原彬久のレビュー一覧
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ネタバレ[ 内容 ]
戦後日本の出発期に首相・外相を務め、政治・外交の軌道を敷いた吉田茂。
その講和・安保条約締結は、軽武装・経済第一主義の確立によって後の繁栄を招いたと評価されがちだが、果たしてそういえるか。
著者は、彼の遺した書簡、公開された外交文書、関係者からの聞き取りを通して、天皇体制の徹底した擁護者という新しい吉田像を描き出す。
[ 目次 ]
第一章 人生草創――維新の激流に生る
第二章 帝国主義を抱いて――外交官の軌跡
第三章 体制の淵から――反軍部の旗幟
第四章 敗戦国の宰相――瓦礫の底から
第五章 歴史の岐に立つ――保守主義の貫徹
第六章 講和・安保両条約締結に向けて――外交文書は語 -
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戦後日本の占領体制は間接統治であった。吉田茂は、占領期及び講和独立期という戦後日本の方針を決定する時期に、首相を務めた人物である。したがって、戦後日本の行方は、少なからず吉田の手に委ねられていたということもできるだろう。
本書は、吉田茂が戦前は外相の地位に就任することがなかった人物であることを示しながら、吉田が戦後政治の表舞台に出てどのような働きをしたのかについて描いている。いわば、吉田という人間の根底を、彼が日の目を浴びることの無かった時代に求めているとみなすこともできよう。そして、戦後日本の方針を決めた吉田の生涯を戦前期から抱いていた思想と絡めて描くことにより、吉田の思想が日本の占領期に -
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タイトルからして、政治史と思われますが、国際政治学の本です。
大雑把に言うと国際政治学は、戦争を防ぐことが目的です。
1.この本を一言で表すと?
・国際政治におけるユートピアニズムとリアリズムの対立
2.よかった点を3〜5つ
・結局、国際的調停へ前進する望みが最もあるのは、経済再建への道をとることであると思われる。(p448)
→当たり前のように聞こえるが、戦間期では、すごいと思われていたのだろう。
2.参考にならなかった所(つっこみ所)
・国家の話ばかりで、個人(国民)の話が出てきていないのでは?
・「戦間期」の出来事に関する知識が、議論の前提となっていること→世界史に疎い私 -
Posted by ブクログ
リアリズムの生みの親と言われるカーの著名な本。この本を読み直して感じるのは、カーは後世で理解されるようなリアリストではなく、非大国的視点から大国中心の国際政治を捉え直したリベラリストと言えるのではないか?という点である。大国的視点で国際政治を見続ければ、暴力的手段を用いながらもそれを価値や規範、そして共通普遍の原理のように本気で信じる西側(アメリカ、フランス、イギリス)のリベラル知識人と何ら変わらなくなる。しかし、大国的奢りから目をそらすと彼らの価値や規範が所詮、実力によって担保されているにすぎないという事実に気がつく。しかし、脱大国的な視点は、その暴力や権力を価値や規範で誤摩化している大国