山田清機のレビュー一覧
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13人のタクシードライバーの身の上話を収めたノンフィクション。
タクシー業界は一種のセーフティネットのように行き場のない人たちの受け皿になっているため、ドライバー達の経歴も種々雑多で実にさまざまな過去を持った人達が集まる。
妻に逃げられた元ホームレスや、バブル崩壊で約八億円もの借金を背負った元社長、子どもと専業主夫になった夫を養うためにタクシー業界に飛び込んだ元スーツアクターなど異色の経歴ばかりで、それぞれの人生がありとても面白かった。
無線屋ドライバーの何曜日の何時にどこで無線客が現れるかをもとにスケジュールを組み、配車センターのオペレーターの癖まで研究し尽くして確実に客を乗せて稼ぐテク -
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ネタバレ[いろいろある街の,いろいろある職で]ありとあらゆる背景を携える人間が集う東京で,タクシードライバーとして働く人々を対象にして行ったインタビューを基にした作品。著者は,『東京湾岸畸人伝』でも知られる山田清機。
短編集的なつくりになっているのですが,登場してくる人々が語る全ての話に哀愁と溶々たる感覚が漂い,なんとはなしに良い一冊でした。タクシーに乗るというちょっと贅沢な体験が,本書によってさらに楽しみになること間違いなしかと。
〜「旦那,来年はいい年にしましょうよ。がんばってさ,来年こそいい年にしようよ」〜
本書の「長いあとがき」も読み応えありです☆5つ -
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今は亡き一人の素晴らしい保育士のお話。
「伝説の保育士」というだけあって、凄い。
子どもを子ども扱いせず一人前の個人として接したり、徹底的に「本物」に触れさせたり、先を見据えた仕組みを考えたり、怪我や失敗や試練から学ばせたり、自分達保育士は憧れの大人となるために努力を惜しまなかったり、教育者としても親としても、「素晴らしい」の一言に尽きる。
幼児教育とはどういったものであるべきか、教育者とはそもそもどういった存在であるべきか、一生をかけてそれを表して来た方、という印象を受けた。
そして子どもの欲求や躾や学習において「こうすればいい」という部分的なものよりも、大人が「こう在るべき」という点に重き -
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新卒の時にインターンをした縁で買いました。
よくあるビジネス本ではあるのですが、なんというかジャンプ、それもワンピース的な匂いがします。青春時代の躁的なドライブ感というか、視野が狭くなる代わりにどこまでも先が見通せてくる独特の感覚というか。おそらくインタビュアーがうまいのだと思いますが、その疾走する感じがとても心地よい構成の本です。
内容としては出来上がった大企業の診断と処方箋を書いていくいわゆるコンサル要素と、筋はいいけどよちよち歩きのベンチャーの良き先達となるインキュベーション要素と、そこから金を生むために試行錯誤するインベストメント要素を、DIはどうバランスするのか、という難題に焦点 -
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僕が受けた印象としてすべてのコンサルティング会社の中でずば抜けた頭の切れ味を持つDIの創業理念及びその発展について書かれた本。
DIはベンチャー企業育成を行うコンサルティングファームである。
コンサルティングファームがなにを行うかだけではなく、大企業への経営戦略の策定とベンチャーへの育成の違い、ベンチャーに必要なのは戦略ではないこと、ベンチャー企業を取り巻く劣悪な環境が事細かに書かれている。
コンサルタント及びコンサルタントが描く戦略は完ぺきではないし、人を動かすには他の要素がたくさん必要であることを改めて認識させてくれた本。
とても読み応えがありますのでぜひ読んでください。
夏にD -
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横浜の住民なので言葉としての「寿町」は一応知っている。しかし、そこに住んでいる人々のことも町の成り立ちも歴史も何も知らない。普段は意識することもまずない。
正直言うと、多少の好奇心と怖いもの見たさもあり本書を読んだが、筆者が丁寧に取材し自問自答を繰り返しながら、人を町を理解しようとしている姿に心打たれて、そんな軽い読み方は許されないのではと感じるようになった。
特に寿町に落ちた人を見るときに、「あちら側にいる人なのか、こちらに側いる人なのか」を常に問われているのを感じながら、一つの答えに固執するのでなく悩みながら筆を進めていく様子は、自分も正しくその事を問われながら、どう向き合うべきなのかを -
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横浜に住む人なら一度は聞いたことがあろうドヤ街•寿町。本書はそこに住む人、関わる人を追うドキュメンタリーだ。
人物や団体にスポットを当てた全12話からなり、ショッキングだったのが、文庫版に書き下ろされた第1話。家庭問題で寿町に流れ着き、見ず知らずの初老の女性に初体験を捧げた青年の話だ。
その他の章も濃いメンツが勢揃いしている。
寿町は終戦後、約10年に渡り進駐軍に接収され、戦前にそこで暮らしていた人々は別の土地に根付いてしまい、ほとんどが元の土地に戻ってくることはなかった。開発の進む港湾地区に近いことから、余った土地に労働者のための簡易宿泊所と職安が流れ込み、日雇い労働者の町として発展してき -
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横浜のドヤ街(日雇労働者)である寿町に関わった人たちを描いたノンフィクション。
14話+文庫本描き下ろしの親話含めた15話の短編。
最初は「ここは異界か、最後の砦か」という一文に興味を持って読み始めた。
精神的な病であったり、差別であったり、自身の信念や考えであったり、色々な理由があって寿町に行き着いた人たち、そしてその人達を支援するために尽力した人たちの人生が描かれている。
彼らの殆どは横浜の六大事業を陰ながら支えた日雇労働者であり、華やかな横浜にこのような街があることが驚きだった。
今では日雇労働者が栄えた街も高齢化による波で福祉ニーズの高い街になっているらしい。
おそらく、今後も横浜 -
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どんな街にも過渡期はあるが、今まさに黄昏を迎えている横浜・寿町に関わって生きる人々に取材したルポ。
黒船来航、関東大震災、第二次世界大戦、高度経済成長からのバブル崩壊、そしてリーマンショック。寿町には連綿と続く歴史がないのだと筆者はいう。なるほど。それはそのまま横浜という都市の性格にも通ずると思う。港町という特性上、新しいものがどんどん入り、人もモノも流し流される。だからこそ生きてこられた人たちもいる。
いわゆるドヤ街と呼ばれた寿町は、今や「福祉ニーズの高い町」となり、かつての面影は薄い。熱さも勢いも若さも失って、それはつまり日本の抱える問題が先鋭化した形で存在するのが寿町だということだ。
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山田清機『寿町のひとびと』朝日文庫。
横浜の一等地にある『ハマのドヤ街・寿町』を6年に及ぶ取材で、その全容を解き明かすノンフィクション。文庫版のための新話『寿町ニューウェーブ』が冒頭に収録。
人に歴史ありという言葉の通り、様々な人びとが様々な事情と悲しい過去を抱えて寿町というドヤ街に暮らしている。多くはアルコール依存症やギャンブル依存症から抜け出せない人びとが、世間一般の考える普通の暮らしが出来ずにその日暮らしをするために寿町に集まるのだ。
さらに寿町には簡易宿泊所や角打ちの酒屋を営む人びとが暮らし、極めてグレーな貧困ビジネスを行なうNPO、新興宗教に携わる人びとが集う。まさに魑魅魍魎、