大野健一のレビュー一覧
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読み始めて少し不思議な内容だと感じた。それは本書が一部海外向けの論文であることに由来をするのだろうか。冒頭に第二次大戦以降の開発独裁の国と、日本の明治維新の比較を様々に行う。日本人の感覚では開発独裁と明治維新とでは明らかに異なる発展の仕方に見え、比較検討をしようとあまり思わないのではないか。しかし海外では一見すると似た傾向を持っていると捉えられていてもおかしくはない。そして、私も開発独裁と明治維新とに決定的な違いは何かと問われたときに、断定的に回答する自信がない。
本書はペリーの接触後たかが50年で列強に加わった明治維新という現象を解釈する。明治維新というタイトルであるが歴史的経過は追わない -
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日本近代政治史の専門家と開発経済学の専門家が、明治維新という世界史上稀な革命を可能とした、幕末維新期の構造的特徴ついて考察している。
明治維新は、個々の人物や事件を追っていくと極めて分りにくい時代である。登場人物が多く、彼らの間に政策論争や政治闘争が延々と展開されるし、国家目標なるものが複数個あり、それらが合体したり変容したり逆転したり、更には、各グループの目標がどんどん変わっていくように見えるからである。しかし、著者達はこのわかりにくさを「柔構造」と名付け、これこそが明治維新を可能にした、世界に類を見ない長所だったと言う。
「柔構造」の第一の側面は国家目標で、幕末期には、「公議輿論」が政治的 -
Posted by ブクログ
本書を読んで明治維新の時代が立体的に見えた思いがした。この時代を取り扱った書として、高く評価できる本と思う。
本書によると「明治維新は、欧米列強が支配する19世紀の国際秩序に後発国日本が組み込まれるという国際統合過程であった」とし、その政治過程は戦後の「開発独裁」と違って「富国(大久保)」「強兵(西郷)」「憲法(木戸)」「議会(板垣)」のグループが柔軟に連携を組み替えながら、それぞれの局面でリーダーシップをとっていたというのだ。
本書では「国論の分裂である」という見方を否定し「政治的柔構造」と高く評価している。この見解はこの時代を俯瞰して新鮮であり、納得できる主張であると思った。
本書 -
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[ 内容 ]
西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允、板垣退助―途上国を一等国に導いた指導者を分析する。
[ 目次 ]
第1部 明治維新の柔構造(明治維新というモデル;柔構造の多重性;明治維新の指導者たち;政策と政局のダイナミズム)
第2部 改革諸藩を比較する(越前藩の柔構造;土佐藩の柔構造;長州藩の柔構造;西南戦争と柔構造;薩摩藩改革派の多様性と団結;薩摩武士の同志的結合;柔構造の近現代)
第3部 江戸社会―飛躍への準備(日本社会の累積的発展;近代化の前提条件;幕末期の政治競争とナショナリズム)
「富国強兵」「公議輿論」という複数の国家目標はなぜ実現できたか?途上国ニッポンを一等国に導いた指導者を -
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ネタバレ明治維新を柔構造という視点で見つめなおし、新たな評価をするという内容。視点は非常に面白いのだが、歴史を題材にしているという点では、あまりその背景には深く入っていないため、正直、良く分からなかった。おそらくある程度の知識を持っている前提で読むと面白いのだろうが。。。
何よりも「なぜ、そのような構造になったか」という点に対しての深堀りができていなかったことが、期待値から外れていたというのもあるかもしれない
正直、これらの事象は「偶然が積み重なった結果」ではないだろうか。事実、この柔構造は国家の目的や成し遂げるスコープが明確になった時点で、硬化してしまっている。
また、この著書では漱石の嘆きを悲観的 -
Posted by ブクログ
・明治革命は、複数の目標、「富国強兵」と「広議輿論」の二項目、の並列的競合、リーダー間の合従連衡およびリーダーだちによる目標の優先順位の自由な変更を通じて達成された。東アジア型開発独裁のスタイル、つまりカリスマ的リーダーは上意下達するスタイルではない。
また、リーダーグループ間の柔軟な連携の組み換えが特徴であるとする。
・「翻訳的対応」:明治日本の国際統合が成功した理由は、それが国際社会への受動的な「組み込まれ」ではなく、能動的な「翻訳的適応」として実行されたからである。つまり、自国の主体性、社会の連続性、国民の自尊心、および民族のアイデンティティの持続を確保しなければならないのである。
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