日野啓三のレビュー一覧
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「向う側」日野啓三
2004年に1度、ベトナム・ホーチミンに旅行したことがある。そのときベトコン体験ツアーという日帰りのバスに乗車して郊外のベトコン基地に向かった。既にベトナムでは高度経済成長は始まっていたが田舎は多く、バスは長い幹線道路を通り過ぎると、一時間ほどで長閑な田んぼ風景になり、やがて平地のジャングルに入っていった。そこでは土地の至るところに、小さなベトナム人だけが入れるトンネル入口の「穴」があり、蟻 の巣のような抵抗基地が広がっていた。この短編では、こちら側(米国・南ベトナム)の街(サイゴン現在はホーチミン市)から、おそらくあの幹線道路の雑多な街のひとつに降りて、向う側に行く迄が -
Posted by ブクログ
「向こう側」
ベトナム戦争のさなか
報道特派員として現地に入っていた日本人が
「向こう側に行く」と言い残して奥地へと消えてしまった
消えた男の同僚である主人公は
行方を追ってバスに乗る
彼らはいったい「向こう側」に何を期待してるのだろう
安息の地か、冒険のスリルか
あるいは「ありのままの現実」かもしれない
「あの夕日」
特派員として韓国に赴いた主人公は、現地の女と恋におち
妻と別れることを決意して日本に帰国した
韓国の女は、日本の女よりもずっと意志的で
自由な明るさがあふれているように見えたのだ
ところがそれを、なかなか妻に切り出せず
女の写真やフィルムを見せたりして、遠回しにアピールする
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Posted by ブクログ
同じ作者の「夢の島」という小説は
エコロジーと表裏一体の終末論にむしろ期待を寄せるといった
そんな風にもとれる結末を見せたのであったが
この「砂丘が動くように」では
さらに進んで人類の革新にまで思いを馳せている
世界というのは盆栽のようなものであり
人間はそこに巣くうアリジゴク、または
それに取って食われる蟻のような存在であるが
その盆栽を世話するのが新人類である
それは自然と文明の調和によって一つの
美的世界を実現させるイノセントな人類であり
そのイノセントさ故に彼らは
自然界に対して恐怖のイメージを投影することなく向かい合ってゆける
ただ
それって単に若いうちから枯れてるだけじゃないの