日野啓三のレビュー一覧

  • 夢の島

    人生を中庸に生きてきた中年が、台場の埋立地、そこで出会う不思議な少女に惹かれていく話。
    ディストピアと咽せ返る様な自然の鮮やかなコントラストが気持ち良い。白昼夢のような内容に、熱の籠った作者の筆が合わさり、特異性を感じた。短いボリュームに力強いインパクトを残す印象深い一作。
  • 日野啓三/開高健
    よかった。ベトナム戦争を共通のテーマとしての
    二人の作家。(日野啓三と開高健)
    世界の向こう側をイメージした、またベトナム戦争の
    頽廃的なイメージから人間の闇を描く内容。
    ベトコンの少年を銃殺するシーンの描写を二人とも
    詳細に描いていて、それが繰り広げられる広場の
    イメージがなんとなくクリアーな映像...続きを読む
  • 夢の島
    大好きなんですよね〜大沢在昌。ちょっと色を変えて。


    24年間、連絡のなかった父の「遺産」を巡る争いに巻き込まれる、フリーのカメラマンの主人公。遺産とは何なのか、夢の島とは何なのか…糸を手繰り寄せながら、敵なのか味方なのかもわからない人間の中でついに夢の島までたどり着く、という話。


    ひとつも飽...続きを読む
  • 天窓のあるガレージ
    短編集。どの作品も人智を超えるものの存在を背後に感じる、神秘的なお話。
    巻末の年譜も目録も著者自らが編んでおり、自分の作品を冷静に俯瞰して見ていたいという感じが伝わってきた。そこらへんが、神秘的ではあっても独りよがりではない、この著者の作品の良さにつながっているのかなと思った。

    ” 必要とされたり...続きを読む
  • 天窓のあるガレージ

    コンクリートジャングル、下らない人間関係、etc...様々なものから解放され“覚醒”する。
    さっぱりした好みのボリュームだが後味も重く、良い作品集だった。
  • P+D BOOKS 光
    初読み作家さん。月面基地での作業中に事故に遭った男は記憶を喪って帰還した。一体彼の身に何があったのか。ある時彼は入院していた精神病院を抜け出してあてどもなく東京を放浪する。喪った自分を探すように。様々な出会いを経て彼が見つけた光と闇――近未来を舞台に人が抱える陰陽を見事に描き出した傑作。どんなに文明...続きを読む
  • 日野啓三/開高健
    「向う側」日野啓三

    2004年に1度、ベトナム・ホーチミンに旅行したことがある。そのときベトコン体験ツアーという日帰りのバスに乗車して郊外のベトコン基地に向かった。既にベトナムでは高度経済成長は始まっていたが田舎は多く、バスは長い幹線道路を通り過ぎると、一時間ほどで長閑な田んぼ風景になり、やがて平...続きを読む
  • 砂丘が動くように

    “砂粒一つ一つがUFO”“キノコで縁取られたミステリーサークル”etc...散りばめられたモチーフは非常に面白いが、あまりにも内容と物語が感覚的で、自分はうまく没入出来なかった。
  • あの夕陽 牧師館 日野啓三短篇小説集
    「向こう側」
    ベトナム戦争のさなか
    報道特派員として現地に入っていた日本人が
    「向こう側に行く」と言い残して奥地へと消えてしまった
    消えた男の同僚である主人公は
    行方を追ってバスに乗る
    彼らはいったい「向こう側」に何を期待してるのだろう
    安息の地か、冒険のスリルか
    あるいは「ありのままの現実」かもし...続きを読む
  • 砂丘が動くように
    同じ作者の「夢の島」という小説は
    エコロジーと表裏一体の終末論にむしろ期待を寄せるといった
    そんな風にもとれる結末を見せたのであったが
    この「砂丘が動くように」では
    さらに進んで人類の革新にまで思いを馳せている

    世界というのは盆栽のようなものであり
    人間はそこに巣くうアリジゴク、または
    それに取っ...続きを読む
  • 夢の島
    「戦争のあと一切の神がかり的なこと、迷信的なことはもちろん
    まともに宗教的なものにさえ反発を覚えてきた」

    という主人公(建設業者)が、拡大を続ける80年代の東京を偶像視するという小説

    これはデカダンスか、それとも耽美主義か
    あるいは、単に自覚のない、無責任なだけのナルシシズムか