松井彰彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレゲーム理論を現実世界の事例を用いてわかりやすく面白く説明している。
恋愛・PK戦・きつねの手袋・いじめなど多岐に渡ったジャンルが述べられており、事実や筆者の考え、理論からの解説、全てが面白かった!
<世の妻が口うるさいのも全く同じ原理だ。結婚前はあんなにお淑やかだったのに、と嘆く貴兄は男女の戦略的関係がわかっていない。離婚のコストは高いが、恋人なら「ごめんなさい」の一言で別れられる。恋人が口うるさくないのは「退出」というオプションを持っているからなのである。>(P.112)
<序章の最後で、自分が当事者でありつつも、外から見る目を養うことがゲーム理論を学ぶうえでの第一原則だと述べた。しかし、人生の目的が幸せを追い求めることにあるとすれば、ゲーム理論を活かす上での第一原理は、相手のことを思うことであると言っても過言ではない。>(P.172) -
Posted by ブクログ
タイトルに「高校生からの」とあるが、「ナッシュ均衡」や「囚人のジレンマ」はP18~27のたった10ページで説明されており、全く知らない人がゲーム理論を体系的に知るのに適しているとは言えない。
ただしジョークを交えた文体で、読み物としては読みやすい。
一方、本書のほとんどはゲーム理論の社会への応用で占められている。
それはまえがきの「恋愛」から始まり、「戦略編」「歴史編」「市場編」「社会編」からなっており、経済はもちろん、サッカーのPK、デートの待ち合わせ、共働き、格安航空会社の破綻、サラミスの海戦(ペルシアと古代ギリシアの海戦)、三国志、法規制といった多様な現象にゲーム理論を当てはめていく。
ところが、最後の「未来編」では、突如としてソクラテス、プラトン、アダム・スミス、デイヴィッド・ヒューム、デカルト、ルソー、カント、アインシュタインといった人々が登場する。
そこで書かれているのは「科学哲学としてのゲーム理論」と言えるようなものだ。
本書は「ゲーム理論の理解によってより良い社会を作ることができる」という思想に基づいていて、そのための手引きを若い世代に託したい、という著者の思いが、文章全体、特にこの「未来編」から伝わってくる。 -
Posted by ブクログ
市場は依存先=選択肢を与えるところ。自立につながる。
所属型と契約型。芸能界のような所属型は競争環境=市場が存在しない。村八分は、村から出るコストがかかる場合にのみ有効な手段。小林幸子やスマップは、インターネットで既存のシステムを揺るがした。
眼鏡の増永の社是「良い眼鏡を作る。出来れば利益を得たいが、損をしてもよい眼鏡を作る。」
要素価格均等化定理=労働や資本などの価格は国際価格に均等化する。国内の外国人労働者を帰したとしても、輸入が増えるから賃金は上がらない。
「大脱出」平均寿命はGDPよりも社会平均の豊かさを表す。一人当たりGDPとの相関が高い。
和辻哲郎「風土」
ゲーム理論は個人対個人、と市場理論は市場対個人。
石油製品の規制緩和議論=チキンゲーム。ナッシュ均衡が二つ存在する。
インフレ率を民間の予測より少し高くするのが望ましい。中央銀行を独立させているのはインフレの鎮静化に役立っている。
有期雇用の無期転換制度は、空白期間を設けることでリセットされる。
正規と非正規の扱いを米国のようにするか、欧米のようにするか。再雇用市場がないと成り立たない。欧米のようにすると若年失業率が増大する。
独裁者の一人勝ちもパレード効率的。公平性の概念を持たない。所得の再配分で補うしか方法がない。
ドイツは開業医を定員制にしているので、医師の偏在が問題にならない。教師や警察官と同じ。
マッチング制度が有用。
宮沢賢治「洞熊学校を卒業した三人」「なめとこ山の熊」「猫の事務所」
サッカーは引き分けの利点を減らすため、勝ったときの勝ち点を2から3にした。
ディミアントンプソン「依存症ビジネス」依存症の罠に気づくこと。
「銀行は裸の王様である」総資本に対して20~30%の自己資本を持つように義務づける。
