伊藤桂一のレビュー一覧

  • 静かなノモンハン
    ノモンハンで実際に戦闘を経験した3人の生還者の体験談。

    ノモンハンはささいな国境の領土権を巡るいざこざから発展した戦争だが、この体験談を読むと凄まじく密度の濃い地獄の戦争だったことがうかがい知れる。

    なかでも、敵が戦車や榴弾砲を備えた近代兵器を備えているにもかかわらず、こちらはロクな武器も支給さ...続きを読む
  • 静かなノモンハン
    関東軍の馬鹿さ加減がはっきり示された、どうしようもなく悲惨な、事件ではなく「戦争」であったことが見事に描かれています。白旗を掲げて擱座した戦車から出てきたソ連兵を、できるだけ近づけたあと撃ち殺しています。いっぽうノモンハンの実情を知る下級幹部に対しては、軍はどこまでも監視の目をゆるめず、事あるごとに...続きを読む
  • 静かなノモンハン
    今ここに、失った戦友の死にざまと意思を後世に伝えてくれる一冊がある。これこそが真の軍記であり、そこに学ぶことこそが戦果であると思う。
  • 静かなノモンハン
    戦死した者達の指を切り遺品として持ち帰ろうとする、それだけでも悲壮感のある話なのに自分達が全滅する可能性が高くなり、指を遺品として持ちつづけることの無意味さを感じたときの絶望感は計り知れないと思う。
    弔いは生きる者がいて初めて成立する。それすら許さない戦場がノモンハンにあった。
    前線で戦死した兵士も...続きを読む
  • 静かなノモンハン
    満蒙国境で起きた「ノモンハン事件」を兵士の視点から描き出した小説。前線の兵士たちの体験談をベースに造りだされた。戦場の有様が、心理面とともに読みやすい文章でつづられている。そこには戦争の残酷な力が溢れかえっている。死んで当たり前の戦場にある人間性が浮き上がり、認識できないほどの苦痛とともに、やりきれ...続きを読む
  • 悲しき戦記

    悲しき戦記

    戦争の愚かさを史実に基いてドキュメンタリー風に綴られた作品である。
    現在の日本において、尖閣列島問題や、韓国とのきな臭い問題。北朝鮮の
    問題等々、戦争を起さず、今こそ政治を問われる時代はない。
    政治家の頑張り、努力に期待したい。
  • 螢の河 源流へ 伊藤桂一作品集
    一兵卒として戦場で生き抜き、古参兵から理不尽な制裁も受けておられよう。それなのに、何と穏やかな文体なのだろう。かくもぬくもりに溢れた戦場小説を初めて読んだ。むやみに戦争を否定もせねば肯定もしない。むなしく散っていった戦友のためにも、現在の視点でいたずらに戦争批判をするなら、それは彼等の死を汚すものに...続きを読む
  • 私の戦旅歌
    騎兵聨隊に所属し、軍馬とともに戦った幾年。自叙伝であり、後世に史実を正確に伝えるために、極めて正直に書かれているというが、改めて温もりのある著者の人柄が伝わってくる。
  • 静かなノモンハン
    貴重な一冊である。死が日常茶飯事の戦場における男の生き方と無数の戦死者。なんのための戦争か。静かなノモンハン。
    これ以外のタイトルは考えられない。本書に出会ってよかった。名著だと思う。
  • 悲しき戦記
     戦争文学だが、反戦文学ではない。反戦文学ではないが、勇ましい文学でもない。
     長い中国戦線での従軍経験、綿密な取材、連載された1962年頃の時代背景、といったものを感じさせる25の短編。個人の力ではどうしようもないうねりの中で、どう生き、どう死んだかを、兵士、軍属、民間人、それぞれの立場を丁寧に描...続きを読む
  • 静かなノモンハン
    伊藤桂一著「静かなノモンハン」講談社文庫(1986)

    体験談をもとに、実際の戦争の戦いの中で感じる兵士の心理と悲しみを描く本。戦争体験者自身の戦う信条と、それに基づく行動。死が隣り合う世界での緊張感と人の心情が細かく描写されている。エグイ描写もあるが、それが事実なのだろう。

    究極な死に接する人間...続きを読む
  • 静かなノモンハン
    【静かなノモンハン】 伊藤桂一さん

    芸術選奨文部大臣賞、吉川英治文学賞受賞作。

    1939年に起きた日本軍とソ蒙軍の国境紛争事件。
    当時戦闘に駆り出された下級兵士の生き残り
    3名の体験談を伊藤さんが清書されています。

    命令一つで戦地へ送られ、命を堵して軍務を
    全うしようとした兵士たち。

    9割近...続きを読む