「市民的抵抗-非暴力が社会を変える」
著者:エリカ・チェノウス
一般的印象とは違い、非暴力運動の成功率は高く、非暴力抵抗のキャンペーンは半分以上が成功したことに対し、暴力抵抗のキャンペーンの成功率は25%しかなかった。それを証明する文献です。
非暴力運動=市民的抵抗で、ストライキ、デモ、ボイコット、座り込み、非協力等。風刺や落書きも非暴力運動に入る。
①成功率は運動の政治力に左右される。あらゆる所得層、職業、宗教に支持され、多種多様な団体と連携することが重要である。海外の同様の団体や人権支援国家とも連携することももちろん重要である。
②更には敵=権力側の人員にも協力者、味方に取り込む。
③非暴力運動は大勢に市民が参加しやすく、暴力運動は大勢に市民に反感や不信感を持たれて、結局味方を減らしてしまう。非暴力で穏健だからこそ信頼しやすく、信頼できるのに、暴力的になれば裏切られたと感じてしまうため。
④SNSはお知らせ機能(何月何日にどこでデモをします、等)としては非常に有用だが、これだけに頼っていては脆弱だ。実際に人々が動かなければならない。「いいね」をクリックして満足すれば、そこで終わってしまう。
⑤絶頂期で全国民の3.5%が革命運動に参加していると、失敗しない。
⑥ナチス占領下のノルウェーやデンマークではナチスの車両の燃料タンクに砂糖を流し込む(タンク内で砂糖が溶けてガソリンが使えなくなる)、抵抗方法を地下出版で広める、情報を盗んで抵抗グループに教える、限定的ストライキや自宅待機、物流の停滞(デンマークでナチスが使おうとした列車の車掌が出勤しなかった)ユダヤ人を自宅で匿い、スゥエーデンに海路で運んだ(7,000人のユダヤ人が助かった)。
⑦市民団体が地元住民から尊敬され、協力を受けていると弾圧を受けても生き抜ける。それには非暴力運動によってしか市民団体から敬意を受けることができない。
⑧2000年代から市民的抵抗件数は下がっている。大規模な運動が減った。ゼネラルストライキや大規模市民的不服従ではなく、大衆デモに頼りすぎている傾向がある。また、デジタルプラットフォームにも頼りすぎる傾向がある。
⑨暴力的になる周辺暴力に対して、非暴力運動派は寛容になっている傾向がある。
⑩体制派のスマートな抑圧方法が洗練されてきている。それらしい嘘を言う、報道を抑え込む、見かけ上法律を守って法律通りに権力を強奪して国民を抑圧している様に見せかける。
⑪それでも市民的抵抗はスマートな抑圧の対抗手段を構築しつつある。
⑫非暴力運動は地味な方法で、暴力運動の方が成功すると未だに思われがちだ。だからなかなか浸透しにくい面があるが、それでも地道に運動することで、目的を達成し、社会をより良くすることができる。
先日ドナルド・トランプが自分の誕生日祝いのために無理やり陸軍にパレードをやらせた6月14日に、アメリカをはじめ全世界でNo Kingsデモがあり、アメリカでは400万人-600万人が参加した。間を取って500万人が参加したとすると、このデモ1件で全人口の1.47%が参加した。1%を超える事すら稀なのに、この参加率は驚異的であり素晴らしい市民的抵抗だ。それだけトランプが無能で邪悪な独裁者であり、大統領たる資格はない、という意味である。共和党は既に補欠選挙で勢力が均衡している自治体で敗北し、6:4で共和党が優勢な地域では5:5にまで支持率が落ちてかろうじて勝利しているほど、支持率が落ちている。今卑劣で汚いICEが移民を誘拐、拘束し、カナダ人の移民が収容所で殺された。今後も更に犯罪を重ねていく。それに比例して市民的帝国は増加し、反比例して支持率は落ちる。
我々はこの存在すべきではない独裁者に勝たなければならない。
ところで①で海外の同様の団体や人権支援国家とも連携することももちろん重要である、と書きましたが、私達も同じく、海外の非人道的行為に対して(英語や現地語がひつようですが)反対意見を表明することは小なりとは言え効果があり、それが積み重なれば大きな効果と発展します。小さな効果がなければ大きな効果は生まれないですね。