりも高い割合で、精神障害の方や、学習面や身体面に困難さを抱えて社会に適応できずに道を踏み外してしまった方がいるとされる。

本書は、そうした矯正施設で精神科医師として20年以上勤務した著者のエッセイである。著者の野村先生は、哲学、臨床心理学を経て、30代後半で医学の道に進んだという。この“回り道”が、野村先生の医師としての懐を深いものにしていることが、本書を読むと伝わってくる。

野村先生は、このトレーニングをすればいい、この治療でどうにかなる、ということを軽々しく言わない。むしろ何度も医療の限界を述べ、それでも試行錯誤して、根気強く、支持的に対応をしようとする。落ち着いた口調で、殊更に煽ることなく、淡々と語られる塀の中の精神医療は、非常に心を揺さぶられる。

先日も刑務所の受刑者には再犯者が多く、高齢化も深刻な状況であると報道されていた。このため国は矯正施設にリハ職である作業療法士を配置したり、触法者の地域定着支援をしたりしているが、なかなか思うようにはいっていない。自助ができず、互助、共助の力も落ちている今、矯正施設が彼らのセーフティネットとなっている。

堀の中の人たちにも人生がある。本人、家族、被害者、それぞれの人生が入り乱れ、交わる。もしかしたら、この人生は自分の人生だったかもしれない。そう思い、読み通した。

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2022年06月11日

Posted by ブクログ

社会から隔離された場所で過ごした後、もう一度社会で暮らさなければならない。元々、居場所が無いような人達が、さらに追い詰められるようなら構造になってしまっているのだろうか。
また、精神病患者が現れたのはここ最近の出来事では無いというのは、興味深かった。確かに、知能などが劣っている人や、落ち着きがない人は昔からいたはずであり、彼らはどのようにして生きたのだろうか。気難しい人というイメージは持たれていただろうが、それでも、現代よりは気にかける人が多分、居たのだろうな。
精神病患者と名付ける事で、より患者は増えただろうが、一方で、彼らを気にかける人は減ったのだろう。このドアの向こうに住んでいる人は、どんな方だろうかと、私自身は考えることすらしない。こういう部分がある事を思うと、繋がりって何だろうと思ってしまう。

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2024年02月06日

Posted by ブクログ

刑務所で臨床医として勤めた経験のある筆者が体感し、考えた罪と罰、そして精神医療の在り方について書かれた一冊。
この本には、正解も不正解もなく答えはなにもない。
結論もないし、筆者の一貫した意志や考えがあるわけでもない。

だけど、平坦や冷淡ではなく
自己の主観に縛られることなくフラットな視点で事実が綴られている感覚がある。

少年犯罪からの更生の余地
少年犯罪を取り巻く環境
高齢者、特に認知症を患う高齢受刑者の取り扱い
フィンランドの刑務所
「刑務所」というものへの根本的な価値観

決してどれも答えがない。
けれど、この答えのない問を考えることに価値がある。
そう感じさせてくれる一冊。

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2022年05月29日

Posted by ブクログ

超高齢社会、認知症患者が増加するにあたりどのように罰するのかが課題なのだと思う。

神経症などを発症して法で罰せないときに、被害者はやるせないのではないだろうか。加害者が刑務所から出てきたところで、同じことが繰り返される。

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2022年01月31日

Posted by ブクログ

少年院や刑務所で精神科医として被収容者の治療にあたってきた著者のエッセイ。発達障害、認知症、薬物依存、統合失調症、双極性障害などの精神疾患を抱えた被収容者は少なくない。医療と司法の間で、彼らをどのように治療して行ったらいいのか。現在問題視されている、児童虐待や薬物依存での犯罪、高齢犯罪者の増加などについても書かれている。いろいろなことが問題提起されていて、頭の中が飽和状態なので概略のみ。

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2021年10月11日

Posted by ブクログ

知人から紹介を受けて読んだ。抑揚が効いた文章であり、慎重に記述されたのだと思う。精神科医のエッセイは他にも読んだことがあるが、その方と比べると伸びやかさを感じない。著者は既に亡くなられたと聞いたが、いろいろなことを思い、それをカタルシスなく、逝かれたのではないだろうか。

書評サイトに熱いコメントを拝見した。このエッセイに書かれていないことも含めて、著者の仕事を知る方によるものだと思う。ご冥福をお祈りする。

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2022年09月07日

Posted by ブクログ

SL 2022.3.12-2022.3.14
落ち着いた筆致で、冷静な視点で描かれている。
加害者治療なので被害者支援に言及していないことにも自覚的な点が高評価。
少年少女たちの過酷な家庭環境には胸が痛む。自分には想像できないような現実がこんなにもあるということ。

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2022年03月14日

Posted by ブクログ

“「家族はこうあるべきだ」という規範を考えようとすることは、どうしてもそれ以外の家族のあり方を批判する論調に傾きがちである。しかし、家族のあり方がますます多様化していくことはおそらく止められないだろうし、止めようとする必要もないことだろう。”(p.55)

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2021年12月05日

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