熊谷敬太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
徳川吉宗治世下、長崎から江戸まで行脚した江戸象をモデルに、1つの江戸ミステリを交えて描いたエンタメ歴史小説。
初めは登場人物が多く、行脚や事件の概要が見えるまでが長く、読み進めるのに大分時間がかかった。しかし、長崎をスタートしてからはどこで何が起きるのかという楽しみに、序盤で巻かれた事件のタネの回収が絡み、どんどん引き込まれていった。
特別好きななのは柊宮の恋歌のシーン。宮様でありながら純な若者が恋の思いを恥ずかしながら吐露するシーンは秀逸な恋歌と合わさり微笑ましい気分になった。豊安も好きだが、こっちとくっついて欲しかった。
また、吉宗の描き方も彼の特徴が余すことなく出ていてよかった。江 -
Posted by ブクログ
1920年に起きた尼港事件を題材としている。赤軍過激派により日本人730名、ロシア人7000人が殺害された。ロシア革命は1917年に起きていたが広い国土の統制は一朝一夕には進まず、その混乱の中で起きた悲劇であろう。終戦末期のソ連による不当参戦シベリア抑留の悲劇に隠れて忘れ去られているが、本書によって教えられた。本書では、当時尼港で成功した島田商会が発行したルーブル紙幣ピコラエビッチ紙幣の謎に絡め、悲劇に巻き込まれた罪のない日本人たちとロシア人悲劇を描く。面白かった。書き出しの筆者自信の抱える謎が最後の最後に物語と絡み合うとことろに打たれた。