マクミラン「市場を創る」周波数オークションで市場ができた。入札は勝者への呪いが起きる。
談合は短期的には利益があるが、長期的には参入が増えて談合に頼らざるを得なくなる。
新日鉄と住金の合併は、国内シェアではなく海外シェアを見ると独占力はないから。規模の経済性の追及を許した。
難病の患者の医療費は患者数が少ないので割合は低い。慢性疾患のほうが患者数が多いので多い。
ゲイリーベッカーは差別的行動をとれば市場から駆逐されるので、偏見はあっても差別はない偽善者になるので差別はなくなる、とした。
ケネスアローは、統計的差別によって差別が継続するとした。
少数派は分断の恐怖ゆえに弱体化と互いの不信感を呼び起こすことになる。
専業主婦、長期雇用は継続したほうが有利という限られた経験のなせる業である。
自立は依存の対極。市場がないと自立できない。
二宮尊徳「道徳なき経済は犯罪であり、経済無き道徳は寝言である」
内館牧子「終わった人」 -
Posted by ブクログ
とてもおもしろかった。
囚人のジレンマなど、ゲーム理論でよく知られた話が、もちろん出ているのだけれど、さまざまなケース、さまざまな角度から説かれているのだ。
例えば歴史上の有名な戦いを、ゲーム理論で読み解いたりするのも、そういう見方があるのか、と興味をそそられる。
個人的な偏見かもしれないけれど…
ゲーム理論というと、金融工学とか、何かそういった生臭い興味で語られることがあるように思う。
著者、松井さんは、ゲーム理論は「人間の科学」を志向するものだ、つまり人と人との関係を解明するものだ、と言っているのが、とても新鮮だった。
そういう方向で活用されるのならいいな、と思う。 -
Posted by ブクログ
著者は東京大学大学院経済学研究科の松井教授。世界的な業績をあげているゲーム理論の大家である。
本書の前半では市場の特性や市場の失敗について主にゲーム理論を用いて説明し、後半では氏の後半生のライフワークとなっている差別や障害への取り組みについて述べられている。
本書の前半と後半でガラリと内容が変わる。後半は後半で興味深いテーマであり、最終的にはサブタイトルの「自立と依存の経済学」に繋がるものの、当初イメージしていた内容とは異なるものであった。差別や障害にかかる問題への経済学・ゲーム理論の応用についての入門書と考えて読み始めると良い。
本書では市場の仕組みについてもう少し詳細に語っていただき、差別と障害については別書籍でじっくり読みたいと感じた。 -
Posted by ブクログ
「高校生からの・・・」というタイトルに違わず、身近な例からゲーム理論の基本をわかりやすく教えてくれる本。
ゲーム理論というと(トランプとかモノポリーとか狭い意味での)ゲームのカラクリを研究するガクモンのように思っちゃうけど、実はさにあらず。かけひき理論、とでも言った方が誤解は少ないような気がする。
Wikipediaにもあるように、
・ある特定の条件下において
・利害が異なる複数の主体の間で生じる
・戦略的な相互関係
を研究するものであり、その「特定の条件」と「相互関係」がゲーム理論をゲーム理論と呼び習わせているミソなのだろうと思われる。
さて、この本。
恋愛談義から始まって、サッカーに興じたり、ギリシャ故事や三国志をひもといたり、きつねの手袋に涙したり、いじめ問題と取り組んだり等々、多彩なたとえ話が楽しい。(そっちが活き活きし過ぎていて時々話の本筋が見えなくなっちゃうのはご愛敬(笑))
まあ、「ナッシュ均衡」とか「囚人のジレンマ」といったゲーム理論ではおなじみの用語も出て来つつ、まずは簡単なところからゲーム理論の本質的な考え方を捉えてみよう、という筋になっていると思う。
その本質とは、120ページに出てくるとおり、
「さまざまな現象を、(感情なども加味はするが)損得計算という観点から分析しようとする。」
ということ。
人間や社会はなかなか理屈で割り切れるものではないけど、登場人物同士の関係性(損得利害)に話を単純化することで、ものごとのカラクリが意外に見えてくる、と。
なかなか勉強になる本でした。