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武士の世界のバランスは、過不及を削った適度としての中庸のことではなく、一人の人物が過激な両極端を矛盾なく体現するところの中庸なのである。両極端を足して二で割った常識ではなく、両極端をそのまま包み込む、いわば両極を超えたところにある常識な
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一は一であるということを決して曲げないところこそ、天地宇宙を通じて唯一つ確実な拠り所である。相手が神であれ仏であれ、己れの頼むべき所はそこにしかない。これこそが、武士の発見した「哲学」だったのである。112
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自らを支えるのは、法でも道徳でもなく、自分は刀を抜く存在であるというただその一事にある。それこそが、「男道」「武士道」の、基本中の基本なのである。188
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「忠」とは、自分の主人という特定の人格に対する関係である。これが、「忠」というものに対する普通の理解であった。そのことがおそらく、帝国軍隊に、その統合の核を、国家という抽象的なものではなく、天皇という人格に求めさせた(意識的か無意識的かは別として)大きな理由であったと考えられる。250
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