日野啓三のレビュー一覧

  • 夢の島

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    人生を中庸に生きてきた中年が、台場の埋立地、そこで出会う不思議な少女に惹かれていく話。
    ディストピアと咽せ返る様な自然の鮮やかなコントラストが気持ち良い。白昼夢のような内容に、熱の籠った作者の筆が合わさり、特異性を感じた。短いボリュームに力強いインパクトを残す印象深い一作。

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    2022年10月30日
  • 日野啓三/開高健

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    よかった。ベトナム戦争を共通のテーマとしての
    二人の作家。(日野啓三と開高健)
    世界の向こう側をイメージした、またベトナム戦争の
    頽廃的なイメージから人間の闇を描く内容。
    ベトコンの少年を銃殺するシーンの描写を二人とも
    詳細に描いていて、それが繰り広げられる広場の
    イメージがなんとなくクリアーな映像はイメージ
    されて、少し気持ち悪くなる感覚です。
    日野啓三氏の
    『広場』・『ふしぎな球』・『空白のある白い町』
    『ベトコンとは何か』
    開高健氏の『輝ける闇』が中でも秀逸です。

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    2016年01月23日
  • 夢の島

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    大好きなんですよね〜大沢在昌。ちょっと色を変えて。


    24年間、連絡のなかった父の「遺産」を巡る争いに巻き込まれる、フリーのカメラマンの主人公。遺産とは何なのか、夢の島とは何なのか…糸を手繰り寄せながら、敵なのか味方なのかもわからない人間の中でついに夢の島までたどり着く、という話。


    ひとつも飽きさせないところがいいです。実際、こんなに行動力あるやついねーよ!と思うけどそこは笑。あっさり正体バラしたり、主人公の憶測どおりに事が進んだり、ご都合主義な感じはあるけどとにかくキャラが魅力的で引き込まれる!

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    2011年11月25日
  • 天窓のあるガレージ

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    短編集。どの作品も人智を超えるものの存在を背後に感じる、神秘的なお話。
    巻末の年譜も目録も著者自らが編んでおり、自分の作品を冷静に俯瞰して見ていたいという感じが伝わってきた。そこらへんが、神秘的ではあっても独りよがりではない、この著者の作品の良さにつながっているのかなと思った。

    ” 必要とされたり必要としたりすることのないもの、つまり直接には関係ないものが、関係ないままに確かにあるのだ。”
    「夕焼けの黒い鳥」p.206

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    2024年04月08日
  • 天窓のあるガレージ

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    コンクリートジャングル、下らない人間関係、etc...様々なものから解放され“覚醒”する。
    さっぱりした好みのボリュームだが後味も重く、良い作品集だった。

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    2022年10月23日
  • 日野啓三/開高健

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    「向う側」日野啓三

    2004年に1度、ベトナム・ホーチミンに旅行したことがある。そのときベトコン体験ツアーという日帰りのバスに乗車して郊外のベトコン基地に向かった。既にベトナムでは高度経済成長は始まっていたが田舎は多く、バスは長い幹線道路を通り過ぎると、一時間ほどで長閑な田んぼ風景になり、やがて平地のジャングルに入っていった。そこでは土地の至るところに、小さなベトナム人だけが入れるトンネル入口の「穴」があり、蟻 の巣のような抵抗基地が広がっていた。この短編では、こちら側(米国・南ベトナム)の街(サイゴン現在はホーチミン市)から、おそらくあの幹線道路の雑多な街のひとつに降りて、向う側に行く迄が

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    2018年11月20日
  • 砂丘が動くように

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    “砂粒一つ一つがUFO”“キノコで縁取られたミステリーサークル”etc...散りばめられたモチーフは非常に面白いが、あまりにも内容と物語が感覚的で、自分はうまく没入出来なかった。

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    2022年11月13日
  • あの夕陽 牧師館 日野啓三短篇小説集

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    「向こう側」
    ベトナム戦争のさなか
    報道特派員として現地に入っていた日本人が
    「向こう側に行く」と言い残して奥地へと消えてしまった
    消えた男の同僚である主人公は
    行方を追ってバスに乗る
    彼らはいったい「向こう側」に何を期待してるのだろう
    安息の地か、冒険のスリルか
    あるいは「ありのままの現実」かもしれない

    「あの夕日」
    特派員として韓国に赴いた主人公は、現地の女と恋におち
    妻と別れることを決意して日本に帰国した
    韓国の女は、日本の女よりもずっと意志的で
    自由な明るさがあふれているように見えたのだ
    ところがそれを、なかなか妻に切り出せず
    女の写真やフィルムを見せたりして、遠回しにアピールする

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    2021年05月01日
  • 砂丘が動くように

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    同じ作者の「夢の島」という小説は
    エコロジーと表裏一体の終末論にむしろ期待を寄せるといった
    そんな風にもとれる結末を見せたのであったが
    この「砂丘が動くように」では
    さらに進んで人類の革新にまで思いを馳せている

    世界というのは盆栽のようなものであり
    人間はそこに巣くうアリジゴク、または
    それに取って食われる蟻のような存在であるが
    その盆栽を世話するのが新人類である
    それは自然と文明の調和によって一つの
    美的世界を実現させるイノセントな人類であり
    そのイノセントさ故に彼らは
    自然界に対して恐怖のイメージを投影することなく向かい合ってゆける

    ただ
    それって単に若いうちから枯れてるだけじゃないの

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    2012年03月03日
  • 夢の島

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    「戦争のあと一切の神がかり的なこと、迷信的なことはもちろん
    まともに宗教的なものにさえ反発を覚えてきた」

    という主人公(建設業者)が、拡大を続ける80年代の東京を偶像視するという小説

    これはデカダンスか、それとも耽美主義か
    あるいは、単に自覚のない、無責任なだけのナルシシズムか

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    2010年11月01日