瀧晴巳のレビュー一覧
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上橋菜穂子さんがどのように育ち、何に触れて何を感じたかを知ることが出来てとても興味深かったです。
特に目からウロコだったのが、物語を読むことで色んな体験や知識を手に入れることができるが自分自身ではなんのリスクも負わずに受け取れるのはずるいという考え方です。私は、読書をすることで登場人物が体験したことや、感じたこと、様々な知識を得ることができることに有難みを感じていましたがそのような考え方を今まで感じずに与えられていたんだと思いました。だからこそ、物語の中で体験してきたことの大切な部分を、生身の自分で体験してみようという、上橋さんの考えが素敵だと感じました。ぜひ、私も臆病な自分がいたら「靴ふきマットの上でもそもそしているな!」と自分を鼓舞して1歩踏み出してみたいと思いました。この本に出会えた事に感謝するだけではなく、私も自分の物語を生きるために、前に進むために頑張ります。
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作家・上橋菜穂子の作家になるまでの生い立ちや、作品創作についてのインタビューをまとめた本。なぜ本人によるエッセイという形でなく他人の手を介する形にするのだろうという疑問がありましたが、あとがきに相当する部分を読むと、インタビューという形で他人が介することで引き出されるものもあり、自分のことを自分で語る以上のものが出てくるのだということがわかり、なるほどと目から鱗の落ちる思いでした。
上橋菜穂子の作品には「こちら側」と「あちら側」の境界線が舞台となることが多く、またその両方を行き来する人が出てくることも多いです。それが魅力となっているのですが、これを読むとなるほどここからあの物語たちが生まれてくるのかと思わされます。
作家になりたくて作家になるにはどうすればいいのかを考え進んでいく。まっすぐな想いはまっすぐな眼差しとなり突き進む指針となる。その指針は今この時に物語が好きだという子らや、作家になりたいと思う子らの指針ともなるのでしょう。 -
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上橋菜穂子さんが小説を書くようになるまでのインタビューをまとめた1冊。
物語への思いや今までの読書体験、上橋菜穂子さんが今に至るまでの物語。
自然や、生き物、人へ向ける眼差しはこのようにして培われ、物語に生きてきていたのだと感慨深いものがある。
ファンタジーは今まで手に取ることのほとんどなかったが、上橋さんの著書は一通り読んでいる。ファンタジーとはいえすぐそこに実際にありそうに感じられる人々の息づかい、生活の描写、その筆力に引きずり込まれる。そしてその根底にある想いはこの本の中にあるように「境界線を越えて交わろうとすること」なのかもしれない。
○ひとりの人間が考える事と、群れとしての人類が起こすことは、必ずしも一致しない。戦争や公害、あるいは原発の問題を例にひくまでもなく、人類の歴史は、そうしたことを繰り返してきたのです。
○誰もが自分の命の最前線に立っているのなら、それぞれに境界線を揺らす力、境界線の向こう側に越えてゆく力を持っているんじゃないか。相手を否定したり、恐れたり、あるいは自分の領分を守るために境界線を強くするのではなく、境界線を越えて交わっていこうとする気持ちを持てたら、どんなにいいだろう。
○経験は大切です。でも、べつに、人と逢う事をたくさんしなければいけないというわけでなくて、むしろ、人と同じ事をしていながら、そこには人と違うものを感じ取る事の方が大切だと思います。
講談社 2013年 10月15日 装画:辻恵 装丁:田中久子 -
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ネタバレ上橋さんはほとんどぜんぶ読んでいるけれど、上橋さん個人のことは、対談などでうかがい知るほかは何も知りませんでした。こどもにも読めるように平易に書いてあるのに、大人が読んでも面白い。上橋さんの描く物語には、これだけ重厚なバックボーンがあったのだと、驚きの連続でした。世界観や地球環境、現代の社会問題なども、人類学者としての目線でさらりと語られていましたが、ことばを選ぶのは難しいはずです。
