地域金融復権のカギ「地方創生ファンド」: 共感・感動のスモールビジネスを育て、日本を変える
著:松本 直人
地方創生ファンドは、投資した資金を回収できればよいというものではない。資金回収を目的にするならば、新しい産業が集積する東京地域にある上場を目指す企業に資金を投じ、10社中9社が成功しなかったとしても、残りの1社で高いリターンを実現させ、ファンドの利回りを向上させるという手法の方が、高いパフォーマンスを期待できる。
しかし、地方創生ファンドの最大の狙いは、地域での起業を活性化させることで、地域経済を支え、地方からの人口流出、東京への一極集中によって生じる諸問題を解決することにある。
それを実現するためには、地域金融機関が地元企業を金融面で支え、ひいては地域のコミュニティを豊かなものにしていくためのエコ・システムを、再構築しなければならない。
本書の構成は以下の7章から成る。
①地域金融機関と協力して
②地方経済を活性化させるために
③地方創生ファンドの流れと仕組み
④地方には面白い企業がたくさん
⑤地方創生ファンドの実例紹介
⑥共感社会における金融機関のあり方について
⑦未来の金融機関に向けて
地方創生ファンドは、感情や共感を重視している。本書において多く登場する「共感」というワード。
経営者に「共感」できるか、ビジネスモデルに「共感」できるか。色々な「共感」は感情の集積であり、共感が集まるところに「ヒト」が集まる。感情でつながった「ヒト」は強固な基盤となり、サステナブルにつながり広がり、強くなっていく。
地方においては、そういう意味で「共感」が大切だと考える。
本書は、取り扱っている業界自体は難しいものの、VC向けに書かれたものではなく、「地域」を思い、盛り上げていきたいという同志に向けて書かれている。そんな人たちとの「共感」をつくるための「心」がたくさん詰まっている。
エコシステムは多くの利害関係者やプレイヤーにより構成されている。根本においては「感情」で繋がっていく中で誰もが幸せになることを願いたい。
地域創生の基本と志を学べる良書である。