上橋さんが古武術によって身体の動きを知っていたので、バルサの殺陣も息を呑む緊張が生まれていたのだと、あらためて知りました。
物語を聞かせ続けてくれたおばあさま、好きでたまらなかった本。必死になって身体を動かし続けたこと。
それらが謙虚に語られています。上橋さんはインタビューを受けたので、書いた人は違うのですが、上橋さんを浮かび上がらせて、見事な構成だと思いました。
上橋さんの物語は、この後もずっと語られてゆくことでしょう。それは上橋さんの人生そのものだから。 -
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上橋菜穂子さんが作家になるまでの生い立ちを、インタビューして本にしたものです。
だから、上橋さんが書いた本ではなく、まさに上橋さんの本!ってことになりますね。
小説を書く時に、嘘をつきたくないという言葉がとても印象に残りました。
ファンタジーを書いてるから、嘘の部分もあるんだけど、根っこの部分では嘘をつきたくないんだそうです。
上橋さんが書くものは全て実体験に基づいているから、こんなにも心を揺さぶる小説が書けるのか!上橋菜穂子さんの謎がひとつ解けました。
この本は、インタビューだからなのか、本当に上橋さんが話してくれていて、それを聞いている感覚になります。
人柄もよく伝わってきました。
それと、上橋さんがどういう想いで本を書いたのかを聞くと、また違った目線で物語を感じることができる気がします。
守人シリーズは一冊読んで挫折したけど、また読んでみたいなと思いました。 -
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物語を書いてみたいと、作家になりたいと読書が好きな子供なら一度位は思ったことがあるのではないだろうか。
それでも読む側のままの人と、物語を生み出す人の違いってなんだろうと思ってた答えが、この本からおぼろげに見えてきた気がする。
自分の好きなこと、興味があることを突き詰めて行く強さ、一歩を踏み出す勇気。上橋さんは家でぬくぬくミルクティーを飲んでいたいタイプといいながら、毎回悩みながらも自分で自分を鼓舞して、温かい場所から抜け出し、自分を新たな場所へ運んでいる。
「経験は大切です。でも、べつに、人と違うことをたくさんしなければいけないということではなくて、むしろ、人と同じことをしていながらわ、そこに人とは違うものを感じ取ることの方が大切だと思います。」
どんな人間にも話したい思いや考えや物語が頭の中に詰まっていて、物語はそこにあるはず。ただ、「一言主」になり、自分の気持ちや興味があることを掘り下げられなければそこで終わってしまう。自分自身に興味をもち自分を理解した上で、周りのことに興味をもち広げていける人、そして最後までやり通す粘り強さがある人が、自分の頭の中にある物語を他の人が読める「本」という形にできるのだろう。
これから作家になろうとしてる人にも、なにか始めたいと思っている人にも、上橋さんが手を差し伸べて一緒に頑張りましょうと言ってくれているような本でした。
靴ふきマットの上でもそもそしていないで、自分で自分の背中を蹴っ飛ばして、一歩新しい場所に踏み出したくなります。 -
Posted by ブクログ
「精霊の守り人」の作者、上橋菜穂子さんが語る、どうやって作品を生み出しているのかと、どうやって作家になったのか。
繰り返し尋ねられては断り続けてきた彼女がアンサーとして出した一冊。
研究者にもなれない、作家にもなれない、と涙が止まらなかった日々や、研究者としてオーストラリアをひたすらハンドルを握り走り続けた日々とその時の思いを、率直に語ってくれています。
「子どものころ、時を忘れて物語にのめりこんだように、私はいまも、物語を生きるように、自分の人生を生きているような気がします。」p171
簡単な道などない。一歩踏み出した先に、次の道が開ける。
「古くてあたらしい仕事」を読んだ時と似た読後感。その人が語る、仕事とは、生きがいとは。
「物語にしないと、とてもつたえきれないものを、人は、それぞれに抱えている。」
だから、私たちは物語を読み、自分自身の物語を生きている。
それぞれが抱えた物語を、大切にできる世の中であってほしい。そんなことを思った。